[ 記事作成日時 : 2016年11月23日 ]
[ 最終更新日 : 2020年2月18日 ]

看護師の退職金はどれくらい?年次別・職場別の退職金事情についてくわしく解説

看護師の退職金

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一般的な職業と比較して看護師の収入は高いといわれていますが、初任給こそ平均を上回るものの、生涯賃金から見れば必ずしも高額とはいえません。

女性の職業としては確かに高い位置にあるとしても、その労働の重さの対価として果たして適正であると言えるのでしょうか。

もうひとつ気になるのが、看護師の退職金事情です。退職金は長期間にわたる労働をねぎらう意味をもち、退職後の生活を安泰にするための大切な資金となります。

社会に大きな貢献を果たした看護師に対して、どの程度の退職金が支払われているのか、詳しく見ていきます。

      
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退職金とは

最初に退職金についての基本的な知識を確認していきましょう。

退職金の法律上の扱いと一般的な企業の実施状況

退職金はその名の通り「会社を退職する際にもらえるお金」のことですが、実は法律で定められているものではありません。

労働基準法では退職金がある場合、就業規則にその支払い方法や金額について記載することが求められていますが、退職金を支払えとは明記されていません。

つまり看護師として働いたからといっても、その病院や施設に退職金の制度がなければ、退職時に請求することはできないのです。

厚生労働省の調べによると、退職給付(一時金・年金)制度がある企業数割合は、83.9%で、企業規模別にみると、1,000人以上が95.2%、300~999人が92.2%、100~299人が88.0%、30~99人が81.7%となっています。

規模が大きいほど退職給付制度をもつ企業の割合が高く、ほぼ8割の企業が何らかの給付を行っています。

一方でりそな年金研究所が2017年に公表した調査結果では、中堅・中小企業においては、2000年時点では約9割の企業が何らかの形で退職給付制度を有していたものの、その後実施割合は徐々に減少し、2016年では7割を切る水準となりました。

退職金の3つの形

一般的に退職金というと退職時に大金を受け取れるイメージですが、退職金には主に3つの形があります。

退職一時金制度

退職時に受け取れる制度です。勤続年数により規定されている場合には、定年退職だけではなく中途退職でも支払われる可能性があります。自己都合・会社都合それぞれで条件が変わるケースも見られます。

企業年金制度

退職時に一時に支払われるのではなく、規定年齢に達した後に年金として受け取りができます。退職一時金と併用している企業も多く見られます。

前払い制度

「退職金」という形ではなく、予め決められた金額が月額給与や賞与に分散して支払われます。退職時の給付はないけれど、基本給が他に比べて大場幅に高く設定されているという場合には、この制度が適用されている可能性があります。

退職時の状況によっても金額が変わる

基本的には退職金制度が設けられている企業などでも、勤続年数によって支給額が異なったり、もらえなかったりする場合もあります。

東京都産業労働局の調査によると、退職金支給のための最低勤続年数は、自己都合退社の場合、3年が52.2%、1年が18.8%、2年が16.6%という結果になっています。

一般的には、勤続3年以上の場合にのみ退職金を支払う企業が多く見られます。

また自己都合については、さらに勤続年数の条件が厳しくなったりまったく支払われなかったりするという可能性もあります。

このため退職金制度に期待していたら、勤続年数が規約に届かず、予想外にもらえなかったという話も少なくないようです。

看護師の職場の退職金

看護師の職場となる場所には、病院を始めとしてさまざまな施設があります。その業態や営業の形態によって、退職金の有無が分かれます。

国公立の病院の場合、看護師は公務員またはそれに準じる扱いとなり、退職金の規定は明確に定められています。

大学病院などの規模の大きい施設でも、退職金制度をもつところがほとんどです。

しかし私立の病院や中小規模の施設では、必ずしも退職金があるわけではないようです。「退職手当」と称していても勤続年数に関係なく、数万円がわたされるだけというところも少なくありません。

クリニックに関しては特に退職金制度を整備している割合は低く、従業員50人以上でも約35%、10人以上50人未満では約11%、10人未満では約5%程度となっています。

看護師の中には退職金についての知識が乏しく、就職すれば必ずもらえるものと思っている人がいるかもしれません。

長期にわたって働いた後で、退職金がもらえないとなると相当のショックであり、悲劇です。

転職や就職で応募をする際には、前もって退職金制度の有無と給付金額の算定方法について確認してみると良いでしょう。

また現在働いている職場の退職金制度がどうなっているのかわからないときには、就業規則を自分でチェックしてみる必要があります。「退職慰労金」「退職手当」「退職一時金」などの文言があれば、多少に関わらず退職金制度があります。

ただ家族経営のごく小規模なクリニックの場合では、就業規則そのものが整備されていないこともあるため、注意が必要です。

年次による退職金の相場

看護師の退職金の違い

退職金はどの程度働けばもらえるのでしょうか。退職金制度を設けている病院や施設では、一般企業と同様に、勤続年数2~3年経過を退職金の条件とすることが多いようです。

年次による退職金の平均的な相場を見ていきましょう。

3年目の看護師の退職金

3年目で退職をした場合の看護師の退職金は、30万円前後、あるいはそれ以下が相場です。3年以内に退職してしまうと、まったくもらえないパターンもあるようです。

退職金の計算方法は各病院によって異なりますが、基本給をベースにしていることが多く、そこに在職中の貢献度や勤続年数などによる評価が付加されます。

勤続3年程度であれば、まだ職場への貢献度も低いため月額給与ひと月分くらいが目安といったところです。

あまり大きな金額は受け取れない年次と考え、退職金は諦めるか、もらえたらラッキーくらいに考えておくのがベターです。

5年目の看護師の退職金

勤続4年以上であれば30~50万円程度受け取れることが多いようです。勤務年数3年の壁を突破すれば、確実に30万円はもらえるのではないでしょうか。

退職金の受け取りを考えるのであれば、どのような事情であれ、4年以上を目標にして勤めるのがおすすめです。退職後に生活費にあてられるまとまったお金があれば、次の転職先を探すまでに余裕ができます。

さらに勤続5年以上になれば、金額が50~100万円に上がります。

50~100万円ほどもらえれば、たとえ自己都合の退職で失業保険の待期期間があったとしても、少し安心して過ごせるのではないでしょうか。

100万円といえば3か月分の生活費にあたります。転職活動に集中でき、じっくりと次の職場を吟味することもできます。

10年目の看護師の退職金

勤続10年であればその平均額は250~300万円ほどになります。

勤続5年から見ると一気に上がる感じがしますが、それだけ連続勤務に対して評価されているということなのかもしれません。

看護師の10年目といえば、30代の前半です。結婚や出産などライフステージが変化し、生活を見直したり仕事について考え直したりする時期でもあります。

ステップアップのために勉強をしたいという意欲を持つ人も多くなります。そんな時にまとまった退職金がもらえれば、さまざまな可能性が開けます。

家族のために役立てたり、学業資金にしたりと未来を見据えた選択ができそうです。

20年目の看護師の退職金

勤続20年働いた場合は450~600万円程度が相場とされています。

看護師として20年くらい勤めると、大体40~50歳くらいになっている頃です。

定年より前に退職金をもらって少しのんびりするという選択肢もありますし、さらなる退職金アップを狙って定年までがんばるという道筋も見えてきます。

ここで挙げた退職金はあくまで平均的な金額です。これらの勤続年数と同じくらいに退職を申し出て、必ずしもこの金額がもらえるという保証はありません。

特に注意したいのが、「中途退職」=「自己都合」となる場合です。

病院や施設によっては定年前に退職すると、自己都合として扱われ、正規退職金の7割程度に減額されることもあります。

こうした規定についても就業規則に明記されているはずなので、しっかりと確認し、後悔のないように行動することが大切です。

役職別で退職金は変わる?

役職手当や功績倍率が反映される可能性あり

主任クラスでは退職金にあまり影響が出ないようですが、管理職である看護師長や看護部長となると、やはり退職金には大きな差が出てきます。

ただ原則としては、基本給や勤続年数がポイントであることは変わりありません。ポジションの昇格に従い、基本給が上がる病院であれば、最終的に退職金に反映されます。

基本給や勤続年数に加え、職場への功績を加算するところもあります。こうした場合には役職が上がるほど、功績倍率も高くなり、その分退職金も高額になります。

功績倍率は役職によって、2倍、3倍となることもあるようですが、自身でその数値を把握しているという人はあまりいないようです。

功績倍率は一般職の看護師でも1~1.5倍の乗算がありますが、看護師長や看護部長はさらに数値が高くなると考えられます。

例えば国立病院での比較では、一般職の看護師が定年退職した場合の退職金は約1,800万円ですが、看護部長の場合は約2,400万円です。看護師長の明確なデータはありませんが、ここから類推すると約2,000~2,200万円程度となるようです。

役職に関しては自身の思い通りになるわけではありませんが、昇格を目指して業務に励むことは、最終的な収入の拡大につながることは間違いなさそうです。

職場別の看護師の退職金事情

看護師の退職金は職場の制度により、かなりの違いがあります。退職金制度の整備状況により、そこで働く看護師の生涯収入金額に大きな差が生まれます。

職場別の退職金について見ていきましょう。

国立病院(国立病院機構)

国立病院の退職金は、国公立系の病院の中でもかなり手厚いとみられます。

看護師は公務員ではありませんが、準公務員とみなされ、退職金の規定は「公務員退職手当法」に従っていました。

2015年4月に国立病院機構の独立行政法人化が実施されたため、従来ほど公務員扱い的な要素は少なくなりましたが、退職金の金額については大幅に引き下げられることなく、これまでと同様の従来と同程度のレベルを維持しているようです。

先にもあったように2014年の実績では一般職の看護師で定年退職した場合の退職金は約1,780万円です。看護師の退職金としては、かなりレベルの高い金額といえそうです。

公立病院

市立や県立病院に務める看護師は、自治体の職員として地方公務員の扱いとなります。

退職金については「地方公務員法」に従って支払われます。支給額は所属する自治体によっての違いはありますが、規定にのっとり看護師としては高水準の退職金が支払われます。

例えば都道府県立の看護師の場合には、定年退職時の退職金の相場は約1,400万円です。もっとも高いのは政令指定都市立の病院で、平均額は約1,900万円となっています。

市町村立は約1,800万円で、国立病院と変わらないハイレベルの金額となっています。

退職金の高さで考えるのであれば、全国に20か所ある政令指定都市立の病院をねらうという選択がおすすめといえるでしょう。

大手総合病院・企業資本の病院

大手総合病院や企業が資本となっている病院、私立大学病院などの退職金は、運営の状況などによって退職金の金額で差が出ますが、おおむね高水準といえるようです。

病院によっては2,000万円クラスとなるところもあり、国公立系よりも高額の退職金がもらえる可能性があります。

その一方で1,000万円以下という病院も多いため、退職金制度について確認するとともに、病院の経営状況についても情報を見ておく必要がありそうです。

ただこうした病院では退職金を低く抑える一方で、基本給が高いということもあります。

支払いを分散しているだけで、トータルで見れば退職金込みの収入が公立系クラスと同等ということも考えられるため、全体的に比較してみることが大切です。

小規模な病院・クリニック

冒頭にあったように、退職金は法律で決められた雇用元の義務というものではありません。そのため、小規模な病院やクリニックなどについては退職金規定を定めていないところも多く見られます。

就業規則に退職時の給付が記載されていない場合には、退職金にあたるものがないと考えて良いでしょう。

特に求人をいつも出しているような病院やクリニックでは、ひんぱんに退職者が出ている可能性があります。その場合、いちいち退職金を出せる状態ではないと考えているのかもしれません。

一般企業でも地方の小規模な事業所では、退職金制度がないことが珍しくありません。雇用側として従業員に対してどのような姿勢でいるのか、退職金制度の有無もひとつの目安となりそうです。

介護関連施設

看護師の勤務先として需要が拡大しているのが、介護関連施設です。大小さまざまな規模があるため、クリニックなどと同様に入職時には確認が必要です。

介護施設についてはこれまで退職金制度が整備されていないところが多く見られましたが、大手企業の参入が相次いだことで、退職金制度の導入にも目が向けられてきたようです。

大手が運営する高齢者介護施設や有料老人ホームなどでは、勤続年数に従い、病院と同程度の退職金が準備されるところも増えてきています。

ただこうした施設に関しては、母体となっている企業の経営状態に左右されることが多いので、資本元などを確認しておくと安心です。

介護業界は人員の流動が大きいため、逆に長期に勤めてくれる人材に対しては、退職金を支給するという傾向もあります。

金額的には事業所の規模や勤続年数にもよりますが、定年まで勤め上げると多いところでは1,000万円以上というケースもあるようです。

公務員看護師の退職金

収入が安定していて福利厚生が充実している公務員は、社会的にもうらやましがられることが多い職業ですが、退職金の面でもしっかりとしています。

公務員看護師の退職金制度について見てみましょう。

公務員看護師の種類

公務員もしくはそれに準ずる身分となる看護師の働く場所は、以下のような施設です。

  • 国公立病院
  • 保健所・保健センター
  • 自治体運営の医療関連施設
  • 公立の保育園・幼稚園
  • 公立の看護専門学校
  • 厚生労働省・関連機関
  • 自衛隊

国家公務員と地方公務員の退職金

国家公務員の退職金は、国家公務員法で規定されておりその計算式は以下の通りです。

・退職手当額=退職日の俸給月給×退職理由別・勤続年数別支給率

一方、地方公務員の退職手当については、地方公務員法で「国家公務員の制度に準ずること」とされています。

地方公務員の退職金の計算は、以下の通りです。

  • 退職手当額 = 基本額 + 調整額
  • 基本額 = 退職日給料月額 × 退職理由別・勤続年数別支給率

公務員の場合は、一般企業のように「〇年以上の勤務実績」ではなく、1年目でも退職金の対象となります。

勤続年数と退職理由による支給率の割合は以下の通りです。

勤続年数 自己都合退職 定年
勧奨退職
整理退職
1年 0.6 1.0 1.5
5年 3.0 5.0 7.5
10年 6.0 10.0 15.0
15年 12.4 19.375 23.25
20年 23.5 30.55 32.76
24年 31.5 38.87 39.624
25年 33.5 41.34 41.34
30年 41.5 50.7 50.7
35年 47.5 59.28 59.28
45年 59.28 59.28 59.28

国家公務員が定年退職をした場合の平均退職手当は約2,108万5,000円です。地方公務員の場合は、各自治体にもより差異はありますが、定年退職した場合の全国平均では約2,201万3,000円となっています。

一般的なイメージでは国家公務員として就職する方が難しいように思えますが、退職金を見ると地方公務員の方がやや上回っています

地方公務員として働ける場所は意外と身近にあり、また準公務員扱いであっても退職金の金額にはそれほど違いがないようです。

将来的に必ず退職金を確保したいと考えているのであれば、ゆるがない規定によって支給が定められている公務関連の職場が確実です。転職を機に情報を集め、思い切ってチャレンジしてみることをおすすめします。

看護師の退職金の計算とモデル例

公務員の退職金について見てきましたが、一般の企業や看護師が勤める施設の多くも、公務員法をモデルに退職金制度を定めています。

退職金の計算の仕方や、モデル例を見ていきましょう。

退職金の考え方と仕組み

退職金は法律で定められている労働者の賃金や、労働に対する報酬という位置づけではありません。そのため法律で定められていないわけですが、それではどのような考え方の下で支払われているのでしょうか。

退職金は長期にわたり職場で働いてくれたことへの「慰労金」という位置づけとなります。

そのため小さなクリニックでは「寸志」程度の金額となっていることもあり、いわば雇用側の在り方ひとつで決まってしまいます。

とはいえ、社会的には8割以上の事業所が退職金制度を実施しており、そうした制度をもつ病院では就業規則の規定に従って支給されています。

退職金の金額計算の仕組みについては、特に決められていないためそれぞれが独自の方式を採用しています。

主なものを紹介していきましょう。

基本給をベースとした方法

  • 退職金支給額=基本給×勤続年数

もっともシンプルな算出手段としては、退職時の基本給に勤続年数をかける方法があります。例えば退職時に基本給が20万円で、10年間勤務していた場合、退職金は200万円となります。

わかりやすい方法ですが月額支給される給与額がベースではないため、夜勤などで加算される分を差し引いて計算する必要があります。

固定金をベースとした方法

  • 退職金支給額=固定金×勤続年数

基本給ではなく、病院側が予め設定した「固定金」に勤続年数をかける方法/spanです。

例えば固定金が15万円の場合で、10年間勤務していた場合、退職金は150万円となります。

勤め始めから退職金の予測額を計算できますが、年次に従って基本給が上がっても退職金に反映されないというデメリットがあります。

勤続年数をベースした方法

病院が勤続年数ごとに退職金を定めているという方法です。

例えば、勤続年数が5年以上で100万円、10年以上で200万円、20年以上で300万円といった定め方となります。

就業規則を見ればいつどのくらい受け取れるかが一目でわかるため、働き続けるもモチベーションにはなりますが、途中で辞めた場合があいまいになる可能性があります。

決められた年数ごとの間の期間がどのような扱いとなるのか、確認しておくと良いでしょう。

基本給と功績倍率をベースにする方法

基本給と勤続年数に独自に設定された「功績倍率」をかける方法です。

例えば基本給が20万円で、10年間勤務していた場合、200万円に功績倍率をかけた金額が退職金となります。

この功績倍率の考え方は、職場への貢献度を病院側で評価するというものです。

同じく10年勤務していても、人によっては200万円に近い場合もあれば、400万円に近くなることもあります。

1を基準にした指数となるため、功績倍率が1を上回ればその分退職金の金額に加算がありますが、評価が悪く1を下回ってしまうと200万円以下になる可能性もあります。

自分の頑張りによって大きく金額を伸ばすことができる一方で、評価基準が主観的になりがちなため、もらう側に不満が残る可能性もあります。

誰がどのようにして評価しているのか、功績倍率の決め方が可視化されているのかといった点がポイントとなります。

退職金の制度があるところでも、金額の算出方法はそれぞれです。

例えば固定金が極端に低く設定されていたり、基本給がほとんど上がらなかったりする職場では、何十年勤めても退職金額にはそれほど期待できません。

求人票に「退職金制度あり」といった記載があっても、どのような方法で支給されているのかによって、生涯収入が大きく変わってきます。

退職金制度についての知識が一通りあれば、転職活動の際の参考にできます。

看護師の資格による退職金の違い

看護師とひと口にいっても、資格には違いがあります。もっとも根本的な違いとしては、正看護師と准看護師が挙げられます。そのほか、看護師に上乗せして取得できる資格もあります。

例えば専門看護師や認定看護師の場合では、資格手当という形で付与されるため、退職金としては一般の看護師と比較してさほどの違いは見られないようです。

ここでは、資格の違いによる退職金の額について見ていきましょう。

正看護師と准看護師の退職金の差

正看護師と准看護師には、国家資格と各都道府県知事の免許という違いがあります。業務的に行うことができる範囲にほとんど違いはありませんが、基本給などには差が見られます。

退職金の金額の違いにはどの程度の差があるのでしょうか?先ほどの4つの算出方法について考えてみましょう。

基本給×勤続年数の場合

基本給とはいっても、実際の病院の規定をみると「退職時の給料月額」を元に計算しているところが多くなっています。

正看護師と准看護師それぞれの平均月額給与で比較してみましょう。

  • 看護師:月額給与33万円×勤続年数40年=1,320万円
  • 准看護師:月額給与28万円×勤続年数40年=1,120万円

勤続年数が長ければさらに上乗せされることも考えられますが、基本的には200~300万円程度の差となりそうです。

固定金×勤続年数の場合

こちらについては、病院が定める固定金が正看護師と准看護師で異なる場合のみ違いが生じます。例えば固定金がいずれも30万円と決められている場合には、資格による違いはありません。

  • 看護師:固定金30万円×勤続年数40年=1,200万円
  • 准看護師:固定金30万円×勤続年数40年=1,200万円

勤続年数がベースとされている場合

こちらについても、病院側が資格を金額の設定の要素としているかどうかで変わってきます。特に差を設けていない場合には、勤続年数が長くなるほど、退職金も増えていきます。

基本給×勤続年数×功績倍率の場合

ここでは功績倍率が1.3の場合で比較してみましょう。

  • 看護師:月額給与33万円×勤続年数40年×1.3=1,716万円
  • 准看護師:月額給与28万円×勤続年数40年×1.3=1,456万円

単純に勤続年数をかけた場合よりも、差が広がっていることがわかります。

ただし功績倍率を使った方法は、個人の評価に対するものなので場合によっては大幅にアップできることも考えられます。

助産師の退職金

助産師の退職金の相場は、看護師と同様に勤務年数によって変わります。

また働く場所によっても違いがありますが、すべての職場を含めた場合の退職金の平均額は10年の勤務で約400~600万円20年の勤務で1,300~1,500万円程度とされています。

看護師の場合では10年で250~300万円、20年で450~600万円なのでかなり高水準といえる金額です。

ただ助産師の場合は、看護師全体よりも働く場所が限られているという事情もあります。資格が上乗せされている分、基本給も高く設定されているということも関係してきそうです。

大規模な病院で新卒から定年まで勤め上げた場合では、2,500万円という退職金が出たケースもあります。

看護師の中でもさらに高額の退職金が期待される資格といえそうです。

保健師の退職金

保健師については働く場所が公的な機関である場合が多く、公務員またはそれに準ずる扱いとなります。

一般的には次のような計算式が使われているようです。

  • 退職金=退職月の給料月額×支給率+調整額

さいたま市地方公務員の、「保健師の退職金について」公表されているものを参考に見てみましょう。

さいたま市の地方公務員の退職手当については、地方自治法(昭和22年法律第67号)第204条第2項及び第3項の規定により、各地方公共団体の条例により定めることとされている。退職手当の計算方法及び支給率は以下のとおりです。

  • 退職手当額=基本額+調整額
  • 基本額=退職日給料月額×退職理由別・勤続年数別支給率
  • 調整額=調整月額のうちその額が多いものから60月分の額を合計した額

基本額の支給率は勤続年数によって変わり、定年退職の場合勤続35年以上で49.59か月分として計算されます。さいたま市の保健師の一人当たりの平均支給率は、定年退職で2,421万6,000円となっています。

助産師と同じく、保健師も看護師の中では高額の退職金が支給されているようです。

一般的な職種と看護師の退職金の比較

看護師は初任給こそ高く設定されていますが、途中からの昇給ペースがにぶり、最終的には他業種の平均よりも低くなる傾向があります。

最後に一般的な職種と比較した場合の、看護師の退職金について見ておきましょう。

厚生労働省の公表しているデータをもとにした退職金の平均支給額は、勤続35年以上の大卒者の場合、2,156万円です。一方高校卒業者では、1,484〜1,965万円となっています。

これまで見てきた看護師の退職金の平均を見てみると、一般職の看護師の退職金は1,500~1,700万円前後准看護師は1,200~1,400万円前後と推測されます。

看護師の業務内容から考えて、一般的な職業の退職金と比較すると、決して高額とはいえません

しかし退職金に関しては勤め先の事業規模や保健師・助産師などの資格によっても大きく左右されるため、一概に結論づけられるものではありません。

自身の将来を考えたとき、退職金の有無は非常に大きな問題です。

若いうちはあまり気にかけていないことも多いようですが、転職に先立ち、退職金をひとつの条件に加えて考えることが、未来に向けた重要な選択となるのかもしれません。

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