[ 記事作成日時 : 2016年6月4日 ]
[ 最終更新日 : 2020年2月6日 ]

看護師のインシデントレポートの書き方とインシデントとアクシデントの分類

インシデントレポート

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医療現場において、患者に関わる事故は絶対にあってはならないものです。

しかし現実には医療事故発生の可能性を、ゼロにすることはできません。看護師としてインシデントレポートの作成は、重大事故を未然に防ぐための重要な責務です。

発生した事実を確実に共有することで、大事に至る前にその芽をつむことができます。

正確なインシデントレポートを書くために、押さえておくべき知識について解説していきます。

      
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インシデントレポートの基礎知識

そもそもインシデントとは?

インシデント(incident)は、日本語では「偶発事象」と訳されています。思いがけない理由により起こる事象で、適切に対処しなければ、重大な過失につながることを意味します。

国が認定している重大インシデントとしては、主に旅客機や鉄道などに関するものが多く見られます。

多数の人々の生命に甚大な損害を与える可能性をもつ事象を指し、飛行機や列車の損傷、整備不良などが話題となります。

厚生労働省では、医療現場でのインシデントを次のように定義しています。

“日常診療の場で、誤った医療行為などが患者に実施される前に発見されたもの、あるいは誤った医療行為などが実施されたが、結果として患者に影響を及ぼすに至らなかったもの”

何らかのミスがあったものの患者への影響がなかった場合、インシデントと定義されます。

インシデントレポートを書く重要性

看護師全員が「状況はまずかったけれど、何事も起きなかったから黙っていよう」という姿勢であったなら、その病院は間違いなく医療事故の発生を見ることになります。

医療ミスにつながる可能性があるインシデントを報告することで、自分自身に対する意識を強くし、ほかの看護師など医療スタッフへの注意をも喚起することになります。

インシデント経験やインシデント対策を病院や病棟で共有すれば、看護師をはじめとする病院全体が、インシデントを疑似体験することができるようになります。

事故に発展しうる事例として、「この行為がこのような事故につながるのだ」というシミュレーションの役割を果たします。

このようにインシデントレポートの作成は、結果的に医療事故を減らすことにつながります。

看護師ひとりの問題ではなく、医療施設あるいは医療業界全体に対し、よりよい医療・看護を目指すうえでの大きな学びとなります。

アクシデント・インシデント・“ヒヤリハット”

ヒヤリハットの法則

似たような言葉にはアクシデントがあります。

インシデントが「ミスはあったけれど事故には至らなかった」のに対し、アクシデント(accident)は「事故、医療事故」となった状態です。

インシデントを見逃したり、対処法を誤ったりすることで、明らかな事故になったものを意味します。

日本の医療の現場では、重大事故にならなかったものを「インシデント」、事故になってしまったものを「アクシデント」と区別しています。

インシデントを見逃したことで、アクシデントが起こるともいえます。

アクシデント発生時には、何か見逃したことはないか、つまりインシデントを探すことで、今後の医療ミスや医療事故を防ぐことにつながります。

インシデントと同じような状況で経験するのが、「ヒヤリハット」です。

インシデントを表す言葉としても使われますが、「ヒヤリハット」したということは看護師がインシデントに気付いたということになります。

アクシデントが起きてしまった場合には、「ヒヤリハット」がないままインシデントを見逃している可能性も高くなります。

インシデントとアクシデントのレベル分け

インシデントとアクシデントは、患者への影響レベルによって分類されます。レベルの分類は以下のとおりです。

レベル0:インシデント:傷害なし
誤った行為が発生したが、患者に実施されなかった
レベル1:インシデント:傷害なし
誤った行為を患者に実施したが、患者に影響は及ぼさなかった
誤った行為を患者に実施したが、患者に影響は及ぼさなかった
レベル2:インシデント:傷害軽度
行った医療または管理により、患者に影響を与えた
レベル3a:アクシデント:傷害中等度
行った医療または管理により、本来必要でなかった簡単な治療や処置が必要になった
レベル3b:アクシデント:傷害高度
行った医療または管理により、本来必要でなかった治療や処置が必要となった
レベル4:アクシデント:傷害中等度~高度
行った医療または管理により、永続的な障害が発生した
レベル5:アクシデント:傷害高度
行った医療または管理が原因で患者が亡くなった

レベル0~2がインシデントと分類され、一過性のものであることが特徴です。

アクシデントに分類されるのはレベル3aを除いては継続性があり、傷害についての治療が長く必要となったり死亡したりした場合となります。

インシデントレポートの書き方

インシデントレポートの目的を把握する

インシデントレポートの目的とは、事実を明らかにし、それを共有することで再発を防止するところにあります。

さらに重大なインシデントやアクシデントに発展しないよう、抑止する役目も果たします。

インシデントレポートの真の狙いは、ただ起きた事象を報告することだけにあるのではなく、原因を探り出し同様のミスが発生しにくい環境へと導くことにあります。

そのためにもインシデントレポートの内容は、事実に基づく正確なものでなければなりません。

起きた事象についてはもちろん、その前後関係、背景、状況、患者への影響などさまざまな角度から見つめ直すことが必要です。

場合によってはインシデントが発生した現場の保全や、複数の関係者からのヒアリングも求められます。

インシデントレポートは6W1Hによって組み立てる

インシデントレポートの作成にあたり事実をもれなく把握するためには、6W1Hの要素を基に組み立てていきます。例を見ていきましょう。

When(いつ)
昼食の配膳時、患者に点滴を投与する時、今日の午後15時
Where(どこで)
○○病棟の病室で、分娩室で
Who(誰が)
自分が 氏名
Whom(誰に)
患者Aさんに
Why(なぜ)
確認不足、誤った認識していた、指示を聞き間違えた
What(何を)
薬剤を、患者を、過剰な点滴を・薬を、点滴の滴下スピードを
How(どのように)
投与し間違えた、取り間違えた、早い・遅かった

インシデントレポートの書式やひな形は、病院によって異なりますが、どのような場合でも6W1Hを基本として考えることで、状況をわかりやすく整理できます。

ポイントとなるのは、できるだけ早い時点で、できるだけ詳細にということです。時間が経てば記憶があいまいになり、また現場の状態も変わってしまいます。

医療現場の改善に貢献できるインシデントレポートとするためには、事象が起こったことに気づいた時点から、状況の把握を開始することが大切です。

時間を多少隔てた後でも、6W1Hを基にしてくり返し思い出すことで、精度を上げていくことはできます。

現場の様子がわからない人にも事実として理解ができるよう、客観性のあるレポート作成を心がける必要があります。

インシデントの報告

看護師の中には、自分しか知らないインシデントの報告を避けたいと考える人がいるかもしれません。

しかしインシデントレポートの重要性を理解していれば、自分だけの問題でないことはすぐにわかるはずです。

インシデントの報告を即座に実施するためには、自分が働く病院の報告体制について知っておく必要があります。

勤務先のインシデント担当者が誰なのか、レポートのフォーマットがあるのか、提出先がどこなのかを事前によく知っておけば、事象が発生したときにもすぐに対応できます。

もちろん多くの場合はレポートの作成以前に報告しなければなりませんが、インシデントレポート作成手順については常に確認しておく必要があります。

病院によってはインシデントのレベルや、患者への影響に従い、報告先やインシデントレポートの提出先が決められているケースもあります。

看護師に対しては病院のルールに沿って、速やかに事象を適切な相手に報告することが求められます。

インシデントの分析と防止策

インシデントの要因と原因を探る

問題のある事象が発生したときには、それが人為的なものかそれ以外の要因によるものかを切り分ける必要があります。

人為的なものであれば、同じ手順をくり返さないような行動の改善が必要となります。

それ以外はたとえば、施設や備品などに起因するものであれば、すぐに対策を講じることが求められるでしょう。

人為的なミスが原因となっている場合には、次の2つのいずれかが焦点となります。

  • すべきことをしていない
  • すべきでないことを行った

このいずれにも当てはまらないときは、人為的なミス以外の要因であると推測できます。

もしも人為的なミス以外が原因であれば、看護師に対して指導強化をしても同じインシデントの発生を防止する策とはなりません。

この切り分けが早期に確認されることで、防止策への着手も早まります。

人為的なミスによるインシデントの種類

人為的な行動が原因となるインシデントの主な種類としては、以下のような分類が知られています。

不足

経験の不足や知識・技能の不足に起因するインシデントです。新人看護師や異動直後などの看護師に多く見られます。

業務をこなせるレベルであると見なされたことが原因となっているため、どの部分が不足して事象につながったのかを明確に把握し、対応していく必要があります。

不遵守

手順やルール、マニュアルから外れたため発生した事象です。知っていたはずなのに「すべきことをしていない」あるいは「すべきでないことを行った」ことになります。

コンプライアンスを含め、該当する看護師やスタッフへの再指導が求められます。

不注意

新人・ベテランを問わず、誰にでも起こりうるインシデントです。通常であれば問題なく行われたことが、注意力散漫になったことで異常の発生につながります。

集中力をもって業務にあたるよう指導を強化するほか、現場で注意を喚起する対策を施す必要があります。

疲労

先の不注意の要因ともなる疲労は、過酷なシフト体制や、休憩が取れないほどの多忙さによって蓄積し、インシデントを誘発します。

患者を支えている際に、看護師が目まいを起こしたり態勢を崩したりすると、患者にケガをさせるなど重大な影響を及ぼすことも考えられます。

労働環境や勤務体制の見直しによる、インデント防止への策が急務となります。

錯覚

指示書の読み間違いやカルテ、ラベルの見間違いなどによってインシデントが発生するケースです。特に記号や数字などは、誤認識を起こしやすく、重大な事故にもつながります。

錯覚の防止対策としては声出しによる確認、複数人での読み合わせなどが有効策となります。

欠陥

素養・資質の欠如によるインシデントです。看護師個人の特性に起因するため、デリケートに扱う必要があります。

常日頃からの勤怠の状況、安全への配慮不足、看護師としてそぐわない言動などを根拠として、配置転換を行うケースも考えられます。

インシデントは給与に影響するか?

インシデントは多くの看護師が経験する

日本医療機能評価機構によると医療事故の報告件数は年々、徐々に増えているとのことです。しかもその約半数には、看護師が関与しています。

医師と違いほぼ24時間にわたり患者と関わりをもつ看護師は、それだけインシデントに遭遇する割合も高くなります。

看護師のインシデントやアクシデントについては、個人的な問題とせずさまざまな角度から検討されています。

年齢の低さや看護職の経験年数の短さ、また所属部署経験年数の短さなどについては教育体制の充実が課題と考えられます。

夜勤のある交代制勤務であることや、プレッシャーにより精神的な不健康に陥りやすいことなど、インシデントは個人の資質以上に看護師という職業によって引き起こされるという見方がされています。

事実、インシデントやアクシデントを 6か月間に 1回以上起こす看護師の割合は 6~10割あると言われています。

看護師職全体の7割以上がインシデントやアクシデントを起こしており、平均回数は 2.2回となっています。

つまり看護師の仕事においては、誰もがインシデントを起こす状況にあるといえるのです。

看護師に多いインシデントとは

看護師のインシデントやアクシデントで最も多いのが注射・点滴で、2番目が与薬です。この2つで全体の6割以上を占めており、次に体位・姿勢の保持・移動と続きます。

注射・点滴で一番多いのが指示内容・量の誤りで、次に注入速度の間違い、与薬では配薬忘れ、重複投与、時間違いとなっています。

療養型病棟や介護施設では転倒の割合が多くなります。看護の現場でのミス・失敗の原因としては、さまざまなケースが考えられます。

例えば、点滴の場合、点滴液の取り違えや動脈の輸液ルートと静脈の輸液ルートの勘違い、点滴計算間違いなどが考えられます。

最近増えているのは経管栄養と点滴のルートを間違って経管栄養を輸液のルートに入れてしまうという事象です。

この場合、患者の生死にかかわる重篤な事態を引き起こしかねず、アクシデントへと発展する可能性が高くなります。

査定に響くことは考えにくい

インシデントを起こすと自己嫌悪したり、看護師失格ではと悩んだりするかもしれません。しかし先にも見たように、看護師の7割が何らかのインシデントを体験しています。

医療現場では誰もが、インシデントやヒヤリハットを犯す可能性があるのです。

インシデントレポートを作成するということは、自分が看護師を代表して事象の報告に当たるという気持ちを持たなければなりません。

インシデントを起こしたことで、収入が減ったり査定に響いたりするのではと危惧する看護師がいるかもしれませんが、まず心配はありません。

インシデントを隠蔽されれば、それだけ病院では大きな事故につながる火種を抱えることになります。

インシデントレポートを提出することは、査定にプラスになることはあってもマイナスになることは考えられません。

病院は人の命を守る場所です。看護師自身の保身や、仲間内の関係などを優先するといったことがあれば看護師でいる資格はありません。

インシデントレポートは、医療業界全体の発展にも貢献していきます。正しい報告をすることこそ、看護師に課せられた使命といえるでしょう。

この記事を監修した人
はる
地方の公立大学病院小児科病棟で2年勤務したのち看護師をやめ都内のIT企業に転職。結婚を機にUターンし専業主婦となる。10年のブランクを経て訪問看護師として復職。その後、急性期病院の外来・救急外来勤務を経て、療養型病院の病棟師長として勤務。家族の都合により上京後は回復期リハビリ病棟に勤務。看護師として通算15年以上の臨床経験がある。現在はココナスにて記事の企画、監修をはじめメディア運営を行う。
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