[ 記事作成日時 : 2013年8月12日 ]
[ 最終更新日 : 2020年6月22日 ]

治験コーディネーターへ看護師から転職「勤務形態、職場、給料は?」

治験コーディネーターに転職

患者に対して開発中の新薬を投与し、薬の有効性や安全性を最終確認する臨床試験である治験に深く関わるのが、治験コーディネーターという仕事です。

ここでは、看護師から治験コーディネーターへの転職を考えたとき、気になるアレコレをまとめました。

治験コーディネーターとは

実験レベルで病気に対して効果があり人に使っても安全と予測された新薬を、健康な人や患者の協力を得て効果や安全性を調べる臨床試験である治験。

この治験を受ける患者(被験者)のスケジュール管理やケアをはじめとする業務を担当するのが治験コーディネーターです。患者に限らず、治験に関わる医師や看護師をサポートする立場にもあり、治験を受ける側、行う側の調整をするのが仕事です。

英語では「Clinical Research Coordinator」と表記されるため、治験コーディネーターを「CRC」と呼ぶこともあります。

治験コーディネーターの仕事内容、職場、勤務地

新薬開発には欠かせない治験コーディネーターですが、どのような職場でどのような仕事をしているのでしょうか。雇用先によっては勤務スタイルが変わることもあるようです。

仕事内容1.治験前準備

治験コーディネーターは、製薬会社が作成した治験実施計画書に基づいて業務にあたります。

製薬会社の臨床開発モニター(CRA)から説明を受け、対象の疾患と治験薬について学ぶところからスタート。医師や看護師、薬剤師、臨床検査技師と治験前のミーティングを行う際は、治験コーディネーターが資料作成や議事進行のサポートにあたります。

仕事内容2.被験者への対応

治験実施計画書に合った条件の被験者を探し出します。その方法は、医師に患者の紹介を依頼する他、電子カルテから見つけたり、広告募集をすることも。

被験者が決定したら、治験責任医師が被験者に向けて治験内容やスケジュール、予想される副作用などを事前に説明するインフォームド・コンセントを行います。治験コーディネーターはインフォームド・コンセントや治験開始後の診察にも同席します。

被験者に渡す説明文書や同意書を作成し、被験者の来院スケジュールを管理したり連絡するのも治験コーディネーターの役割です。

仕事内容3.治験担当医師への対応

被験者の検査データや副作用などの情報をまとめて治験責任医師が症例報告書(CRF)を作成します。治験コーディネーターは、医師の指示のもと、部分的にCRFの作成を担当することもあります。

仕事内容4.治験依頼者、CRAへの対応

モニタリングといって、治験の依頼者である臨床開発モニターが治験の進行状況や適正に行われているかを調査することも。このとき、治験コーディネーターが臨床開発モニターの調査に立ち合ってサポートします。具体的には被験者向けに発行する書類や治験に関する報告書を確認し、臨床開発モニターからの質疑応答に対応します。

臨床開発モニターとは

治験コーディネーターとも多く関わる臨床開発モニターは、治験を依頼した製薬会社の担当者のこと。英語では「Clinical Research Associate」といい、略して「CRA」とも呼ばれます。

医療機関の立場から治験業務にあたる治験コーディネーターに対し、臨床開発モニターは製薬会社の立場から治験の進行を調査したり、適正に治験が行われているかを確認します。臨床開発モニターは治験コーディネーターと同様、看護師の転職先として人気の職種です。

しかし、報告書をはじめとする書類作成が多いので、看護師としての勤務経験しかない人にとっては手こずることもあるかもしれません。

また、プロジェクトの開始と終了時には残業が多く、出張や病院間の移動もしばしば。看護師とはまた違った種類の忙しさがありそうです。被験者である患者さんとは接することはないので、患者さんとの関わりを求める人には物足りなさを感じることもありそうです。

参考:dodaメディカル「CRAとは」

仕事内容5.QC(品質管理)

有害事象の発見や報告書作成のサポートをすることも。さまざまな疾患の知識をもつ看護師にとって、自分のスキルを活かすことができるシーンといえそうです。

治験コーディネーターの職場

治験コーディネーターの職場は、病院をはじめとする医療機関の治験事務局に勤務するパターンと、民間企業(SMO)に勤めて医療機関に派遣されるパターンの2通りの方法があります。

SMOとは、治験を実施する医療機関から治験に関わる業務を受託する治験施設支援機構のこと。どちらも仕事内容に差はありません。

業務内容に差はないとはいえ、院内CRCは勤務地が固定であるのに対し、SMOに所属するCRCは担当する医療機関を選ぶことができません。また、複数の機関を担当するので移動が多いことが特徴です。

治験コーディネーターの勤務地

医療機関の治験事務局で働く場合は、病院勤務となります。SMOで治験コーディネーターとして働く場合は、治験ごとに派遣される医療機関が異なり、日によって勤務地が変わったり長期出張を伴うことも。自分では勤務地を選べないので、担当する病院によっては通勤時間が長くなる可能性もありそうです。

病院に出向かない日は、勤務先のオフィスで働くこともあります。

治験コーディネーターに向く? 向かない? チェックテスト

自分には適性があるかどうか、転職するときには気になるもの。治験コーディネーターに向いているのはどのような人なのでしょうか。以下のチェックテストで確かめてみましょう。

治験コーディネーターに向く? 向かない? 5つのチェック

1.パソコンを使ったデスクワーク、書類作成に抵抗がない

治験の資料をはじめ、被験者への説明文や同意書に報告書など、治験コーディネーターが作成する資料は多くあります。看護師よりもデスクワークが多く、事務作業が多いのが特徴なので、そういった作業に抵抗がなくパソコンを使い慣れている人は向いているといえるでしょう。

2.看護師以外の仕事に興味がある

被験者である患者のケアやサポートも業務の一つですが、それだけにとどまらないのが治験コーディネーターの仕事です。院内スタッフに業務内容を説明したり、資料を作成して協力を仰いだりと、治験というプロジェクトをスムーズに行うための進行管理にやりがいを感じられる人は向いています。

3.薬学の知識をもっと身につけたい

担当する治験に関しては、まず製薬会社の臨床開発モニターが開催する治験コーディネーター向けの勉強会でしっかりと学べます。そのため、治験を担当するたびに薬や疾患に関する知識が増えていくでしょう。医療従事者としてさらなる知識を身につけることができるのが、治験コーディネーターのメリットです。

4.人とのコミュニケーションや調整、交渉が好き

治験コーディネーターが同席するインフォームド・コンセントでは交渉スキルが問われます。被験者からの治験に関する質問は治験コーディネーターが回答し、メリットやデメリットも説明。被験者となる患者の気持ちをくみ取りつつ、新薬開発のために治験に参加してもらうよう話を進めることが求められます。

また、被験者のスケジュール管理も大切な業務の一つ。被験者の来院日をはじめ、検査や投薬予定のスケジュール管理は治験コーディネーターが行います。治験の期間は長いときで半年以上にも。医師や被験者とのコミュニケーションをしっかり取って、信頼関係を築くことが大切です。

参考:日本SMO協会「CRCとして働くには」

5.スケジュールどおりに物事を進めるのが好き

看護師の仕事は患者の数や容体が優先され、予定どおりに行かないこともしばしば。しかし、治験コーディネーターの仕事はあらかじめ決められた計画に基づいて進めるため、スケジュールは遵守すべきもの。予定どおりに治験を進められるよう段取りをすることが必要です。

治験コーディネーターになるには?

治験コーディネーターに転職するために必要な資格や経験はあるのでしょうか? 治験コーディネーターとして求められるのはどのような人なのでしょう。

看護師歴、臨床経験は?

看護師以外の仕事への転職を考えるナースにとって治験コーディネーターは人気の職種ですが、看護師資格は必要ありません。もちろん、臨床経験も不要です。

しかし、治験コーディネーターは被験者となる患者を探すために電子カルテを閲覧したり、治験開始後は被験者のカルテを見て報告書をまとめるといった業務もあり、医療の知識をもっていない人にとって最初は難しいと感じる部分があるのは確かです。

治験コーディネーターを目指す人にとっては、医療系の知識をもち、病院勤務の経験がある看護師には大きなアドバンテージがあるといえるでしょう。

必要な資格は?

治験コーディネーターになるために必要な資格はありません。看護師に限らず、医療現場での勤務経験がない人も目指すことができる仕事です。

とはいえ、治験担当医師や被験者のサポートを行うにあたってのコミュニケーションスキルが求められます。看護師としての勤務経験があれば、一つ上をいく対応もできそうです。被験者に安心感を与える対応ができたり、被験者の変化に気がつけるのは、看護師として患者に接してきたからこそといえます。

また、医療に関する知識をもっているので、医師との専門的なやりとりもスムーズにできるでしょう。看護師として磨いてきたスキルは、治験コーディネーターになっても活かすことができそうです。

そのため、看護師以外に薬剤師、臨床検査技師の資格や経験があると有利といわれています。

治験コーディネーターのメリット、デメリット

治験コーディネーターの仕事や年収、勤務体系から、治験コーディネーターとして働く場合のメリットとデメリットを考えてみましょう。

メリット1.看護師と同じかそれ以上の収入

治験コーディネーターになるために看護師資格が不要なのは先にご紹介したとおりですが、医療資格保有者は基本給が優遇されることも多いようです。看護師時代と同レベルの年収が得られるだけでなく、それ以上に年収がアップする可能性も!

看護師は夜勤で稼ぐといわれますが、夜勤なしで看護師と同様の収入があるとすればうれしいですね。

ただし、転職した年は年収が下がることが多いので注意が必要です。なぜなら、医療従事者であったとしても治験コーディネーターとしてはあくまで未経験のため、初年度は給料が低く設定されるからです。

しかし、治験コーディネーターは看護師よりも昇給率が高いのが特徴なので、経験を積んで年収アップを目指しましょう!

メリット2.基本は日勤のみ、土日祝日はお休み

一般的な会社員と比べて不規則な勤務形態である看護師にとって、夜勤なし、土日祝日が休みになるのは魅力的。看護師と比べると、ワークライフバランスがとりやすい仕事だといえそうです。

メリット3.新薬開発のやりがいを感じる

これまで現場で数多くの患者と出会い、病気が治っていっしょに喜んだこともあれば、最善の治療法がなく、ときには悲しい思いや悔しい思いをしたことも少なくないはず。

治験コーディネーターとして新薬開発に関わることは、これまでは救えなかった患者を救うことにつながります。自分が携わった治験から新薬が誕生したときには、大きな達成感を味わうことができそうです。

デメリット1.デスクワークが多い

被験者や医師との関りの他、資料や報告書の作成といった事務仕事も多いのが治験コーディネーターの仕事の特徴です。メールやワード、エクセル、パワーポイントといったパソコンスキルが必要。患者の対応に駆け回る看護師とは、仕事のスタイルががらりと変わりそうです。

デメリット2.移動が多い

SMOの治験コーディネーターとして働く場合、勤務先は固定ではなく、治験ごとに派遣される医療機関が異なります。午前と午後で違う医療機関に出向いたり、遠方へ出張することもあり、移動が多いのが特徴です。

デメリット3.専門知識が必要

新しく治験を担当するたび、対象の疾患や薬について学ばなければなりません。医療面での知識が求められるのはもちろんですが、治験に関わる法律の知識も必要。学び続けることが求められます。

治験コーディネーターは子育て中の看護師に向いている?

看護師と違って、夜勤なし、土日や祝日が休みといった条件は、子どもをもつ看護師にとっては大きなメリットです。

しかし、SMOから派遣される治験コーディネーターの場合、担当する医療機関が自宅から近いとは限りません。通勤に時間がかかる施設の担当になった場合、保育園のお迎え時間に間に合わないなんて事態も…。

子育て中の看護師が治験コーディネーターを目指すなら、勤務地が固定される院内CRCを選ぶのが無難かもしれません。

参考:
CRCばんく「看護師がCRCへ転職する際の注意点」
日本SMO協会「CRCとして働くには」

治験コーディネーターの給料

看護師から治験コーディネーターに転職した場合、収入はどうなるのでしょうか?

看護師の給料と比較したら?

看護師(女性)の平均月収は33.3万円、ボーナスは81.4万円、年収は約481万円です。

対する治験コーディネーターの平均年収は約469万円。一方、看護師経験者が治験コーディネーターに転職した場合、初年度の20代の年収は約390万円、30代で約405万円であるという調査結果があります。

看護師として身につけた医療の知識を活かせる職種ではありますが、治験コーディネーターとしては未経験。前述したように、転職直後の年収ダウンは覚悟しておいた方がよさそうです。

なぜなら、看護師は夜勤や残業などの手当で、ある程度、年収の調整やコントロールができましたが、治験コーディネーターは年収を大幅に変えることができないからです。

ただし、医療経験のない未経験の治験コーディネーターよりも、看護師資格をもつ人は資格手当などで優遇されることが多く、看護師とは違って勤務年数と年収が正比例となる職種なので、治験コーディネーターとして長く働けば働くほど年収はアップしていきます。

一般企業の同年代OLと比較したら?

都市部で働く治験コーディネーターの初任給はだいたい月収で20~25万円です。女性(全職種)の平均月収は25.1万円ですから、一般企業のOLと比較しても大きな開きはなさそうです。

しかし、未経験から治験コーディネーターになった人の初任給は多くはないものの、経験を重ねるにつれて年収が上がるのが特徴です。1年で年収が20~30万円上がることもあります。

実務経験を積んだ人だけが受験できる「日本SMO協会 公認CRC」「日本臨床薬理学会 認定CRC」といった資格を取得すると、資格手当が支給される職場も少なくありません。治験コーディネーターとしてのキャリアを積んで年収アップを目指しましょう。

参考:
厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」
CRCばんく「治験コーディネーターCRCの給料・年収」

治験コーディネーターの求人募集状況

転職活動において、看護師は売り手市場。しかし、治験コーディネーターはどうなのでしょうか。

治験コーディネーターの求人数

治験コーディネーターの転職に特化した求人サイト「CRCばんく」では、未経験者と経験者合わせて271件のCRC求人情報を掲載。マイナビ看護師は184件です。

対して、同サイトに掲載されている看護師・准看護師の求人は3万9609件にものぼります。治験コーディネーターになるには、看護師としての転職先を見つけるよりも狭き門だといえそうです(いずれも2020年4月10日時点の掲載数)。

参考:
CRCばんく
マイナビ看護師

治験コーディネーターの雇用形態は?

治験コーディネーターの求人の多くが正社員での募集です。大手のCRC求人サイトに掲載されている未経験CRCの求人案件は526件。そのうち497件が正社員としての採用を条件にしています。

しかし、ここから院内CRCに条件を絞ると、一気に36件にまで選択肢を狭めることに。そもそも院内CRCの求人案件自体が64件しかなく、SMOで募集されている治験コーディネーターの数よりも少ないのが現状です。(※いずれも2020年4月14日時点)

看護師から治験コーディネーターへの転職を目指すなら、初めから高い条件を設定するのは得策ではないでしょう。

看護師出身CRCが働きやすい職場の見分け方は?

看護師の気持ちを理解してくれるのは、やはり看護師。元看護師の治験コーディネーターが多い職場は、これから目指す看護師にとって働きやすい職場だといえるでしょう。求人に応募する前に、看護師出身の治験コーディネーターがどの程度働いているか調べてみましょう。

求人サイトに、職場の特色として元看護師の割合が掲載されていることもあります。また、記載がなければ、キャリアアドバイザーに聞いてみるのもいいでしょう。

治験コーディネーターや看護師専門転職サイトのキャリアアドバイザーは、求人票には明記されていない情報を独自にもっているケースが多いので、一度問い合わせてみるといいでしょう。

まとめ

新薬開発の一端を担うことができる治験コーディネーター。目の前の患者だけではなく、多くの人々のために貢献できる仕事です。看護師として働いてきた経験や知識を活かしつつ、新薬をはじめとする新しく幅広い知識を得ることができるので、医療従事者としてさらなるスキルアップが目指せます。

仕事のやりがいだけでなく、夜勤がないことや土日祝日に休めるという勤務形態も看護師経験者にとって魅力的に映ることでしょう。