[ 記事作成日時 : 2013年7月19日 ]
[ 最終更新日 : 2020年6月21日 ]

介護施設で働く看護師の役割・仕事内容・給料・メリットは?

介護施設の看護師

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夜勤や残業をするのは難しい

看護師として仕事はしたい…

出産を機に仕事を辞めたのでブランクがある…

そういう方におすすめの職場が介護業界です。

日本の社会が急速に高齢化していく中で、介護施設で働く看護師の需要は高くなっています。

病院で働くよりは、ワークライフバランスも実現できますし、健康管理がメインの仕事内容なのでブランクがあっても復帰しやすいでしょう。

また、介護施設の入居者との関係は長期にわたるため、病院の入院患者よりもゆったりと向き合い、信頼関係を築きやすいというメリットもあります。気になる介護施設での働き方について、詳しく説明していきましょう。

      
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看護師求人が多い介護施設7つ

一口に介護施設といっても、たくさんの種類があります。一つ一つを説明していきましょう。

1.特別養護老人ホーム

要介護3以上(特例の要介護1・2)や重度認知症の高齢者が入居できる介護施設です。介護保険が適用になり、民間の有料老人ホームよりも安い費用で介護が受けられます。

原則として終身にわたって介護が受けられ、終の棲家(ついのすみか)としての色合いの強い施設といえます。医師は常駐しているとは限らず、看護師や介護士の設置基準は入所者3人に対して1人以上です。

通常は入所者100名に対し3~5名の看護師が在籍しています。看護師のおもな業務は、入居者の血圧測定などのバイタルチェックや問診を行い、一人ひとりの健康状態を把握することです。

特別養護老人ホームでは、入居者の変化に気づいたら医師と連携して対応します。入居者の通院の付き添いも看護師の役目です。夜勤についてはおもに介護士が担当しますが、万一、夜間に何かあった場合はオンコールで看護師が対応します。看取りを行うことがあるのも大きな特徴です。

年収は、日勤のみか夜勤も担当するかによって、かなり幅があります。看護師専門の転職サイトに掲載されている求人で調査したところ、日勤のみの場合は年収300万円弱~400万円弱、夜勤もある場合は年収400万円弱~500万円前後に集中しています。

それに経験年数や時間外手当などが加味されるため、夜勤のある特別養護老人ホームなら、一般的な看護師の平均年収450万円とほぼ同等となるでしょう。

参考:厚生労働省「介護老人福祉施設」

2.介護老人保健施設

要介護1以上の高齢者に対して、医師の管理のもと看護や介護を提供する施設です。在宅復帰を目的としているため、だいたい入所期間は3~6ヶ月程度となります。ただし、家族の都合などによって、それより長くなることもあります。こちらも特別養護老人ホームと同様に介護保険が使えます。

入居者100人につき1名以上の医師の日中の常駐が義務付けられており、看護師は入居者100名に対し10名以上が必要とされています。施設によっては看護師が24時間常駐しているところもあります。また、理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職も在籍しています。

介護老人保健施設での看護師のおもな業務は、入居者の日々の健康管理や投薬管理、経管栄養の管理や、入浴時の褥瘡(じょくそう)の処置などが挙げられます。また、リハビリ専門職と協力しながら、在宅復帰への指導も行います。介護老人保健施設は夜勤のある場合が多く、夜間の入所者の容体の急変は、看護師が中心となって対応します。

介護老人保健施設に勤務する看護師の年収は、転職サイトで調査したところ、約400万~450万円(夜勤あり)が多いようです。求人は、常勤でも夜勤のみや日勤のみが選べたり、パートなどの非常勤募集も多かったり、勤務形態は選べる幅が広いようです。

参考:厚生労働省「施設・居住系サービスについて」

3.介護医療院

要介護者に対し、「長期療養のための医療」と「介護」を提供する施設です。2017年度に廃止することが決定した「介護療養型医療施設」の代わりとして、2018年4月より創設されました。特別養護老人ホームや介護老人保健施設と同様に介護保険が使えます。

人員の配置基準は医師の常駐が1人以上で入所者6人に対し看護師は1名。リハビリ職員や薬剤師、栄養士、ケアマネジャーも在籍します。この施設では看護師は痰(たん)の吸引や褥瘡のケア、経管栄養、注射などによる薬の処方、点滴の他、看取りやターミナルケアなどといった医療的サービスを行います。もちろん、バイタルチェックなどの日常の健康管理、食事量の確認なども行います。

介護医療院の求人募集を調査したところ、年収の幅は広く、同じ夜勤ありの常勤看護師でも約300万~500万円と200万円もの差があることも。介護医療院はまだ新しい施設のため、求人数自体は多くなく、年収のバラつきも大きいのかもしれません。

参考:厚生労働省「介護療養病床・介護医療院のこれまでの経緯」

4.介護付き有料老人ホーム

排せつや入浴などの身体介護、食事や掃除、洗濯などの生活支援、レクリエーション、サークル活動などのサービスが受けられる施設です。施設によっても入居条件や受けられるサービス、費用はさまざまですが、費用については特別養護老人ホームに比べると割高傾向にあります。

看護師は30名未満の施設で最低1人、その後30名を超えてから50名ごとに1人以上が必要とされています。業務の内容は、特別養護老人ホームとだいたい似たような内容になります。

なお、看護師の年収に関しても施設によって違いますが、だいたい350万~450万円程度が相場です。ただし、首都圏の施設の中には夜勤がなくても年収500万円を超えるところもあるようです。

5.養護老人ホーム

要介護認定はされていないけれど、経済的に困窮していたり、身寄りがなかったりする65歳以上の高齢者を受け入れる場所です。食事や健康管理などのサービスはあるものの、介護サービスは受けられません。また、入居者が自立した生活が送れるように支援するための施設なので、長期的な利用もできません。

施設では毎日の食事の提供や健康面のチェック、自立に向けてのサポートが行われます。また、レクリエーションにも参加できます。もともとは介護や看護を目的とした施設ではなかったのですが、2005年の介護保険法が改正され、施設が契約する介護事業者により介護サービスが受けられるようになりました。その場合は介護保険の居宅サービスを利用します。

全国で、特別養護老人ホームが1万件近くある(厚生労働省「介護老人福祉施設」)のに対し、養護老人ホームは1000件未満と施設数が少ないため、看護師の求人も多くありません。転職サイトによっては、1件も求人を扱っていないことも。基本的に夜勤はないため、その年収は300万円強~400万円強が一般的です。常勤よりパート求人のケースが多く、時給2000円前後の募集が多いようです。

6. 軽費老人ホーム(ケアハウス)

経済的に困窮していたり、身寄りがなかったりする高齢者が、食事や洗濯などの介護サービスを受けられる施設です。自治体の助成を受けて有料老人ホームよりも比較的安い費用で利用できます。

ケアハウスには一般型と介護型の2種類あり、一般型は60歳以上の高齢者(もしくは夫婦どちらかが60歳以上)の、自立した暮らしが厳しい高齢者を対象にしています。そして介護型は、要介護度1以上の65歳以上の高齢者が対象です。ただし、この他にも利用できる基準が決められており、それは施設によってさまざまです。

介護型のケアハウスでは、重度の要介護状態になっても住み続けることができますが、一般型のケアハウスでは、入居者の介護が必要になったら訪問介護や通所介護などの在宅サービスを利用し、自立状態ではなくなると施設からの退去を求められることもあります。ただ、介護型であっても、褥瘡のケアや尿管カテーテル、痰吸引、胃ろうなどの医療ケアは行っていないところが多いようです。

軽費老人ホームの看護師の年収は、転職サイトの求人からリサーチすると、日勤のみの常勤で300万~450万円の間となるようです。収入の差は、准看護士か正看護師か、地方か都市部か、オンコール対応があるかないかなどによって生じるようです。

参考:厚生労働省「軽費老人ホームの設備及び運営に関する基準」

7.デイサービス

要介護認定を受けた人が自宅から通いながら、身体機能の維持や向上を目指して訓練をしたり、他の人と交流をして認知症を予防したりする場所です。利用者がデイサービスに通っている間に、自宅で介護をしている人がリフレッシュできるという、もう一つの側面もあります。

1日型、半日型があり、送迎車で送迎してもらいながら通うことになります。施設では看護師は血圧の測定や傷の処置を行います。デイサービスの施設に勤務する場合と、訪問介護ステーションから派遣されて働く場合があります。

デイサービスの看護師は、施設の開所時間のみの勤務なので、夜勤や残業はほとんど生じないため年収は一般的な看護師より低くなります。求人を調査すると、年収は200万円台後半~300万円半ばくらいになるようです。また、パートの求人も多く、時給1200円前後が相場となっています。

廃止になる介護療養型医療施設

比較的重度の要介護者に対し、充実した医療処置とリハビリを提供する、医療法人が運営する施設です。医師や看護師の配置も、他の介護施設より手厚く、比較的少ない費用負担で利用できるのが特徴です。

ただ、2017年に廃止が決定し、2018年からは介護医療院が介護療養型医療施設の代わりとして機能することになりました。現在もまだ介護療養型医療施設は存在していますが、2024年3月までには介護医療院に移行していきます。

介護療養型医療施設が医療施設という色合いが強かったのに対し、介護医療院では生活の場所を意識した場所になり、地域住民との交流なども行われています。看護師の働き方も、それに伴って変化が求められることでしょう。

介護施設での看護師の役割

介護施設で看護師はどのような役割を担うのでしょうか。代表的なものをいくつか説明します。

役割1:医療行為と投薬管理

血圧や体温、脈拍や呼吸などを機械で測定するバイタルチェックを行い、体の状態を常に観察する他、表情や行動などから精神的な観察も行います。また、施設利用者の薬の飲み忘れや飲みすぎを防ぐため、専用のカレンダーやスケジュール表に記録して、棚や引き出しなどで薬の管理を行います。

また、医師の指導のもとで、採血や痰の吸引、点滴、尿道カテーテル挿入や心電図検査、酸素投与などを行います。

さらに、定期的な検査や薬の処方のために利用者が通院するのにも付き添います。医師に利用者の症状を伝えたり、医師からの情報を施設内のスタッフと共有したりします。

役割2:快適に過ごすためのケア

入所者が健康的に、快適に過ごせるためのケアも行います。例えば、体温調節や睡眠のケア、移動や姿勢保持の際のケア、スキンケア、飲食や排せつのケア、体を清潔に保つためのケアなどが挙げられます。

役割3:緊急時の対応

バイタルサインや食欲、歩行状態などを観察して、いつもと違う点にすばやく気づいたら、医師に連絡をします。そして医師の指示に従って応急処置を行います。

役割4:看取りケア

特別養護老人ホームなど、終の棲家としての意味合いもある介護施設では、看取りのケアも必要となります。施設の方針を理解して、入居者や家族に対してもその方針を理解して納得してもらえるように説明します。過剰な医療を避け、自然で安らかな死を迎えられるようにケアを行います。

トラブルになりがちな介護士との役割分担

介護施設では介護士と看護師が一緒に働きます。それぞれの専門性を活かして分業できればよいのですが、実際には人手不足などの原因で、看護師が介護士の手伝いをすることも多いでしょう。

逆に、介護士が看護師の医療行為に注文をつけたり、看護師の指示に従わなかったりするというトラブルも発生しがちです。例えば、看護師が行う処置や患者の流動食の時間に、介護士が口を出すなどが挙げられます。

看護師は医療行為ができるという強みがあり、それに伴って収入も介護士より高いため、中には「自分は介護士よりも上なのだ」という意識をもってしまう人がいます。しかし、その意識は介護士から反発を招きやすいものです。

また、看護師は介護施設で働く前に医療機関で働いていたことが多く、どうしても「命を守る」という緊張感をもちながら入居者と関わりがちです。しかし、介護施設はあくまで生活の場であり、医療機関ほどの緊張感は必要ありません。この意識の違いも介護士と対立しやすくなる原因の一つです。

人間関係のトラブルを避けるためには、看護師と介護士がお互いのもっている専門知識をそれぞれ尊重し合って接することが大切です。

介護施設で看護師が働くメリット・デメリット

医療機関で働くのと比べて、介護施設で看護師が働くメリットとデメリットはいったい何なのでしょうか。

メリット

介護施設は病院と比べれば定時で帰りやすいですし、夜勤のない施設も多いです。ですから、決まった時間に保育園へお迎えに行かなければいけない育児中の人でも働きやすい職場といえます。

また、病院ほど知識のアップデートを迫られないので、ブランクがあっても再就職しやすいでしょう。体力の必要な業務は介護士が担当する場合が多いので、病院での勤務よりも体力を必要としないというメリットもあります。

介護施設のメインスタッフは介護士であり、看護師は医療の専門家として頼られる側面が増えるため、自然と判断力や決断力も向上します。また、病院と違って入居者との関係が長年にわたることも多いため、入居者とじっくりと向き合い、密接な関係を築けるというのも魅力です。

今後高齢者の数はますます増えていくので、介護施設での看護師の需要も増加していきます。もしまた転職することになっても、介護士と協力しながらのサポートや患者の生活全般に寄り添う医療行為の経験は、介護施設で働いたからこそ得られるもので、次の職場でも重宝されるに違いありません。

デメリット

ワークライフバランスが充実する代わりに、病院勤務と比べればどうしても収入は下がることは覚悟しておいた方がよいでしょう。

また、介護施設はあくまで生活の場であり、病院に比べれば緊急の対応が少ないです。病院ほど緊張感にさらされないうえ、知識のアップデートも少ない仕事内容なので、自分の医療スキルが下がってしまうと感じる人も多いです。

一方で、看護師の数が少ないため一人で決断することが多く、責任の重さをつらく感じる人もいることでしょう。先ほども説明した、介護士との人間関係に悩む人も多いようです。

まとめ

介護施設では、病院と比べると勤務時間が規則的で育児との両立をしやすいですし、求められる医療スキルもさほど高くはないので、ブランクがあっても就職しやすいというメリットがあります。

その一方で、職場の看護師の数は少なく、常に判断を求められるため、その責任は重いといえるでしょう。また、病院に比べるとどうしても給料が下がってしまうというデメリットもあります。

ただ、介護施設にはさまざまな種類があり、そこで求められる働き方や仕事内容は若干違ってきます。もし、どの介護施設で働けばよいのか迷ったら、転職エージェントに相談してみるのも一つの方法です。

※ランキング評価の詳細は看護師転職サイトおすすめランキングの記事で紹介しています。

※ページ内の求人数は職種別に集計しています。