[ 記事作成日時 : 2019年8月14日 ]
[ 最終更新日 : 2020年6月21日 ]

看護師のリーダー業務とは?看護師のリーダー業務に求められるスキルや役割

日本の看護方式は「受け持ち型」から始まったといわれています。昨今はチームで患者をケアする「チームナーシング」が多く採用されています。他の看護方式と併用するタイプのチームナーシングを含めると約64%が「チームナーシング」を採用しているという調査結果もあります。

「チームナーシング」をスムーズに進めるために、中核となりチームをまとめる役がチームリーダーです。チームリーダーの役割とは?必要とされる能力とは?リーダー業務について解説します。

出典:「看護方式の採用状況に関する調査」日本看護管理学会

看護師のリーダー業務とは

リーダーは管理職なの?主任とはどう違う?

看護師の役職は、看護主任や看護師長、看護部長といったものが知られていますが、リーダーはそれらとはちょっと立場が違います。看護主任や看護師長、看護部長のような管理職は、役職として固定されています。しかし、チームリーダーは比較的短期間で任されることが多く、中にはシフトのたびにリーダーが変わることもあります。

リーダーは役職ではありませんが、活躍や能力が認められれば今後のキャリアの足掛かりとなる可能性があるポジションです。

リーダーって何をするの?

チームで看護を行う場合、新人からベテランまでが一緒にチームを組み、日替わりのリーダーのもとで日々業務を行います。より良い看護を実践するために、それらの組織をさらに、日勤チーム、部署内チーム、目的別の担当チームなどに分ける医療機関もあります。

チームリーダーのおもな業務は、メンバーの作業がスムーズに進行するように、業務を割り振り、医師や他のチーム、看護師以外のスタッフと連携を図ることです。

中には勤務帯リーダーという呼び方をしているところもありますが、リーダーはチーム全体の仕事を把握し、潤滑油となって全体を取り仕切る役目を果たします。そのため、リーダーには看護業務のスキル以外にもさまざまな能力が求められることから、2~3年の看護師経験を経て一通りの仕事を覚えた看護師が任されることが多いようです。

看護理論家のパトリシア・ベナーは著書『ベナー看護論―初心者から達人へ』(医学書院)でこう説いています。

看護師は2~3年目になると、意図的に立てた長期の目標や計画を踏まえて自分の看護実践をとらえ始める

つまり臨床経験2~3年目頃の看護師が、経験を積むことでさらなる業務への理解が深まることから、多くの病院やクリニックが看護方式として採用しているということです。この時期にリーダー業務の経験を積むことは、看護師としての自信を高めるという調査結果も出ています。

状況を察知し、情報の取捨選択

例えば、「入院患者のAさん、微熱、悪寒あり」とメンバー看護師から報告があったとします。リーダーは医師に報告すべき情報は何かを瞬時に判断し、「処置はしたのか?」「むくみなど他の症状はないか?」「いつから症状が出ているのか?」など、足りない情報を確認するように指示を出します。

そのうえで、「悪寒があるということは、まだまだ熱が上がる可能性が…何かが起こっているかも」と推測し、感染症を疑い、レントゲンの予約の準備をしたり、結果を早めにもらえるように取り計らうなど根回しを考えたりします。

医師には、的確な指示がもらえるように必要な情報をそろえて報告します。緊急性の有無やそれまでに行った処置も伝えます。医師からもらった検査や投薬、治療の指示をメンバーに伝え、先を見通して今後予測される事態に備えるようアドバイスします。

このような仕事が全てではありませんが、物事の全体を見渡し、チームの仕事が支障なく進むように取り計らうことが業務の一つとなります。

リーダー業務のスケジュール例

リーダーの1日のスケジュールはどうなっているのでしょうか。医療機関やチームの大きさ、診療科によっても異なりますが、日勤リーダーの1日の流れを追っていきましょう。

出勤後、リーダーが最初に行うのは、患者に関する情報収集です。夜勤を担当した看護師から、当日手術予定の患者の様子や、患者に変化がなかったかどうかの報告を受けます。申し送りではチームメンバーと情報を共有し、優先順位を判断し、それぞれに指示を出します。

次に、その日の空きベッドの状況や予約入院についての確認を行います。状況によっては他の部署と調整を行い、緊急入院に備えて常に受け入れ可能な状況をつくるという調整作業もあります。

その他にも、医師からの指示受けや内服薬の確認、退院する患者への対応などがあり、それらを行いながら自身も病室をラウンドします。
そして、正午が近づけば、交代で昼食休憩をとるため、メンバーに対して人員の調整をとりながら順次休憩の指示を出すこともあります。

午後になると、メンバーからの報告を受け、メンバーのフォロー、看護日誌への記録作業が業務の中心になります。最後に患者さんの変化や行った処置、今後のケアなどについて夜勤担当者に引き継ぎます。

新人看護師のフォローや指導に加え、記録漏れの確認など、1日の振り返りを行います。こうしてリーダー業務の1日は終了となります。

リーダーに必要な能力とは?

チームをまとめる役目を担うリーダーには、看護師としての基本的な知識やスキル以外にも多くの能力が求められます。では、看護師のリーダー業務にはいったいどのような能力が必要とされるのでしょうか。

元ハーバード大学教授のロバート・カッツが提唱した「リーダーに求められる3能力」を看護師のリーダー像に当てはめた調査結果があります。そこでは、看護師のリーダー業務に必要とされる能力は、3つであると言っています。

引用:『日看管会誌』

看護実践能力

テクニカルスキルとも呼ばれる看護の専門能力のことで、看護師であれば基本的な看護知識や技術であり、患者さんに安全な看護を提供する能力を指します。経験を積み重ねることによって看護実践能力は高まるという調査報告があります。

例えばバイタルサインなど必要な情報を患者さんから正しく集められるか、患者さんが訴えていること以外の情報に気づけるか、その気づきを確認できるかなど。集めた情報をきちんと報告する能力も含まれます。

対人関係等の能力

一緒に働く先輩、後輩看護師などのメンバー、医師やスタッフ、患者さんとその家族に対するコミュニケーション能力です。

例えば、メンバーや医師に対して感情をコントロールすることができているか、または医師やスタッフに対して患者さんの立場で発言することができるか、患者さんから情報収集をする際に、不安を感じさせない会話ができるか、などが当てはまります。

リーダーシップ能力

組織の一員として所属する病棟や病院全体の管理面や組織面にも目を向けることができるかどうか。つまり、病院側の視点で物事を考えることができるか。または、チーム内のトラブルへの対処や、メンバー看護師に対し指導や助言ができる。などが当てはまります。現場から挙がってきた情報に、即時に判断する能力も必要とされます。

引用:日本看護管理学会誌17巻1号 『臨床経験2・3年目看護師の勤務帯リーダーの自信につながる要因─6年目以上看護師との比較から─』

リーダーになるために身につけたいこと

リーダーには多くの能力が求められることを説明してきました。では、皆さんがリーダー業務を任されるその日までに、どんなことを身につけておくべきなのでしょうか。

それはリーダー業務に必要な能力の項目で先にも述べたとおり「看護実践能力」「対人関係等の能力」「リーダーシップ能力」の3能力と考えます。リーダーになるために身につけたいことを紹介します。

「看護実践能力」

まずは、リーダーとして必要な看護知識やスキルを習得しましょう。リーダーになれば自分だけではなく、チームの看護師の指導を行うことになります。研修や学界に参加したり、資格取得に向けた勉強を始めるのもよいでしょう。

日頃から実力を向上させるために努力する姿勢はリーダーに求められることの一つです。努力することで看護師としての自信にもつながります。

「対人関係等の能力」

ビジネスの基本は「報連相(ほうれんそう)」だといわれますが、報連相とは、仕事を円滑に進めるための「報告」「連絡」「相談」のことを指します。対人関係等の能力は、「報告」「連絡」「相談」 で差がつくものです。

リーダーになればチームをまとめる必要がありますし、他の部署や医師との連携や調整も任されます。チームを組むことになる看護師たちや、上司や業務で関わるスタッフと積極的にコミュニケーションをとることが大事になります。

「リーダーシップ能力」リーダーの仕事を観察しよう!

リーダー看護師になるためのマニュアルは存在しません。ですが、現在リーダーとして活躍している先輩看護師を観察すれば、リーダーがどういった働きをしているのかが見えてきます。

同じ部署のリーダー看護師だけでなく、他の部署で活躍しているリーダー看護師の仕事などもよく観察してみるとよいでしょう。求められる役割と業務についての理解が深まります。

また、多くの仕事を一人で抱え込むのではなく、人に任せるのもリーダーの大事な仕事です。これらを習得しつつ、同時に業務内容を整理して優先順位をつける力も養いましょう。それぞれのメンバーに対し、状況に応じた仕事の割り振りをするためには、常に業務を順序立てて整理する習慣が必要になります。

人としての成長につながる

チームの先頭に立って行動するリーダーに対して、苦手意識をもつ看護師もいることでしょう。

しかし、リーダーを担当することは、自身を知ることにもなります。何ができて何ができないのかといった看護師としての課題も見えてきます。リーダーになってみないとわからないこともあります。こうして自分を見つめ直すことで、自己改善に向けた前進が始まるとも考えられます。

後輩を指導する立場はプレッシャーも大きいですが、人に教えよう伝えようとすることで自身の理解が深くなり、結果として自分の学びとなって積み重ねられることでしょう。

そして何より、リーダーに求められる役割の全てが、患者さんにより良い看護を提供するために必要なスキルであり、そのスキルを身につけることは、看護師としてだけではなく、人としての成長を促してくれることにもなります。

チーム全体を見渡し、大事な情報はどれなのかを取捨選択し、急な変化に優先順位をつけて、順番に対処するなど、総合的な判断能力が養われるでしょう。