[ 記事作成日時 : 2016年3月31日 ]
[ 最終更新日 : 2020年4月3日 ]

看護師の残業の実態は?前残業やサービス残業は削減できるのか?

看護師の残業

看護師は一般的にきつい仕事とイメージされがちです。その理由となっているものとしては夜勤シフト、そして残業の多さがあげられます。 実際、「夜勤明けでもなかなか帰れなかった」「前残業代が出ない」などという声は、今でも少なくありません。そうした環境が改善されなければ、慢性的な看護師不足はこれからも続くでしょう。

近年の「働き方改革」により企業では残業時間を減らす取り組みが見られますが、看護師の職場ではどうなっているのでしょうか。ここでは看護師の残業実態と残業数が増える原因を考えながら、働きやすい環境にするための改善事例を紹介していきます。

看護師の残業は多い…その実態は?

世間のイメージ通り、看護師の残業は本当に多いのでしょうか。他職種と比較をしながらその実態に迫ります。

看護職員の平均残業時間

日本看護協会が2009年に発表した調査結果(日本看護協会「協会ニュースNo.503 時間外勤務、夜勤・交代制勤務等緊急実態調査 結果概要」)では、看護師全体の月平均残業時間が23.4時間、ひと月の時間外勤務が60時間を超える看護師は約2万人いることがわかりました。

一方でこの調査によると、全体的に見た場合では、時間外勤務20時間以下の看護師が約6割を占めているという結果となっています。年代別では20代の時間外勤務がもっとも多く、平均で約26時間、そのうちの1/4は35時間を超えています。

日本医療労働組合連合会の「2017看護職員の労働実態調査」では、日々の業務の中での時間外労働がごく当たり前のように発生していることがわかります。 ここでも20代看護師の時間外労働の割合は高く、日勤者で始業前に60分以上働いているのは18.8%、終業後では56.7%に上ります。

シフト別で見ると、仕事が長時間に及ぶ「2交替夜勤」で始業前・終業後に60分以上の時間外勤務をする人が多く見られます。ただでさえ長い勤務の中で、5人に1人は始業前から働き、約半数が終業後もすぐには帰宅できていないというのが現状です。

看護師の残業時間は、一般の職種と比べて多いのでしょうか少ないのでしょうか。 2019年に大手転職サイトが発表した調査データ( doda「残業時間ランキング2019【15,000人調査】)では、全職種の月平均残業時間は24.9時間です。このサイトでは残業のもっとも多かった「設備施工管理(41.6時間)」を始め、上位20位まで公表していますが、その中に看護師は含まれていません。

これらのデータを見ると、看護師が特別多く残業しているという印象は受けません。それなのに、看護師の残業が多いと言われるのはなぜなのでしょう。

見えない「サービス残業」「自宅作業」

時間外労働については国からの指導もあり、上限が定められるなどの対策が取られています。しかし、看護師を苦しめているのはそうした表向きの残業ではなく、目に見えない残業です。

例えば、新人看護師に対し「見習いだから超過勤務手当はない」「自己研鑽のために始業前・終業後も仕事をするのが当然」といったような押し付けを当たり前のようにする現場もあります(東京都庁職員労働組合病院支部「解決しよう!看護師の残業、超勤(超過勤務)の問題」)。

また、研究会やプレゼンテーションを上司からの指示で行うとき、学習や資料作成に使われるのは自分の時間です。ときには自宅に持ち帰り、徹夜で準備をしなければならなくなるということもあります。

その他にも、慣例的に超過勤務申請がしにくい職場であったり、タイムカードを押した後に仕事をしなければならかったりといったケースも見られます。 残業代なしで働いているのは、一般職の看護師だけではありません。

先に出てきた日本看護協会の調査(日本看護協会「協会ニュースNo.503 時間外勤務、夜勤・交代制勤務等緊急実態調査 結果概要」)では、中間管理職の時間外勤務は平均28.2時間で、一般職の看護師よりも多いのにも関わらず、実際に時間外勤務として申請しているのは8時間分だけです。

また、看護師長になると自宅へ持ち帰って行う仕事が多くなりますが、約3割の看護師長には時間外勤務手当が支払われていません。 このように看護師の場合、勤務表やタイムカードでは管理されていない残業がすべての年代・すべての職域で発生しています。

看護師の残業が多い理由ワースト5

看護師の残業はなぜ多くなるのでしょうか。厚生労働書がまとめた「我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況」のランキングをもとに見ていきます。

残業理由1位:看護記録等の書類作成のため(57.9%)

看護師の仕事の中でも、想像以上に負担となっているのが書類作成です。看護師が扱う書類業務にはカルテのチェックだけではなく、看護記録、看護計画の作成、さらに研修レポート作成などがあります。 患者の対応と並行して進められれば良いのですが、業務中には難しいこともあり、そうなると終業後に行わざるを得なくなります。

残業理由2位:人員が足りないため(48.5%)

厚生労働省の予測では2025年に最大で27万人、最少で6万人、看護師は不足すると言われています(厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ(概要)」)。 一方、日本看護協会の「2018 年病院看護実態調査」では、看護人材について「今年度と同程度の予定」と回答した病院は53.7% 、「今年度より増やす予定」が34.5%となっています。

看護師の不足感は地域や病院によってかなり違っており、離職率の高い病院では常に人手が足りていない状況です。 いくらスタッフが十分ではなくても、患者を前にすれば対応しなければなりません。そうした病院に勤める看護師には大きな負担がかかり、残業も多くなります。

残業理由3位:院内の研修会・勉強会に出席するため(47.9%)

病院内で行われる研修会や勉強会は、終業後に開催される場合が多く見られます。実際には強制的な参加であっても、私的な興味によるものとされて残業代がつかない病院もあります。 また、勉強会への参加自体には時間外手当が認められても、開催時刻までの待ち時間は対象外とされることが多いようです(東京都庁職員労働組合病院支部「解決しよう!看護師の残業、超勤(超過勤務)の問題」)。

残業理由4位:救急や入院患者の緊急対応のため(45.0%)

仕事が終わって帰宅しようとしたところに救急搬送があり、バタバタしているうちに帰り損ねるという経験は、看護師にありがちなケースです。 同僚や先輩看護師が対応に追われているのを見ると、自分一人が帰るわけにはいかなくなります。本来であればシフトで決められた時間になれば、帰宅しても文句は言われないはずですが、手が足りない状況下で残業してしまう看護師が多く見られます。

残業理由5位:部下、後輩などへの教育指導のため(36.5%)

後に続く看護師を育てるのも、一人前の看護師の大切な役割です。しかし業務の時間だけでは足りず、終業後に改めて指導を行うのも珍しくありません。忙しい業務時間に質問するのが難しいため、教えられる方から仕事が終わった後に指導を希望することも考えられます。

特にプリセプターの担当となった場合には、まだ自分自身が勉強中でありながら、業務をこなしつつ、新人の指導をしなければなりません。教えることに慣れていない2年目、3年目の看護師にとっては非常につらい状況で、この時期に辞めてしまう看護師も少なくありません。 指導のための残業が増えてしまうと、疲労が抜けないままの日々が続きます。

残業時間削減の対策・取り組み、5つの成功例

看護師の残業については、各事業所でも大きな課題として注目されています。効果を上げている取り組み事例をご紹介していきましょう。

成功例1:ユニフォーム二色制

熊本地域医療センターではユニフォームの色分けを行い、視覚的な効果で残業を減らすことに成功しました(熊本日日新聞「制服色分けで残業減った 一目で分かる定時退勤促す 熊本地域医療センター」)。

この取り組みが導入される前は、始業前と終業後の時間外労働が常態化していたと言います。日勤を赤、夜勤を緑のユニフォームにしたところ、開始から4年で残業が1/5に。 医師や看護師から退勤時間が近づいたスタッフに仕事を振らなくなり、患者も残業中の看護師には声をかけなくなったそうです。

また明確な色の違いによって、残業しているとかなり目立つため、看護師自身にもできるだけ残業をしないという意識が浸透しました。

成功例2:電子カルテの導入

熊本セントラル病院では看護師の残業対策に、さまざまな工夫を凝らして着実に成果を上げています( m3.com「看護師の残業時間、1日平均5時間から1~2時間に短縮―熊本セントラル病院事務部次長の田上説子氏に聞く◆Vol.2」)。

そのひとつが、電子カルテの導入です。カルテを読み込むことは、看護師業務の基本ともなりますが、紙のカルテでは全員が目を通すのに時間がかかり過ぎます。 電子カルテに変えたことでいつでも誰もが同時に手元で確認できるため、回し読みする時間のロスをなくし、結果的に残業を減らすのに役立っています。

成功例3:看護師ペア制

熊本セントラル病院ではもう一つ、看護師ペア制の導入により始業前の時間外労働を解消する方法も取り入れています。 早番の看護師とペアを組み、一緒に担当患者を回ることで、もう一方の看護師は早出をしなくても情報の共有が確実にできるわけです。

早番の看護師は夜間の看護師から予め情報を受け取っているため、日勤の看護師は1時間も早くきてカルテを読み込む必要がなくなりました。この方式によって、始業前の時間外勤務が解消されています。

成功例4:シフト制の見直し

厚生労働省「看護師等の勤務環境改善事例集」の中では、2交代・3交代のシフトを柔軟に組み合わせることで個人のライフスタイルにあった勤務形態の実現をした例が紹介されています。

このシフト体制の導入後には、多様な勤務時間が組み合わせられるために夜勤回数を抑えられるようになったと言います。また手術、検査など多忙となる時間帯に、人手を厚くするといった対応もしやすくなりました。 直接的な残業時間軽減への効果にはふれられていませんが、適切な人員配置ができれば時間外勤務を減らすことも可能となります。

成功例5:業務指示の見直し

管理者や上司の指示の出し方を見直すことで、これまであいまいになっていた点をはっきりさせられます。 残業理由の上位に入っている「研究会や委員会などの出席」を業務として見なすかどうかは、管理する側のサービス残業への意識が問われるところです。

時間外になることが多い新人や中途採用者への教育を、通常の業務内に組み込める形とし、勤務時間内で完結できるようにした病院もあります。 指示を出すときに、業務なのか任意なのかをきちんと伝えることは上に立つものの責任です。本気で残業を減らしていくためには、慣例にとらわれず、現場の疑問にしっかりと答えていく必要があります。

成功例6:報告・記録業務を効率化

日本赤十字社医療センターでは、報告・記録業務が全業務時間の1/3以上を占めていることに着目し、申し送りの回数や時間を省略する取り組みを行いました(富士通「事例紹介 日本赤十字社医療センター 様」。)

そのために導入したのが、タイムスタディシートです。業務上必要な調査項目をA3用紙1枚のチェックリストに集約し、申し送りの時間を大幅に短縮。 口頭で伝えなければならないことと記録を見れば分かる情報が整理されたことで、患者対応にかけられる時間が増え、残業の軽減につながっています。

有給取得・残業代をあきらめない

看護師が安心して働き続けるためには、休みの取得と働いた分への適切な報酬が必要です。看護師の働き方改革と、有給取得、残業代申請の問題について見ていきましょう。

看護職の「働き方改革」

働く人が希望をもって自分らしく生きられるよう、多様性に満ちた働き方ができる社会を目指す、それが国が進める「働き方改革」です。

日本看護協会では看護における働き方改革の目標を「働き続けられる仕組みを創る。その仕組みは実現可能で、持続可能な仕組みであること、看護職が生涯にわたって、安心して働き続けられる環境づくりを構築し推進する」としています(日本看護協会「看護職の働き方改革の推進」)。

「働き方改革関連法」施行に従って、時間外労働や有給休暇に関する規定が厳しくなりました。 有給休暇取得を前提とする人員配置とし、年次有給休暇取得についての計画を策定することが義務付けられています。 つまりサービス残業や有給休暇の未消化は違法と判断され、経営者に対しての罰が課せられる可能性があるということなのです。

有給を消化するには?

有給休暇の取得は労働者の権利で、基本的には希望日に取得できることになっています。ただ病院側で、「事業の正常な運営を妨げるおそれがある」と判断した場合には、有給休暇を取得する日時を変更する権利があります。 病院側の都合で、有給休暇の取得申請を却下することは労働基準法違反となります(日本看護協会「労働に関するよくあるご質問」)。

しかし、実際には人員が不足気味の中で、希望通りに有給を消化するのは難しいところが多いようです。 有給休暇を確実に消化するためには、労使協定締結のもとで「年間取得計画表」を作成するのが有効です。

上司と話し合い、スタッフが公平に有給を取得できるように部署ごとに融通していきましょう。

有給取得を妨げるような買い取りは禁止されていますが、退職時に残ってしまった有給休暇については、給付に変えることを交渉できます(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」)。

残業代を請求するには?

残業代を請求するときには、正当に支払われるべきであることを証明する書類を準備します(ベリーベスト法律事務所 金沢オフィス「看護師が残業代請求をあきらめる前に知っておきたい病院に残業代請求する方法」)。

未払いの残業代があること、またその根拠となる労働条件がわかる証明書類をそろえておきましょう。 労働条件を示す書類は、労働契約書(雇用契約書)、書類(雇用通知書など)、就業規則のコピーなどがあります。 また残業代を請求する根拠となる記録も必要です。

残業が発生した日の労働時間や労働内容が証明できる書類としては、以下のようなものがあります。

  • 勤務シフト表
  • タイムカード
  • 勤怠記録
  • 日報
  • 電子カルテの記録
  • 残業指示を指示したメモ・メール

この他にもタクシーなどを使って帰宅した場合の領収書、自分自身の覚書・日記なども証明する能力があります。 上司に相談しても残業代の支払いが難しいときには、客観的に証明するデータを準備して公的な窓口や専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

看護師の労働環境にも改善の動きは見られますが、病院のあるエリアや事業規模によってはなかなか進まないところも多数あります。

いまだにサービス残業を強いられたり、時間外労働が慢性化したりする職場は少なくありません。

労使の協議がうまく機能していない、ワンマン経営で下からの声が反映されないなど、職場に改善が見られないようであれば思い切って転職をするというのも自分を守るための手段です。

希望の転職条件で転職するためには、信頼ができてサポート力のある転職エージェントを見つけることが大切です。

3月は内定辞退や急な退職で追加募集が増える時期

4月入職予定者の内定辞退や家族の転勤や進学による引っ越し、転職を決めかねていたスタッフの退職の申し出などが多くなります。その為、予定人員が確保できなくなり急遽、追加募集をする医療機関が増える時期です。

また、3月末退職予定者が有給消化のため出勤しなくなり、実働スタッフ数が減るため3月中に入職できる看護師を探す職場も出てきます。「3月からでは、もう4月入職に間に合わない」「いい求人はもう残っていない」と考えるのは早計です。

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