[ 記事作成日時 : 2016年9月29日 ]
[ 最終更新日 : 2020年2月5日 ]

看護師の有給消化率は最悪?看護師の有給休暇の実態と対応策

有給休暇が取れない看護師

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看護師はなかなか休みが取りづらい職業といわれています。シフトがあるため一般的な休日が休めないという事情もありますが、特に有給休暇が使えないと嘆く声は多いようです。

労働者の当然の権利とされる有給休暇が消化されないのは、職場として問題があります。しかし忙しすぎる環境の中で、自分だけ無理に休みを取ることができないと考える看護師は多いようです。

看護師の有給休暇の消化率と、その改善策について考えていきます。

      
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そもそも有給休暇とは?

有給休暇は働く人の権利

有給休暇とは、労働基準法上に定められた賃金の支払いがある休暇のことです。継続勤務期間と、週の所定労働時間によって日数が決められています。

パートやアルバイトなど、非正規雇用であっても条件にあてはまれば、有給休暇取得の対象となります。厚生労働省の規定による、有給休暇の発生は次の通りです。

  • 雇入れの日から6ヶ月継続勤務
  • 全労働日の8割以上出勤している

有給休暇の日数は6か月が経過した時点で、1年に10日間与えられます。18か月つまり1年半で11日間、2年半12日間、3年半14日間、4年半16日間、5年半18日間、6年半以上で20日間となり、6年6か月以降は毎年20日ずつ有給休暇が付与されます。

パートの場合には、勤務日数によって取得できる有給休暇の日数が変わってきます。

週の労働日数が4日間(年間169日~216日)のパート看護師の場合は半年で7日間、1年半では8日間、2年半9日間、3年半10日間、4年半12日間、5年半13日間、6年半以上で15日間取得できます。

有給休暇がない会社は労働基準法違反となります。また有給休暇の取得理由は個人の自由で、原則としては職場に問われないことになっています。

付与された有給休暇の権利行使の期限は2年です。2年を過ぎるとそれ以前の有給休暇は消滅してしまいます。また、退職をもって有給休暇の権利がなくなります。

有給無給の休暇の違い

休暇には労働基準法で定められた法定休暇と、会社が独自に与える特別休暇があります。

有給休暇は法定休暇の代表的なものですが、それ以外にも、育児休業や介護休業、産前産後休業なども法定休暇となります。法定休暇、特別休暇と有給・無給の関係は明確には定められていません。

例えば育児休業中は、基本的には会社からの給与はありません。その代わりに雇用保険から「育児休業給付金」が支給となります。看護師の産休の場合は健康保険組合から、出産手当金が給付されます。

特別休暇については、それぞれの企業独自で有給・無給を規定しています。主な特別休暇をみていきましょう。

忌引休暇
従業員本人との続柄に応じて1~7日間程度の休暇があります。有給扱いとするところが多いようです。
結婚休暇
従業員本人の結婚のみ認められます。5~7日間程度の休暇で、有給扱いとしているのが一般的です。
リフレッシュ休暇
一定年数以上の勤続に達した従業員に対する表彰としての意味合いを持ちます。勤続年数に応じて3~7日間程度の休暇を、有給扱いで与えるところが多いようです。
病気休暇
勤続年数にもよりますが、無給扱いとするのが一般的です。

看護師の有給休暇取得の実態

数字から見る看護師の有給休暇消化率

2013年に公表された「看護職員の労働実態調査」では、有給休暇の年間の取得日数は平均8.86日となっています。内訳は「10日以上」が44.5%、「20日以上」は5.6%です。

一方、「31.4%の看護師が5日以下」、全く取れなかった(0日)も3.3%見られます。有給休暇取得率が20%未満という看護師は、5割近くに上ると見られ、有給休暇の消化が進んでいないことがわかります。

看護師は全国レベルで慢性的な人手不足です。とても有給どころではなく、通常の休日でさえ翌月までくり越すという話も珍しくはありません。その状況から考えるとむしろ10日以上の有給が取れている看護師が5割近くいることに、驚く看護師がいるかもしれません。

有給休暇が消化できるかどうかは、病院の規模や医療施設の体制次第であることが浮き彫りになっています。

実は日本全体平均も低い?

2017年に旅行サイトのエクスペディアが行った調査によると、日本の有給消化率は2年連続で世界最下位という結果となっています。

日本人の平均有休支給日数が20日なのに対して消化日数は10日、消化率は50%です。看護師では10日の休暇を取得しているのは、4割台なので日本の平均以下ということになります。

企業に対しての調査では、有給休暇の平均取得率が20%以下なのは17%、取得率21~40%が21%、取得率41~60%が33%という結果となっており、有給休暇取得率が81%の企業はわずか7%と日本企業の中でもひと握りです。

全業種、全規模の企業を調べたわけではないので、一概には言えませんが、有給休暇の消化率が低い日本の中でも、看護師はかなりの低水準と言わざるをえないようです。

求人票や公開情報とは大きなズレがある

求人票や募集要項では、法律で定められた日数の有給休暇について記載があります。法律違反とならないように、どの病院も配慮しているためです。

しかし、実際に有給休暇を消化しなければならないという規定がないため、実情はかなりの差があると考えて間違いありません。

中には3か月以上前から有給の取得を申請しているのに、認可されないというケースも聞かれます。看護師側も、周囲が忙しいのに自分だけ休んでも良いのかという後ろめたさを感じて、強く押しきれない傾向がみられます。

しかしこれは、看護師だけに限ったことではないようです。先の日本の有給休暇取得率の例でも、有給休暇の消化に「罪悪感がある」と考える日本人は、世界最多の6割以上にのぼるとされています。

有給休暇の取得は周囲環境によって、大きく左右されます。求人票や公開情報でいくら明記されていても、現実的に取得のしやすい病院でなければ実現できません。

有給の消化率を上げることは可能か

個人でできることは限られる

有給休暇が欲しくないという看護師は、まずいないでしょう。できれば規定どおりに年20日程度の有給がもらえれば、リフレッシュできる機会が増え、体調管理も楽になります。

しかし「取らせてあげたいのはやまやまだけれど」「代替の人がいない」と言われれば、諦めざるるをえないというのが現実です。

個人で有給休暇を取るためにできることは、限られています。

  • 繁忙期を見極める
  • なるべく早期に有給休暇申請をする
  • 差しさわりのない範囲で理由を伝える

人の入れ替わりの激しい季節研修などでスタッフが減る時期を避け、早めに申請をしておけば希望が通る可能性が高くなります。

本来であれば有給休暇を取る理由を、雇用側に伝える必要はありません。またそれをしつこく聞くのは、個人のプライバシーの侵害にあたります。

しかし「老齢のおばの様子を見に行きたいので」「従妹の結婚式があるので」といった程度の理由であれば、伝える方が周囲との角が立ちません。本来の目的からあまり遠くならない程度のところで、休暇の理由を考えておくと良いでしょう。

病院側の取り組み事例

有給休暇が働く人の権利だとはいえ、職場の雰囲気が取りづらく、申請しにくいという看護師は少なくありません。休暇を取りやすくするよう経営側に働きかけるという手段もありますが、実際の話、ただでさえ忙しい業務の中声を上げるのは難しいものです。

そうした現場の状況に気づき、改善しようとする病院もあります。積極的に有給休暇取得を促進するために行われたものには、次のような事例があります。

  • 給与明細に年休の取得日数・残日数等を記載して本人・病院側が把握できるようにする
  • 公休日に年次有給休暇をプラスして連続休暇が取得できるようにする「プラスワン」運動

これらは病院側の取り組みとして実施されたものですが、現場の声として有給休暇取得に向けた改善案を提案するときの、ヒントとなるかもしれません。

病院によっては有給休暇の処理について、2年のうちに必ず20日は消化するよう決めているところや、〇日以上残数がある場合には賃金換算をして買い上げるといった施策を行っている場合もあります。

有給休暇を100%消化するのが無理だとしても、いろいろな手段を重ねて少しずつ改善していかなければ、休暇制度の意味がありません。

年次有給休暇取得義務化の実施

世界最下位が続く日本の有給休暇取得の現状を憂い、政府は「2020年までに有給休暇取得率70%とする」数値目標を掲げています。その具体策として労働基準法の改正により、2019年4月1日から「有給休暇5日の取得義務化」の実施に向けた動きが進んでいます。

法案が決定すれば、労働者に対して必ず年5日以上の有給休暇が実現されると同時に、取得申し出に対してうやむやにすることができなくなります。

有給休暇の取得がゼロだった看護師たちも、ようやく大手を振って休暇を楽しむことができるようになるかもしれません。

有給消化率の高い病院で働くために

看護師自身が有給休暇の必要性を認識する

有給休暇は、労働者の休養やリフレッシュの目的で定められたものです。仕事と生活をそれぞれ充実させるワークライフバランスの観点からも、必要不可欠といえるでしょう。

特に看護師の場合、日常業務は過密な労働と精神的ストレスに圧迫されるうえ、夜勤を含むシフトによって疲労がたまりやすい状態が続きます。

日本看護協会でも、看護師の有給休暇の消化率の低さを重視し、慢性的な疲労の蓄積について警鐘を鳴らしています。看護師個人の業務パフォーマンスが低下するだけではなく、命にかかわる重大な事故にもつながりかねません。

業務から解放され、心身を完全にリフレッシュするためには、1年に数回は連続した休暇が必要です。連休のないことが当たり前で、有給休暇を申請するのが申し訳なく感じるのはおかしいと気づかなければなりません。

有給休暇の取得は、看護師自身を守るだけではなく、医療現場の安全性を維持するためにも重要な課題なのです。

有給休暇の取得状況がものがたる病院の体制

有給休暇を「取らせない」ような病院は、看護師を単なる労働力としてしか扱っていないという見方ができます。おそらくは他の部分でも、看護師に負担ばかりを強いるような病院運営がみられるのではないでしょうか。

法律の改正からもわかるように、社会の動きは労働環境の改善に向かっています。

しかし、実際の現場にそれらが反映されるまでには、相当な時間を要すると思われます。特に現在、有給休暇の消化について問題視していない経営陣であれば、早期の改善について期待がもてません。

有給休暇をはじめとする休みと仕事のバランスについて、思うところがあるのであれば、働く環境を変えるのもひとつの方法です。

休みが取れないから転職する、というと真面目な日本人には抵抗があるかもしれません。しかし、看護師は身体が資本です。疲れ切って業務への意欲が低下してしまい、大きなアクシデントにつながるよりは、働く場所を変更する方がずっと賢い選択といえるでしょう。

有給休暇の消化率は外からは見えにくい

転職にあたって有給休暇の消化率をひとつの条件としたとき、個人でそれを探り出すのは簡単ではありません。有給休暇の取得率を詳しく公開している病院が多いとはいえないうえ、公表された情報が現実に即した数値なのか確かめようがないからです。

それを考慮すると、転職サイトの活用がもっともおすすめです。

転職エージェントは病院内部の事情にも詳しく、看護師たちの動向にも敏感です。休みが取りやすい病院を明確な条件とすれば、それにマッチする応募先を提案してくれるでしょう。

病院側が看護師の労働環境に対する取り組みに熱心なのかについても、転職エージェントを通せば知ることができます。

病院の規模に関わらず、有給休暇取得を奨励し、実現に向けて取り組む経営者もいます。新しい職場を選択する際の判断材料として有給休暇の取得に目を向けることで、働きやすさ全般の目安にできるかもしれません。

看護師という厳しい職業だからこそ、長く働いていくためにも、しっかりとした休暇制度が整えられた職場を選んでいきたいものです。

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