緩和ケア看護師を辞めたいときに考えておきたいキャリアのこと

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「ひとりの人間の終末期に立ち会い、可能な限りのケアをしたい」そんな決意をして就いた仕事を、辞めてしまいたいと考える緩和ケアの看護師も多いようです。

緩和ケア看護師の離職率は他科と比較してもかなり高いと言われますが、現場で働く看護師が抱える悩みとはどのようなものなのでしょうか。

ここでは緩和ケアの看護師が辞めたくなる理由を探りながら、その後のキャリアについて解説していきます。

緩和ケア看護師が辞めたくなる理由とは

緩和ケア看護師の悩み

緩和ケアは患者の人生の最期に深く関わり、痛みや苦しみを軽減しながら、でき得る限り快適な生活を提供することを目的としています。

そこで働く緩和ケアの看護師が抱える悩みとは、どのようなものがあるのでしょうか。

  • 持っていたイメージとのギャップ
  • 患者や家族からの暴言
  • 体力への不安
  • スキル不足・人間力不足
  • 看護師スキルへの不安

緩和ケアという場のイメージのギャップ

死に向かう患者に対して「何かしてあげたい」という純粋な気持ちをもち、温かく穏やかな現場を想像して就職する看護師は少なくありません。

しかし、実際には死への恐怖から自暴自棄になったり、痛みや辛さのあまり看護師に感情をぶつけ、暴言を吐いたりする患者もいます。

また、患者の家族の中には看病に疲れ果て、うつ病を発症して、看護師に対していわれなき反感をあらわにするという人も少なからずいるようです。

ゆったりとした雰囲気は患者の病室のみで、実際の看護師業務は一般的な看護師と変わりません。

人数不足による体力的負担

患者のケアの合間には、計画書や報告書の作成や家族との面談をこなさなければならず、多くの作業に時間を奪われて残業になることもしばしばです。

緩和ケアは比較的新しい看護分野であり、需要は増加の一途をたどっているにも関わらず、看護師の人数は他科にもまして不足しています。

緩和ケアの場合、ICUなどと同じく夜勤回数に制限がありません

慢性的な人手不足と相まって、夜勤が必要な病院ではひとりの看護師にかかる負担が大きくなっている傾向が見られます。

スキル不足からくる不安

緩和ケアの現場に入って初めて、自分の無力さに気付いたという声も聞かれます。「死ぬのが怖い」という患者に対し、何といって励ませば良いのか悩む看護師は少なくありません。

緩和ケアでは病気の治癒に貢献できる治療は行われません。疼痛を鎮める鎮痛剤や麻酔薬など、その場での症状を抑える処置に限られます。

新しい医療知識や技術を身につけたいと希望する看護師にとっては、物足りなさを感じることもあります。

緩和ケアの在り方自体が、将来に向けたスキルアップができないのではないかという、不安につながっている可能性もあります。

緩和ケア看護師は心理的なストレスにさらされ続ける

緩和ケアの看護師には、常に患者の最期を迎える場面に立ち会う覚悟が求められます。

親しく世話をしてきた患者の死と、それを取り巻き、悲嘆にくれる家族の様子は、看護師自身の心をも傷つけます。

担当の患者がなくなると、「何か死に直結することに気付くタイミングを逃したのではないか」という後悔に苛まれます。

人の死は決して看護師ひとりが食い止められるものではありませんが、それでもそうした思いにとらわれずにはいられないようです。

暴言をはかれたり、扱いが厄介な患者であったりすると、ふと「いなくなれば良いのに」と考えてしまい、自己嫌悪に陥るというケースも少なくありません。

緩和ケアは精神的なストレスにさらされ続ける仕事です。死生観が確立されておらず、スキルに自信がもてない看護師は、後悔と落ち込みをくり返すことになります。

緩和ケアを辞めた看護師の事例

祖父の経験に憧れたものの離職

23歳の看護師です。3年前に祖父を緩和ケア病棟で献身的な看護を受けたことから、そんな看護師になりたいとあこがれを持って緩和ケア病棟を希望しました。

しかし、理想と現実の違いにショックを受け立ち直れず、最近一般病棟に転職しました。

緩和ケア病棟で、患者さんからの暴言がひどく、そんな患者さんとは向き合うこともできず、献身的な看護とは程遠いものでした。

未熟な自分は患者さんの前で感情を顔に出してしまい、師長から怒られてばかりいました。祖父のときのような看護師になりたいと憧れていましたが、自分には無理だったようです。

経験を積み、いつかもう一度緩和ケアにチャレンジしたいと考えています。

スキルに自信がなくなり転職

25歳のとき、緩和ケア病棟に希望して入りました。一般病棟で終末期のがん患者を担当し、自分で決めたのですが、精神的な落ち込みが激しく、離職することになりました。

末期の患者さんとそのご家族の辛い気持ちを思うと、自分はしっかりと寄り添えているのかという疑問だらけでした。

モニターを付けていない患者さんが多く、自分がちゃんと観察できているか不安になり、精神安定剤を飲まないと動悸がしてきて働けなくなりました。

私がいない間に患者さんが亡くなっていたらと考えるだけで怖くてたまらず、恐怖や自信のなさから、患者さんや先輩看護師ともうまくコミュニケーションが取れませんでした。

勉強したことを活かすことができず、自信のなさから緩和ケアで働くのをあきらめました。

緩和ケア看護師の経験で身つくスキル

  • チーム医療への参加
  • レポートや報告書を提出
  • 患者の側に立った看護ケア
  • わずかな変化を見出す観察力
  • 精神的のコントロール力

人の死に至る過程に深く関わる緩和ケアでは、特殊な状況下で身につくスキルがあります。

緩和ケアでは患者一人一人が望む形での最期を実現するために、看護師や医師、薬剤師や作業療法士、心理カウンセラー、さらにキリスト教系の施設の場合は牧師などが、チームとなってサポートして行きます。

チーム医療に参加し、協調性をもって職務にあたることは、ほかの看護分野に向かう際にも大きな経験値となります。

緩和ケアで看護師を悩ませる仕事のひとつが計画書やレポートの作成ですが、日々の業務が簡潔に文章をまとめる力や要点を絞って伝わる文章を書く力を鍛えるトレーニングとなります。

死が間近に迫った患者をも見守る緩和ケアでは、ほんのわずかな変化にも敏感に対処する力が付きます。こうした観察力や洞察力は、看護師の資質の基本的な要素です。

悲しい場面を幾多も経験しながら、業務をこなしていくうちに、看護師としての本分を見失わない精神のコントロール力も備わっていきます。

緩和ケア看護師をしながら取得できる資格

緩和ケア認定看護師

日本看護協会が認定する資格で、患者の激しい痛み、呼吸困難や浮腫、そして倦怠感などの苦痛症状を緩和する専門的な看護を提供できると認められた看護師に与えられます。

患者と患者の家族の喪失感や悲しみ等の精神的なケアも含まれています。

緩和ケア認定看護師の資格取得要件は次の通りです。

  • 看護師としての実務経験が5年以上
  • うち3年以上を緩和ケア関連の施設で働いた経験があること
  • 認定看護師専門の教育機関で6か月以上かつ615時間以上教育を受けること
  • 日本看護協会の審査に合格すること

5年ごとに自己研さんの実績が分かる書類を提出し、資格の更新をする必要があります。

がん性疼痛看護認定看護師

同じく日本看護協会が認定する資格が、「がん性疼痛看護認定看護師」です。がんによる痛みを総合的に判断し個別ケアを実践する目的で作られた資格です。

痛みをコントロールするための薬剤についての知識も内容に含まれます。

がん性疼痛看護認定看護師資格の取得要件は以下の通りです。

  • 看護師経験5年以上
  • うち3年以上がん患者の看護経験があること
  • 認定看護師専門の教育機関で6か月以上かつ615時間以上教育を受けること
  • 日本看護協会の審査に合格すること

がん患者と接したことがある看護師が対象となるため、緩和ケア病棟以外の経験も取得条件に適応します。

訪問看護認定看護師

在宅療養者の意思を尊重したセルフケア支援、ケースマネージメントと看護の提供を行うのが「訪問看護認定看護師」です。

3年以上の訪問看護師としての経験が条件となります。専門の教育機関で規定時間数の教育を受け、審査に合格することで資格を得ます。

在宅看護専門看護師

在宅で療養する患者と家族が質の高い生活を送ることを支援し、よりよいケアシステムを構築するのが「在宅看護専門看護師」です。

2012年12月から認定が開始された、専門看護師の中でも最も新しい資格です。

看護系の大学院の修士課程を修了し、看護師としての実務経験が5年以上あり、そのうち3年以上を在宅看護の分野で過ごしていることが資格審査の条件となります。

条件を満たした看護師が、書類と筆記による認定審査に合格すると「在宅看護専門看護師」としての資格が授与されます。

緩和ケア看護師のキャリアへの考え方

緩和ケア自体を辞めるか職場を変えるかの選択

緩和ケアを辞めたいという理由が、緩和ケアの現場そのものに対する自分の問題であれば、まったく異なるキャリアに進むしかありません。

しかし緩和ケアの業務については適性があり、労働環境などが問題となっているのならば、職場を変えて経験を活かす道もあります。

緩和ケアに関連する資格を取得し、看護師としてワンランクアップを目指すことで、スキルに関する不安を解消できるかもしれません。

緩和ケアは若い世代ほど、耐え切れないほどの痛みを伴う職場といえます。感受性の強さが災いし、患者や家族の辛さや悲しみから直接影響を受けてしまいます。

緩和ケアに心が残っていても、現場から一度離れ、多くの経験を積んだ後に戻るという方法もあります。

緩和ケアという分野をもう一度冷静に見つめ直し、自分の年齢やキャリア、精神性を考慮した上で、結論を出していくことが大切です。

緩和ケア看護師からの転職を成功させるために

緩和ケアからほかの分野へ転職をする際には、緩和ケア経験との親和性について良く検討する必要があります。

急性期病院など、まったく違う方向性の医療現場を選ぼうとするのであれば、徹底した状況の把握を行わなければなりません。

何の教育制度もない施設では、医療処置などのスキルが通用しない可能性があります。

緩和ケアとより親和性の高い施設には、療養型病院介護系の施設があります。一般病院よりも医療行為は少なく、一方で患者の回復を目にする機会も得られます。

自身のことが良くわからない、施設の情報の収集の仕方がわからないといった場合には、転職サイトを活用すると心強いサポートが受けられます。

緩和ケアとの違いを整理し、希望に合わせた転職先を紹介してくれるでしょう。経験豊かなアドバイザーが、これまでの経験がどのように活かせるかを示し、自信を与えてくれます。

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