[ 記事作成日時 : 2015年6月17日 ]
[ 最終更新日 : 2020年6月21日 ]

緩和ケアで働く看護師の役割・仕事内容や給与とメリット・デメリットも解説

緩和ケアで働く看護師

病棟勤務である程度経験を積み、さらにステップアップを目指すときに、緩和ケアのキャリアを積んでいきたいと考える看護師は多いでしょう。

しかし、緩和ケア看護師になりたいと思いながら、実はホスピスケアやターミナルケアとの違いが良くわかっていない方は少なくありません。また、同じ緩和ケア看護師であっても、病棟と訪問看護では求められる役割やスキルも変わってきます。

そのため、緩和ケア看護師として転職をする際には、どこを職場としたいのか良く考える必要があります。ここでは、緩和ケア看護師になるために役立つ情報を、わかりやすく紹介していきます。

緩和ケアの定義と誤解

緩和ケアという言葉は何となく理解されていても、具体的な定義は意外と知られていません。最初に緩和ケアという言葉が意味するところ、類似している他のケアとの違いについて見ていきましょう。

緩和ケアの定義

世界保健機関(WHO)が2002年に定めた緩和ケアの定義(WHO「WHO Definition of Palliative Care」)は、以下のとおりです。

緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。

緩和ケアは

  • 痛みやその他のつらい症状を和らげる
  • 生命を肯定し、死にゆくことを自然な過程と捉える
  • 死を早めようとしたり遅らせようとしたりするものではない
  • 心理的およびスピリチュアルなケアを含む
  • 患者が最期までできる限り能動的に生きられるように支援する体制を提供する
  • 患者の病の間も死別後も、家族が対処していけるように支援する体制を提供する
  • 患者と家族のニーズに応えるためにチームアプローチを活用し、必要に応じて死別後のカウンセリングも行う
  • QOLを高める。さらに、病の経過にも良い影響を及ぼす可能性がある
  • 病の早い時期から化学療法や放射線療法などの生存期間の延長を意図して行われる治療と組み合わせて適応でき、 つらい合併症をよりよく理解し対処するための精査も含む

これによると、緩和ケアは一般的に考えられているように終末期に特化したものではなく、病気の段階や年齢に関わらず、痛みや不快な症状を和らげるためのケアとなります。

より早い段階で治療と並行して行われ、残念ながら患者が死へと向かう状態となったときでも、できうるかぎり患者とその家族への心身のサポートを継続していきます。

患者に対しては可能なかぎり苦痛を排除し、最期まで安らかでいられるようなケアを提供します。患者の死の前後にある家族の精神的なケアも、緩和ケアの対象です。

緩和ケアが治療に良い影響を与え、多くの場合は生存期間が長くなる傾向にあり、患者の回復につながる例もあります。

ホスピスケア、ターミナルケアとの違い

緩和ケアと混同されやすいのがホスピスケアやターミナルケア。これは、あまり区別せずに名称を使っている施設などがあるためですが、厳密には違いがあります。

緩和ケア

病気の種類:日本ではがんが対象の主流とされてきました。近年、定義の見直しとともに疾患を問わず緩和ケアの対象とされるようになりました。緩和ケアの目的は、痛みやその他の苦痛な症状を和らげることであって、特定の病気を示してはいません。

進行度:緩和ケアは苦痛を和らげるためのものなので、進行度には関連しません。必要と見なされれば、診断時から開始することもあります。

ケアを始めるタイミング:がん治療などと同時に開始

実施場所:病棟・外来・訪問診療で提供

ホスピスケア

病気の種類:ホスピスケアも緩和ケアと同様、日本国内ではがんを対象とするものが主となっていましたが、海外ではそれ以外の病気も適用対象とされています。

進行度:病状により治癒が望めないと判断された時期~終末期

ケアを始めるタイミング:特に決まっていません。手術や投薬治療よりも、苦痛の緩和、心身全体のケアが必要と判断された時期となります。

実施場所:ホスピスケアは本来、身体的・精神的・社会的全ての面を「全人的」にケアするという考え方です。つまり、病棟だけで行われるものとは限りません。海外では在宅ケアと捉えるケースも見られます。

ターミナルケア

病気の種類:高齢者を対象とすることが多く、全ての疾患が対象となります。

進行度:終末期

ケアを始めるタイミング:治癒が望めないと判断された時期~終末期

実施場所:看取りが可能となる場所(在宅、介護医療院、病棟など)。国の調べでは約6割が自宅での療養を望んでいます。

参考:

がん情報みやぎ「緩和ケアについて知ろう」

聖路加国際病院「診断時から始める緩和ケア ~治療期のケアに携わる専門看護師の立場から~」

日本ホスピス緩和ケア協会「ホスピス緩和ケア」

厚生労働省「【テーマ1】看取り 参考資料」

緩和ケア病棟の看護師

病棟での具体的な緩和ケアと、病棟看護師に求められる役割、勤務形態を紹介します。

緩和ケア病棟での看護師の役割

緩和ケア病棟では、患者とその家族が苦痛なく安心して療養生活を送れるように、看護師は常にコミュニケーションを図り、希望や意図をくみ取りながら緩和ケアを行います。

緩和ケアは医師を中心に、看護師、薬剤師、栄養管理士、ソーシャルワーカー、理学療法士、臨床心理士などの他職種がチームとなって支えます。看護師はその要として、協働するスタッフとの強い連携が必要です。

緩和ケア病棟で看護師が求められるスキルとしては、一般的に病棟看護師に求められる傾聴、共感力、観察力、向学心の他に以下のようなものが挙げられます。

  • 患者の価値観や生き方を理解した支援
  • 倫理的な感性と配慮
  • 自身の精神面のコントロール

医療用麻薬や睡眠導入剤の使用時には、時間を見ながら看護師自ら進んで患者の元を訪れ、体位の調整や酸素の状況を確認するなど、患者のわずかな変化を察知しようと努める必要があります。

一方で、緩和ケア病棟に配属された看護師は、それまでの経験では太刀打ちできない無力感に苛まれることもあります。

それを乗り越えるためには、疾患や症状に対する知識とスキルを蓄え、自分の心をコントロールしながら業務にあたっていかなければなりません。

参考:
日本看護科学会誌 36巻 2016年「一般病棟での臨床経験を有する看護師が緩和ケア病棟に配属されて2年未満に経験する心理的負担と対処」(稲垣久美子 他)

緩和ケア病棟での勤務形態

緩和ケア病棟は24時間体制であることが多いため、看護師はシフト制で業務にあたります。病院によって勤務体制は異なり、一般病棟と同じく2交代制・3交代制が組まれ、夜勤は2人体制となる病院もあります。

自分以外のもう1人の夜勤者が睡眠中は、ナースコールが鳴らないかハラハラするといった声も聞かれますし、患者の対応が重なって夜勤看護師2人ではどうにもならない場面も。しかし、当直の医師への連絡や相談するかどうかなど、悩んだり躊躇(ちゅうちょ)することもあるそうです。

夜勤はどうしても昼間と比べて看護師の配置が薄くなります。他の病棟にも増して苦しむ患者を前につらい経験をする看護師が少なくないようです。

緩和ケア外来の看護師

外来での具体的な緩和ケアと、外来看護師に求められる役割、勤務形態を紹介します。

緩和ケア外来での看護師の役割

2016年に厚生労働省が発表した「がん患者のおかれている状況と就労支援の現状について」では、「悪性新生物の治療のため、仕事を持ちながら通院している人」は約32.5万人いるとされています。

外来の緩和ケアでは治療を担当している医師と連携しながら、病気の治療を継続すると同時に、つらい症状や精神的な苦しみの緩和に対応していきます。病棟と同様に、看護師は患者や家族からの相談を受けたり生活指導を行ったりする役割があります。

接する時間が短い分、通院患者の方が入院患者よりコミュニケーションが難しい場合があります。看護師の言葉が患者や家族に高圧的ととられるケースも。病気がありながら自宅で生活し、通院をする患者の気持ちに寄り添い、体と心の痛みを和らげる方向に導いていく意識が外来看護師には求められます。

また、患者の症状や変化に応じて、入院や在宅療養へと切り替える場合は多くあります。病棟や訪問看護との連携を取りながら、患者にとって最適な緩和ケアが実施され続けるよう受け渡しを図るのも、外来看護師の大切な役割といえるでしょう。

短時間で患者や家族と意思の疎通を図り、他の医療スタッフとの円滑な意思の疎通が求められる緩和ケア外来の看護師には、特に高いコミュニケーションスキルが求められます。

緩和ケア外来での看護師の勤務形態

病院にもよりますが、緩和ケア外来は完全予約とされていることが多く、また診療の曜日が固定されている場合もあります。そのため、基本的に看護師の勤務は日勤のみです。他の診療科や病棟との掛け持ちである場合を除き、定時出勤で残業も少なめであると考えられます。

訪問看護での緩和ケア

訪問看護での具体的な緩和ケアと、訪問看護師に求められる役割、勤務形態を紹介します。

緩和ケアにおける訪問看護師の役割

在宅療養する患者に緩和ケアを行う訪問看護師には、基本的な技術や知識はもちろんですが、人間力の有無が大きなポイントとなります。

患者の家庭内に立ち入り、長期にわたってケアを行うことが多いため、患者と家族との信頼関係が重要です。在宅療養では同居家族の負担が大きいので、家族のつらさを理解できる、心強い存在として精神的なサポートが必要でしょう。

また、医療設備の整った病院ではない環境の中で、医師が同行しないケースでは看護師の主体的な判断が求められます。ときには、病院への搬送を判断する必要も出てくるでしょう。

その場合、医師への提案や患者や家族の同意といった手順をふみ進めることとなります。

病棟や外来とは違い、一般的な医療行為の他、マッサージや温浴といった必要と思われる措置も、患者の様子を観察しながら訪問時間内に実施していきます。

訪問看護師の勤務形態

訪問看護ステーションの多くは、日勤をメインとしています。1日の訪問数は、常勤フルタイムで4~5件程度が平均で、都市部など担当件数が多い場合は6~7件ということも。

朝は8時30分から9時頃の始業で、18時頃に終業という事業所が多く見られます。ただ事業所によっては、早朝や夜間の訪問看護を実施している場合もあります。また24時間365日対応している事業所も多く、その場合にはオンコール体制がしかれています。

週休2日の定休であっても、オンコール対応や緊急出動が求められる可能性があるため、転職する際は確認が必要です。

常勤以外に、非常勤やパート勤務で働く訪問看護師も少なくありません。

参考:
在宅医療支援機構「よくある質問15選」

緩和ケアでのチーム医療

緩和ケアの一つの形として、病院内での緩和ケアチームがあります。緩和ケアが必要とされる場において、病棟や職種、職場の垣根を越えて横断的に活動するチームです。

緩和ケアチームには、医師、看護師の他、管理栄養士、救急救命士、作業療法士、歯科医師・歯科衛生士、薬剤師、理学療法士、臨床心理士など多彩な専門分野のプロたちが参加します。

心身の状態を良好に保ち、治療中の患者ができるだけ安楽に過ごせるようにするために、各分野の専門家が手を携えてバックアップをしていきます。

また、入院して病気治療を行っていた患者が在宅療養を希望したときには、訪問看護師やケアマネジャー、介護士など外部スタッフへの引き継ぎも必要となります。家族が生活の不安を訴えるときにはソーシャルワーカーも介入し、逆に自宅や施設にいた人が病院での緩和ケアを求める場合も、同様に情報共有が求められます。

緩和ケア看護師になるには?

緩和ケア看護師になるためには、どのようなキャリアや経験が必要とされるのでしょうか。

緩和ケア看護師に必要な経験

調査数は少ないものの、緩和ケア看護師を対象とした調査で以下のものがあります。

これによると緩和ケア病棟に勤務して2年未満の看護師についての様子が多少なりとも知ることができます。

この調査では、一般病棟の経験年数がもっとも少ない看護師でも3年以上です。臨床経験年数は平均すると、10年以上の看護師が多く見られるようです。

年齢は20代から50代までと幅広く、緩和ケア看護師を目指すのは何歳からでも可能性がありそうです。

前職の診療科は、外科、内科、婦人科、消化器、呼吸器、整形外科など多彩です。臨床での経験がある程度必要で、緩和ケアが必要な患者と冷静に接することができる精神の安定さが条件となりそうです。

緩和ケア看護師の年収は?

緩和ケア看護師の年収は、エリアにもよりますが求人サイトから見た平均的な金額では450万~600万円。高い所では、700万円という医療施設もあります。

ただ緩和ケア病棟で夜勤がある場合と、日勤のみの場合ではかなりの差が見られます。

緩和ケア看護師でも外来勤務であれば500万円以下、地方であれば400万円前後という求人もあります。

【緩和ケア看護師の求人例】

例1:東京都福祉大学系病院

月給:32.8万~36.3万円(夜勤手当4回含む)

賞与:年2回

昇給:年1回

看護配置:7対1 ・勤務体制:2交替制(夜勤:16:30~9:00)

例2:神奈川県総合病院

月給:31.8万~45.3万円

基本給180,500~256,200円 + 諸手当143,000~163,000円

賞与:年2回(実績:3.0ヶ月)

24時間対応の託児所完備

例3:埼玉県総合病院

月給:28.7万~36.4万円

常勤(夜勤またはオンコールあり)

基本給212,000~289,020円 + 諸手当75,000円

賞与:年2回

緩和ケア看護師の求人数は?

「求人ボックス」を利用した場合の検索では「看護師 緩和ケア」の東京都の求人数は約800件、検索地域を神奈川県、千葉県まで広げると約1,600件となります。

アルバイトやパートから、託児施設、寮完備という求人まで、内容は多種多様です。

単純に「看護師 緩和ケア」のみでの検索は「スタンバイ 」では5581件、「Indeed」では1,800件、「ナースエージェント」では242件と差があります(2020年3月9日現在)。

最初に条件を定めておき、いくつかの転職サイトで自分の気に入る情報がピックアップされるか試してみるといいでしょう。

緩和ケア看護師のスキルアップ

緩和ケア看護師向けの研修

専門的緩和ケア看護師教育プログラム:日本ホスピス緩和ケア協会

おもな参加条件は、以下のとおりです。

  • 専門的緩和ケアを担う場(ホスピス・緩和ケア病棟、緩和ケアチーム、在宅緩和ケア)の臨床経験が2年間以上ある者
  • ELNEC-Jコアカリキュラム指導者養成プログラム、またはELNEC-Jコアカリキュラム看護師教育プログラムを修了している者
  • 所属先でリーダーシップやチームの調整役割を期待されており、所属施設の上長(看護職)の承諾・推薦書を得ることができる者

緩和ケアを目指す看護職のためのセミナー:日本緩和医療学会

参加対象は、例えば「臨床経験3~10年目の看護師(緩和ケアをより深く学んでいきたいと考えている人)」などとされています。

緩和ケア認定看護師

日本看護協会が認定する緩和ケア分野の認定看護師資格取得には、以下の要件が求められます(日本看護協会「認定看護師」)。

看護師免許取得後、実務研修が通算5年以上あること

【緩和ケア認定看護師 実務研修内容の基準】
  1. 通算 3 年以上、緩和ケアを受ける患者の多い病棟、または在宅ケア領域での看護実績を有すること。
  2. 緩和ケアを受ける患者を 5 例以上担当した実績を有すること。
  3. 現在、緩和ケアを受ける患者の多い病院、または在宅ケア領域で勤務していることが望ましい。

日本看護協会「認定看護師教育機関認定要項」より引用

認定看護師教育機関を修了

A課程認定看護師教育機関(受講期間:6ヶ月以上1年以内 600時間以上)

特定行為研修を組み込んでいない認定看護師教育機関における制度で、2026年度をもって教育を終了します。

 
B課程認定看護師教育機関(受講期間:1年以内 800時間程度)

特定行為研修を組み込んでいる認定看護師教育機関における制度で、2020年度から教育を開始します。

認定審査に合格

※2020年までに資格を取得したA課程認定看護師については、特定行為研修を受けることで、B課程認定看護師への移行手続きができます。

まとめ

患者と家族に寄り添い、心身の苦痛を和らげる緩和ケア看護師の需要は、今後もますます高まっていきそうです。緩和ケア看護師として働きたいけれども、転職が不安という場合には転職エージェントに相談してみてはいかがでしょうか。