[ 記事作成日時 : 2013年8月9日 ]
[ 最終更新日 : 2023年7月2日 ]

本当に理解してる?看護師の配置基準とは?

看護師の配置基準

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「看護師の配置基準」について、「患者の人数に対する看護師の数」であることを知らない看護師はいないでしょう。

しかし配置基準には医療法に定められた人員と、診療報酬の基準を満たす配置の違いがよくわからないという人は多いようです。

配置基準の知識は、転職の際、良い職場を見分けるために役立ちます。働きやすい病院や施設で充実した看護師人生を送るためにも、看護師の配置基準を意識していきましょう。

      
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病院・施設に関する配置基準とは

医療サービスを提供する病院に対しては、十分な治療が適切に行われるために必要な人員が定められています。これを配置基準と呼びます。

しかし病院で働く看護職には、正看護師や准看護師といった身分上の違いにほか、常勤・非常勤・パートなどさまざまなスタッフが存在しています。

ここでは基本的な配置基準の考え方や、現場の人員の数え方を解説していきます。

「配置基準」についての歴史

現在の病院の基本は「完全看護」が当たり前になっていますが、1950年代以前までは家族や付き添い専門の人によって夜間の看護が行われていました。

病室内に家族の荷物を持ち込んだり、食事をしたりする風景もごく普通だった時代があります。

戦後の混乱がおさまり、人手不足も解消した1958年(昭和33年)には、「基準看護制度」が施行され、完全看護制度という考え方が一般の病院にも普及していきます。

最初に定められた「基準看護制度」では、入院患者4人に対して看護職員1人という「4対1」の配置が創設されました。その後、診療報酬の評価制度も始まり、特1類看護(3:1)、特2類看護(2.5:1)、特3類看護(2:1)といった方式が生まれます。

現在の看護師の配置基準のもととなる「新看護体系」が創設されたのは、1994年です。

新看護体系では、実際に現場で働く看護師の数を換算するという「実質配置」が取り入れられるようになりました。

医療法に基づく配置基準

国では適正な医療を実施するためには一定水準以上の人員を確保する必要があるとし、医療法によって病院及び療養病床を有する診療所において雇用すべき人員の「標準」が示されています。

病院、療養病床を有する診療所については、医療法施行規則第19条、第21条の2によって医師、歯科医師、看護師等の員数の標準が定められています。

また特定機能病院については、医療法第22条の2によって同じく医師、歯科医師、看護師等の員数の標準が定められています

人員の配置基準については、これまで何度も改正が行われてきました。

この理由としては欧米と比較して、日本の医療機関の人員の配置の薄さが指摘されてきたことがあります。看護の手厚さに直接影響が出る、医療スタッフの人員配置は常に問題視されてきました。

ただ患者のニーズや医療サービスが多様化する中で、医療機関の在り方も昔のように一律ではありません。施設の特性や地域の事情により、画一的にすべきではないとする柔軟性を求める意見も見られます。

その一方で、看護師に関しては一般病床の人員配置の引き上げが進められており、また急性期医療の現場の高度化にともなってさらなる引き上げを求める声も聞かれています。

病院に関する主な人員配置基準

病院の人員配置基準について紹介する前に、病院の種類について確認しておきましょう。

                                  
種類 定義
一般病床 精神病床、感染症病床、結核病床、療養病床以外の病床
療養病床 主として長期にわたり療養を必要とする患者を入院させるための病床
精神病床
(100床以上の病院)
精神疾患を有する者を入院させるための病床
感染症病床 感染症法に規定する一類感染症、二類感染症及び新感染症の患者を入院させるための病床
結核病床 結核の患者を入院させるための病床

病院の種類別の人員配置基準は以下のようになっています。精神病床については、大学附属病院ならびに内科、外科、産婦人科、眼科及び耳鼻咽喉科を有する100床以上の病院の人員配置基準のみ紹介しています。

                                  
種類 医師 薬剤師 看護職員
一般病床 6:1 70:1 3:1
療養病床 48:1 150:1 4:1
精神病床 16:1 70:1 3:1
感染症病床 16:1 70:1 3:1
結核病床 16:1 70:1 4:1

診療内容や規模にもよりますが、看護職員の数は主に患者3~4人に対して1名とされています。

看護職員とは看護師もしくは准看護師となります。看護補助や介護士など、その他のスタッフは含まれていません。

人員はどうやって数える?

人員配置の人数は、常勤を基準として考えられています。

しかし実際の現場では常勤以外にも、非常勤や短時間勤務などさまざまな働き方があります。配置基準はどのようにして、対象となる現場の人員を定めているのでしょうか。

正社員として働いている看護師と、パート勤務の看護師を同じく1名としてしまうと、基準を下回る可能性があります。

そこで使われているのが、「常勤換算」という方法です。

常勤換算では、病院で働いている看護師の労働の平均を表します。基本的な考えとしては、すべての看護師の労働時間の合計を規定されている正規の労働時間で割り、延べ人数を出します。

具体的な常勤換算の計算方法としては、1ヶ月(4週間)を基本として非常勤者の勤務時間を合計し、常勤者何人分に当たるかを割り出します。

常勤換算の計算式は次の通りです。

「常勤職員の人数」+「非常勤職員の勤務時間÷常勤職員が勤務すべき時間」

例えば一般病棟の場合では、患者3名に対して看護師もしくは准看護師が1名必要です。

30人の入院患者に対して、常勤の看護師が10名必要です。ここでは常勤の勤務を、週5日8時間勤務で週40時間の勤務としましょう。

常勤換算するときには、この10名と40時間という数値を元に考えていきます。

非常勤の2人の看護師がそれぞれ週20時間ずつ働いているとすれば、常勤換算では0.5人分が2人いることとなり、常勤者1名分に相当します。

常勤が9名、非常勤が2名であれば、配置基準の10名分となり、クリアできます。

このように働き方が多様であっても、その労働時間を常勤換算することで、配置基準を満たしているどうかがわかります。

ただし常勤換算を考える際には、注意しなければならないポイントがあります。常勤換算の対象となるのは、実務的な労働時間です。

例えば非常勤の看護師の場合には、出張や外部での業務などが常勤換算の対象とされません。当然有給休暇であっても、本来の業務外となるため常勤換算する際には労働時間として扱われません。

常勤の看護師の場合には有給休暇中、出張も勤務時間として扱われます。

例外として産休・育休など、1ヶ月以上の長期にわたる休業時は、勤務していないと見なされます。正規の職員として雇用されている場合でも、育児休業明けで時短勤務をする場合には非常勤看護師と同じ扱いに変わります。

そのため病院側では配置基準を満たすために、人員の補充を迫られることもあります。

7:1の配置基準とは

ここまでは医療法による雇用に関する配置基準を見てきましたが、よく聞く配置基準に「7:1」というものがあります。こちらの配置基準とはどのようなものなのでしょうか。

もうひとつの看護師の配置基準について見ていきましょう。

診療報酬制度の中の配置基準

一般的に聞かれる看護師の「7:1」の配置基準は、2006年の診療報酬改定によって設けられたものです。

医療サービスを受けた患者は1~3割の自己負担額を支払いますが、残りの部分についてはそれぞれが加入する保険から支払われます。

医療行為や医薬品代については一般的なサービスとは異なり、国の制度によって詳細に定められています。

診療報酬制度では基本的な医療に関する評価部分と、診療実績に応じた段階的な評価部分との2つの評価に分かれています。

平成30年度診療報酬改定では、こうした2つの評価を組み合わせた新たな評価体系に再編・統合され、入院料は急性期医療、急性期医療~長期療養、長期療養に大別されています。

先に見てきた医療法の配置基準は「雇用配置」ですが、診療報酬の人員配置は「実質配置」という見方をされています。

診療報酬制度の中では雇用配置とは別の視点から、手厚い配置であれば報酬が加算され、標準を下回る配置であれば減算されるというしくみとなっています。

医療法の配置基準では「看護職員」という呼称によって、看護師・准看護師の区別がされていない場合が多く見られます。

一方、診療報酬の取り扱いでは「看護師」という記載になっているときには、准看護師は含まれません

「看護師及び准看護師」か「看護職員」という記載でない場合には、正看護師が対象となっており、理解不足によって要件を満たせなくなることもあります。

診療報酬制度で配置人数が申告と違っているときには、適時調査で指摘を受けたり指導が入ったりします。また返還金を請求されることもあるようです。

7:1は看護の手厚さからみる配置基準

7:1の配置基準では看護師1名につき、受け持ちの入院患者は7人です。

2006年の改正前には7:1、10:1、13:1、15:1という体制が、病院の種類によって混在していました。

患者に対しての看護人数を確保することで、より手厚く安全な看護体制を目指したのです。

入院基本料の点数は、看護職員の配置人数で決まります。例えば、一般病棟の入院基本料では現在10段階に設定されており、7:1がもっとも高くなっています。

2006年の7:1の体制に対しての診療報酬の引き上げ以降、大規模病院の多くが7:1へと体制の変更を行いました。それによって、すでに慢性的な看護師不足に陥っていた業界内では、大量採用、大量退職が繰り返される結果を生みだします。

この事態を重く受け止めた国では、2008年に再度の見直しを実施します。

7:1の評価基準に病棟内の医師数の割合や重症度の高い患者の割合といった条件を加え、施設基準や地域包括ケア病棟入院料などについての規定を設けました。

これにより7:1の基準はさらに厳しくなり、次いで「10:1入院基本料」を引き上げることで、10:1看護体制を選択する医療施設が増えてきています。

2016年の改定では、7:1看護体制の条件がさらに厳しくなっています。

手術など高度な医療行為に対しての医学的評価、看護必要度の患者割合の基準値が引き上げられています。

現在、7:1の入院基本料の条件を満たせる病院は、非常に限られているといえるでしょう。

治療を受ける患者にとってメリットの大きい配置基準の改定ですが、働く看護師の側から見た場合でも、労働環境の目安となります。

ひとりの看護師が受け持つ患者の数が少ないほど、業務に集中ができ、労働の負担も軽減されます。また患者数に対して看護師の数の割合高くなる、職場環境全体の向上が期待できます。

7:1の配置基準を満たしている病院であれば、診療報酬が高くなる分、経営状態が良好であるともいえます。

またこれまで見てきたように、厳しい7:1診療報酬基準がクリアできている病院であれば、医療設備の面でも医療技術の面でも、トップクラスにあると考えられます。

日本看護師協会の配置基準についての見解

幾度かの改正を経てきた診療報酬制度の配置基準ですが、日本の看護師を統括する唯一の組織ともいえる日本看護師協会はどのような見解を示しているのでしょうか。

日本看護協会では「7:1」体制を支持

「7:1入院基本料」の創設に関して、看護協会では長きにわたって要望活動を行ってきています。

看護協会は日本の看護基準が諸外国に比べ、低水準であり社会的な少子高齢化や医療技術の高度化に対応できないと考えています。

かつての看護職員配置の表記は、単純に入院患者の数に対して雇用されている看護師数であったため、シフトや休日など現場の体制とは大きく異なっていました。

実態に即した看護師の配置基準となるよう提案をし続けてきました。

2006年度の診療報酬改定において7:1の看護基準が設けられたことで、従来よりも手厚い看護体制になることに期待が寄せられました。

患者7人に対して看護職員1人という「7:1」の看護配置基準が設けられたこと、表記についても実質配置で表すようになったこと、また、日勤や夜勤などで実際に働いている看護職員の数に関する情報を、病棟で掲示することも義務付けられたことなどについて評価を示しています。

協会では看護ケアの質が向上すると同時に、看護師が長期にわたり安定した労働環境が得られ、能力開花の機会が得られることを強く望んでいます。

看護師を雇用する施設に対しては、“診療報酬で看護が評価されるためには、国民が受ける医療の質を向上させ、安全で納得のいく医療サービスの提供体制に貢献していることを示す必要がある”と訴えています。

診療報酬制度への提言

こうした背景の下、2018年度の診療報酬改定について、急性期を担う病院の看護職員配置の基本部分を10:1としたことに強い懸念を示しています。

この改正によってがん患者などの重症患者に対応では7:1以上という手厚い看護配置が求められている一方、急性期を担う病院の看護職員配置の基本部分が 10:1となりました。

協会では夜間の看護師の配置の手薄さにより、患者の安全・安心が守れない可能性の不安、また看護師ひとりにかかる負担の増大を国に対して訴えています。

医療現場についての配置基準に関しては、2019年現在も微調整がくり返し行われています。

2018年の改正については、協会側では以下のような提言をしています。

1.一般病棟入院基本料(7:1、10:1)の評価体系(案)は大きな制度変更であり、現場への影響も大きいため、今改定における拙速な改変を避け、国や関係者で議論を尽くした上で制度設計されたい。

2.高度急性期・急性期を担う病院のベース(基本部分)について、7:1を追加されたい。

3.高度急性期・急性期を担う病院については、重症度、医療・看護必要度の該当患者割合に対応した適切な人員配置基準を設けられたい

外来の看護師の配置基準

看護師の配置基準については、24時間体制で看護を行う入院病棟が注目されがちです。

しかし一方で、入院期間の短縮や在宅医療の推奨により、外来の重要性が高まる傾向にあります。

外来の場合、看護師の配置基準は医療法では1948年から「30:1」で変更されていません。また外来に関しては、診療報酬の基準が定められていないのも大きなポイントです。

日本看護協会では「労働と看護の質向上のためのデータベース事業」を、2015年から開始しています。

DiNQLと呼ばれるこのデータベースからの報告によると、外来機能の重要性が高まる中、外来の現場では医療法の基準よりも手厚く看護職員が配置されていることがわかりました。

医療法の配置基準が「30:1」のままに置かれ、また診療報酬の基準がない状況にも関わらず、看護職員1人1日当たりの一般外来の患者数は、2018年の4~6月では、中央値が18.9人、平均値が21.4人と基準よりもかなり手厚い結果となっています。

またこのデータによると、病棟と外来をローテーション配置している病院の割合は26.8%です。

看護師の配置基準に関する論議が病棟に偏る中で、日本看護協会は「入院が短縮し、入退院支援など外来で担うケアが非常に増えている」という実情を伝え、外来での適切な看護配置を促す必要性を訴えています。

こちらの調査では同時に入退院支援部門の設置状況も確認されています。

それによると、入退院支援部門をすでに設置している病院は74.1%、現在検討中が23.1%とほとんどの病院では同部門の必要性を示しています。

特に500床以上の規模の大きな病院では、設置が8割以上に及んでいます。

外来や入退院支援部門については、診療報酬制度の配置基準が定められていませんが、入院日数の削減がこうした「周辺部門」の重要性を高めています。

院内看護の質の強化とともに、患者の退院に向けた看護ケアへの注目を図ることは、国が目指す保険料負担軽減につながります。

またDiNQLは、2018年度の診療報酬改定の一般病棟入院基本料の再編・統合に際し、5:1や6:1など、多くの急性期病棟で基準よりも手厚く人員配置していることをデータで示しています。

外来、入退院支援部門、一般病棟いずれにおいても、現場では最大限の努力により、手厚い看護のための人員配置を継続させているのです。

看護配置数の計算方法

看護師の配置基準が各施設の経営に大きな影響を与えることは、これまで解説してきました。それでは看護師の配置数の実際の計算は、どのようにして行われているのでしょうか。

正看護師比率について

入院基本料の届出を行う場合には、看護要員(看護職員及び看護補助者)の配置状況を明らかにしなければなりません。この看護要員の配置については、以下のような規定があります。

“月平均1日当たり勤務することが必要となる看護職員の数に対する実際に勤務した月平均1日当たりの看護師の比率が70%を満たすこと。”

この場合の「看護師」とは正看護師を指し、准看護師はこの限りではありません。

ここで言及されているのが「看護師比率(正看護師比率)」です。

「看護師比率」は、その病棟に必要な看護要員に対する「正看護師」の割合です。看護師比率の計算では、人数ではなく勤務時間数をもとに算出します。

以下が看護師比率の計算式です。

看護師比率=正看護師の勤務時間数÷病棟に必要な看護職員の勤務時間数×100

ここで気を付けたいのが、いずれも月の勤務時間数であることです。特に「病棟に必要な看護職員の勤務時間数」は「月延べ勤務時間数」として、その施設基準を満たすために必要な時間数となります。

具体的な計算式は、次の通りです。

月延べ勤務時間数=8時間×必要看護配置数×月日数

一人当たりの勤務時間を8時間とし、必要な看護職員の配置数に月の日数を掛け合わせます。

例えば病棟で必要な配置数が20名の場合で、月の日数を30日とすると8×20×30=4800となり、4800時間が「病棟に必要な看護職員の勤務時間数」となります。

上記の例で正看護師が5名、8時間勤務を20日しているとします。

ひとりの看護師の勤務時間数は160時間、5名で800時間です。

看護師比率の計算式は800÷4800×100=16.6となり、看護師比率は16.6%です。

医療法による看護師の配置基準では、正看護師・准看護師いずれも対象となる場合が多いため混同されやすいようですが、診療報酬制度では看護師や看護職員という区別により報酬制度の規定を満たすかどうかが影響されます。

正看護師比率が下がったことで、提出した診療報酬との食い違いが出たケースもあります。

正看護師と准看護師は、業務内容自体には明確な違いがありませんが、診療報酬制度上では扱いが変わることは知っておいた方が良いかもしれません。

病棟に必要な看護配置数の計算方法

入院基本料には看護師の配置人数が大きく関係してきます。また事前に届けている病床区分によって、必要な看護職員の人数が異なります。

病棟に必要となる看護師の配置人数の計算について、具体的に見ていきましょう。

例として、療養病棟入院基本料について考えていきます。

療養病棟入院基本料の必要看護配置数は「20:1」となっています。患者20人に対して、看護職員1名の配置です。

それでは100人の患者がいたときに、必要な看護師の配置は100÷20=5で5名かというとそうではありません。患者が24時間入院しているのに対して、看護師がいなくなる時間があってはならないのです。

この場合、入院患者が24時間滞在しているのに対して、看護師が何名必要かという考え方となります。

看護師が8時間勤務するとき、患者一人当たり24時間では、3名必要となります。つまり100人の患者であれば、100÷20×3=15で必要な看護師は15名です。

当然これは最低限の人数となるため、常時100人の入院患者がいる病院であれば病棟の看護職員は15名以上いなければなりません。

実際には満床時の状態で「療養病棟入院基本料」を管轄の厚生局へ提出し、その後毎年の定例報告で変動数に基づいて必要な人員が計算しなおされます。

このときに使われるのは、「1年間の1日平均入院患者数」であり実績に合わせた人員の確保が可能です。

上記の例の療養病棟入院基本料の場合、100床が満床ならば看護職員は15名必要ですが、1日平均入院患者数が60人の場合には、60÷20×3=9という計算になります。

この場合では、看護師が9名確保できていれば診療報酬の規定をクリアできます。

看護師の配置基準と現場の声

看護師の配置基準については各方面からの提言により、再考がくり返されてきました。

7:1の配置基準に統一できれば理想的と思えますが、一方で依然として看護師の不足のイメージが払しょくされていません。

しかし、看護の現場では意外な声も聞かれるようになってきています。

看護師が飽和状態って?

「慢性的な看護師不足」は国内のニュースではよく聞かれることばです。しかし、その一方で大規模な病院で働く看護師からは、「看護師はすでに飽和状態になりつつあるのでは?」という声も聞かれます。

これはどのように考えれば良いのでしょうか。

これまでも見てきたように、診療報酬制度の基準をクリアして「7:1」体制が確立している病院は、現在の時点では少数派といえます。

厳しい要件をすべて満たした病院では、有利な診療報酬を得ることができます。

人員にも余裕があるためそこで働く看護師への負担も軽減され、高い収入が期待できます。当然そうした職場には、人が集まりやすいと考えられます。

一方で診療報酬の規定を満たせない施設では、報酬の上限を獲得できません。経営の安定が難しければ、それだけ看護師の確保も困難になります。

つまり「飽和状態では?」という声があるのは、高い診療報酬が安定的に得られる規模の病院ということなのでしょう。

看護師が十分に足りているという話は、社会全体からは聞かれていません。相変わらず地方の中小規模の病院や介護の現場では、人手不足の悲鳴が上がっています。

診療報酬制度に関していえば、病院の収益を左右するのはズバリ「看護師の人数」といえるでしょう。

診療報酬制度のさじ加減ひとつで、「看護師の奪い合い」が起こったりそれが緩和されたりするのはこれまでの経過で明確になってきています。

看護師協会が望むような「看護の質の向上」「看護師の労働環境の改善」を両立させる理想的な形とするためには、診療報酬制度の中でよりよりバランスを探っていく必要がありそうです。

配置基準からみる看護師の転職

経営側の事情がどうあれ、看護師として働く以上はより良い環境の職場を望むのが当然のことです。

「10:1」の体制の現場よりは「7:1」の方が、ひとりひとりにかかる負担が少ないことは間違いありません。転職先の求人を探す際にも、「7:1」を条件とする看護師は増えているようです。

この記事では主に一般病棟の配置基準について解説してきましたが、看護師の働く場所はそれ以外にもあります。

例えば外来については診療報酬制度による配置基準が定められていないため、職場によってはかなりの人手不足にもかかわらず人員の補充がなされないところも多いようです。

診療報酬に直接関わらない人件費を、最小限に抑えようとしている病院や診療所もあります。

外来ならばワークライフバランスが得られるだろうと転職し、そうした職場に入職してしまうと後悔しかねません。

一般病棟のように配置についての表示がないだけに、勤務体制についてより慎重に調べておく必要があります。

看護師にとって自分が何人の患者を担当しなければならないのかは、働き方や生活をも左右する大きなポイントとなります。

配置基準の基本知識を押さえておくとともに、実質的な配置人数を確認しながら、働きやすい職場を探していきましょう。

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