[ 記事作成日時 : 2015年2月17日 ]
[ 最終更新日 : 2020年6月21日 ]

「緩和ケア看護師を辞めたい…」つらい原因、今後のキャリア、役立つ資格

緩和ケアを辞めたい看護師

「患者や家族の苦痛を和らげたい」

そんな決意をして就いた仕事を、辞めてしまいたいと考える緩和ケアの看護師も多いようです。

緩和ケア看護師の離職率は他科と比較してもかなり高いと言われますが、現場で働く看護師が抱える悩みとはどのようなものなのでしょうか。

ここでは緩和ケアの看護師が辞めたくなる理由を探りながら、その後のキャリアについて解説していきます。

緩和ケア看護師が辞めたくなる理由とは

緩和ケア看護師の悩み

緩和ケアは、早期から痛みや苦しみを軽減し、できうるかぎり快適な生活を提供することを目的としています。

しかし、緩和ケアや終末期医療に携わる看護師は、疾患からの回復が見込める一般病棟の看護師よりもネガティブな感情やストレスを感じることが多いといわれています。ある研究によると、緩和ケア認定看護師のうち、51%にバーンアウト(燃え尽き症候群)の兆候が見られたそうです(日本緩和医療学会 2010年「緩和ケア認定看護師の職務満足度およびバーンアウトの実態と関連要因」)。

また、一般病棟の看護師よりも、苦痛の緩和などを通して患者を看取る場面が多い緩和ケア看護師の方が、無力感や看護の限界を感じることが多く、仕事に対する達成感が低い傾向にあるともいわれています(共立女子大学看護学雑誌 2016年「終末期ケアに携わる看護師のストレスに起因したポジティブな変化がバーンアウトに及ぼす影響」)。

緩和ケアの看護師が抱える悩みとは、おもにどのようなものがあるのでしょうか。

  • 感情のコントロールが難しい
  • もっていたイメージとのギャップ
  • 患者や家族からの暴言
  • 体力への不安
  • スキル不足・人間力不足への不安

感情のコントロールが難しい

緩和ケア病棟の看護師は、患者の苦しみや痛みを和らげ、生活の質(Quality of Life。以下、QOL)をなるべく高い状態で長く送れるようにするのが、おもな業務です。

患者やその家族とより近く深いコミュニケーションが必要なため、ときには寄り添い共感するあまり、自分自身の感情のコントロールがうまくできない場合があります。患者の死と向き合う場面が多いため、達成感や無力感、喪失感に苦しむことも多いようです(がん看護 24巻4号 2019年「『辞めたい』を踏みとどまらせる~病棟定着と離職防止~」)。

緩和ケアという場のイメージとのギャップ

死に向かう患者に対して「何かしてあげたい」という純粋な気持ちを抱いて、温かく穏やかな現場を想像して就職する看護師は少なくありません。

しかし、実際には死への恐怖から自暴自棄になったり、痛みやつらさのあまり看護師に感情をぶつけ、暴言をはいたりする患者もいます。また、患者の家族の中には看病疲れから、看護師に対していわれなき反感をあらわにする人も少なからずいるようです。

ゆったりとした雰囲気は患者の病室のみで、実際の看護業務は一般病棟の看護師と同様に忙しいようです。

人数不足による体力的負担

患者のケアの合間には、計画書や報告書の作成や家族との面談をこなさなければならず、さらにエンゼルケア(死後処置)などにも一般病棟より携わることが多いことから、人手が足りず残業になることもしばしばです。

緩和ケアは比較的新しい看護分野であり、需要は増加の一途をたどっているにもかかわらず、看護師の人数は他科にもまして不足しています。

緩和ケアの場合、ICUなどと同じく夜勤時間に「月平均72時間以下ルール」といった制限がありません(厚生労働省「入院基本料の算定要件について」)。慢性的な人手不足と相まって、夜勤が必要な病院では1人の看護師にかかる負担が大きくなっている傾向が見られます。

スキル不足からくる不安

緩和ケアの現場に入って、初めて自分の無力さに気づいたという声も聞かれます。「死ぬのが怖い」という患者に対し、何といって励ませばよいのか悩む看護師は少なくありません。

緩和ケアでは病気の治癒に貢献できる治療は行われません。疼痛(せんつう)を和らげる鎮痛剤や麻酔薬など、その場での症状を抑える処置に限られます。新しい医療知識や技術を身につけたいと希望する看護師にとっては、物足りなさを感じることもあります。緩和ケアの在り方自体が、将来に向けたスキルアップができないのではないかという、不安につながっている可能性もあります。

緩和ケアを辞めた看護師の事例

祖父の経験に憧れたものの離職(23歳 元緩和ケア看護師)

3年前に祖父が緩和ケア病棟で献身的な看護を受けたことから、そんな看護師になりたいと憧れをもって緩和ケア病棟を希望しました。

しかし、理想と現実の違いにショックを受け、立ち直れず、最近一般病棟に転職しました。緩和ケア病棟では患者さんからの暴言がひどく、そんな患者さんとは向き合うこともできず、献身的な看護とはほど遠いものでした。

未熟な自分は患者さんの前で感情を顔に出してしまい、師長から怒られてばかりいました。祖父のときのような看護師になりたいと憧れていましたが、自分には無理だったようです。経験を積み、いつかもう一度緩和ケアにチャレンジしたいと考えています。

スキルに自信がなくなり転職(25歳 元緩和ケア看護師)

緩和ケア病棟に希望して入りました。一般病棟で終末期のがん患者を担当し、自分で決めたのですが、精神的な落ち込みが激しく、離職することになりました。

末期の患者さんとそのご家族のつらい気持ちを思うと、自分はしっかりと寄り添えているのかという疑問だらけでした。

モニターを付けていない患者さんが多く、自分がちゃんと観察できているか不安になり、精神安定剤を飲まないと動悸(どうき)がしてきて働けなくなりました。私がいない間に患者さんが亡くなっていたらと考えるだけで怖くてたまらず、恐怖や自信のなさから、患者さんや先輩看護師ともうまくコミュニケーションが取れませんでした。

勉強したことを活かすことができず、自信のなさから緩和ケアで働くのを諦めました。

緩和ケア看護師「辞める前に身につけたい」経験・スキル

ストレスの大きい現場である一方で、緩和ケアを経験しているからこそ身につけられるスキルがあります。それは、患者の終末期に向き合い、死と深く関わる緩和ケアという特殊な状況下だからこそ得られるスキルです。おもに、以下の5つが挙げられるでしょう。

緩和ケアで身につくスキル1.チーム医療

緩和ケアでは患者一人ひとりが望む形での最期を実現するために、看護師や医師、薬剤師や作業療法士、心理カウンセラー、さらにキリスト教系の施設の場合は牧師などが、チームとなってサポートしていきます。

患者を中心としたチーム医療に参加し、他職種との連携を意識しながら職務にあたることは、他の看護分野に向かう際にも大きな経験値となります。

緩和ケアで身につくスキル2.レポートや報告書の作成

緩和ケアで看護師を悩ませる仕事の一つが計画書やレポートの作成です。 しかし、これらは日々の業務を簡潔にまとめたり、要点を絞って伝える文章を書く力を鍛えるトレーニングとなります。

緩和ケアで身につくスキル3.患者に寄り添う看護ケア

緩和ケアで一番大切なのは、治癒のための看護ではなく、痛みの緩和であったり、患者がより良く不自由のない生活を送るためのケアであったりします。そのため、緩和ケア看護師にはケアマネジャーの資格を取る人も多く、そのスキルを看護現場で活かしています。

緩和ケアで身につくスキル4.わずかな変化に気づく観察力

死が間近に迫った患者を見守る緩和ケアでは、ほんのわずかな変化にも敏感に対処する力がつきます。こうした観察力や洞察力は、看護師の資質の基本的な要素です。

緩和ケアで身につくスキル5.感情のコントロール力

患者を看取るなど悲しい場面を幾多も経験しながら、業務をこなしていくうちに、看護師としての本分を見失わない感情のコントロール力、精神的な強さが備わっていきます。

緩和ケア看護師が取得できる資格・役立つ資格

日本看護協会が認定している認定看護師・専門看護師といった資格(日本看護協会「専門看護師・認定看護師・認定看護管理者」)や、各都道府県が管轄するケアマネジャー(介護支援専門員)(厚生労働省「介護支援専門員(ケアマネジャー)」)といった資格など、緩和ケア看護師をしながら取得できる資格、役立つ資格をまとめてご紹介しましょう。

緩和ケア認定看護師

日本看護協会が認定する資格で、患者の激しい痛み、呼吸困難や浮腫、そして倦怠感など身体的・精神的な苦痛症状を緩和するなど、患者のQOLを向上させるための専門的なケア・医療が提供できる看護師に与えられます(日本看護協会「認定看護師」)。患者自身はもちろん、その家族の喪失感や悲しみなどの精神的なケアも含まれています。

緩和ケア認定看護師の資格取得要件は次のとおりです。

  • 看護師としての実務研修が通算5年以上
  • うち3年以上を緩和ケア分野で実務研修があること
  • 認定看護師専門の教育機関で一定期間、一定時間以上の教育を受けること
  • 日本看護協会の審査に合格すること

5年ごとに看護実践と自己研さんの実績がわかる書類を提出し、資格の更新をする必要があります。

がん性疼痛看護認定看護師

同じく日本看護協会が認定する資格が、「がん性疼痛看護認定看護師」です。がんによる痛みを総合的に判断し個別ケアを実践する目的でつくられた資格です。痛みをコントロールするための薬剤についての知識の習得も内容に含まれます。

がん性疼痛看護認定看護師資格の取得要件は以下のとおりです。

  • 看護師としての実務研修が通算5年以上
  • うち3年以上をがん性疼痛看護の実務研修があること
  • 認定看護師専門の教育機関で一定期間、一定時間以上の教育を受けること
  • 日本看護協会の審査に合格すること

がん患者と接したことがある看護師が対象となるため、緩和ケア病棟以外の経験も取得条件に適応します。

訪問看護認定看護師

在宅療養者の意思を尊重したセルフケア支援、ケースマネジメントと看護の提供を行うのが「訪問看護認定看護師」です。一般的な認定看護師資格の取得要件に加え、3年以上の訪問看護師としての実務研修が条件となります。

在宅看護専門看護師

在宅で療養する患者と家族が質の高い生活を送ることを支援し、よりよいケアシステムを構築するのが「在宅看護専門看護師」です(日本看護協会「専門看護師」)。

2012年12月から認定が開始された、専門看護師の中でも比較的新しい資格で、在宅看護専門看護師資格の取得要件は以下のとおりです。

  • 看護師としての実務研修が5年以上あり、そのうち3年以上が在宅看護の分野であること
  • 看護系の大学院の修士課程を修了し、日本看護系大学協議会が定める専門看護師教育課程基準の所定単位(総計26単位または38単位)を取得していること
  • 日本看護協会の審査に合格すること

ケアマネジャー(介護支援専門員)

緩和ケア看護師や訪問看護師が積極的に取得している資格がケアマネージャー(介護支援専門員)。保健や医療、福祉の分野での実務経験、具体的には医師・看護師・社会福祉士・介護福祉士などで働いた経験が5年以上あり、介護支援専門員実務研修受講試験に合格、実務研修の過程を終了すると資格を取得できます。

ケアマネージャーは、患者に合ったケアプランを作成し、施設の職員や看護師、介護職員との間を取り持つマネジャー的存在です。そのため、ケアマネジャーの資格をもっている看護師は、患者やその家族から絶大な信頼を得ることができます。

将来的に訪問看護などに携わりたいと考えている看護師にとって、取っておきたい資格といえるでしょう。

2020年度より変わる認定看護師教育の「受講期間」と「時間数」

従来の認定看護師教育では、特定行為研修を組み込んでいない認定看護師教育機関で6ヶ月以上1年以内、600時間以上の教育カリキュラムを受講することが認定審査を受けられる条件でした。しかし、現行の教育は「A課程」とされ2026年度をもって終了することが決まり、それに代わって、特定行為研修を組み込んでいる認定看護師教育機関で1年以内、800時間程度の受講や、特定行為区分別科目の実習時間が設けられる「B課程」が新たに2020年度からスタートしました(日本看護協会「認定看護師」)。

緩和ケア看護師「辞めるか、変えるか」の選択

緩和ケア看護師自体を辞めるか、職場を変えるかの選択

緩和ケア看護師を辞めたいという理由が、緩和ケアの現場そのものに対する自分自身の悩みや問題であれば、まったく異なるキャリアに進むことを考えた方がいいかもしれません。

しかし、緩和ケアの業務については適性があり、労働環境などが問題となっているのならば、職場を変えて経験を活かす道もあります。緩和ケアに役立つ資格を取得し、看護師としてワンランクアップを目指すことで、スキルに関する不安も解消できるかもしれません。

緩和ケアは、看護師歴の浅い若い世代ほど、耐え切れないほどの悲しみや痛みを伴う職場といえます。 感受性が強すぎて、患者や家族のつらさや悲しみを自分のことのように感じ、感情がコントロールできなくなることもあるでしょう。緩和ケアに心が残っていても、現場から一度離れ、多くの経験を積んだ後に戻るという方法もあります。

緩和ケアという分野をもう一度冷静に見つめ直し、自分の年齢やキャリア、精神的な負担を考慮したうえで、結論を出していくことが大切です。

緩和ケア看護師からの転職を成功させるために

緩和ケアから他の分野へ転職をする際には、緩和ケア経験との親和性についてよく検討する必要があります。急性期病院など、看護の方向性が違う医療現場を選ぶのであれば、一から学ぶ姿勢で臨む必要があるかもしれません。中途採用の看護師に対して教育制度が不十分な施設では、それまで培った医療処置などのスキルが通用しない可能性があります。

緩和ケアとより親和性の高い施設としては、療養型病院介護系の施設があります。一般病院よりも医療行為が少なく、一方で患者の回復を目にする機会も得られます。

自分自身のことがよくわからない、施設の情報の収集の仕方がわからないといった場合には、転職サイトを活用すると心強いサポートが受けられます。緩和ケアとの違いを整理し、希望に合った転職先を紹介してくれるでしょう。経験豊かなキャリアアドバイザーが、これまでのあなたの経験がどのように活かせるかを考え、強い味方となってくれるでしょう。