[ 記事作成日時 : 2016年6月26日 ]
[ 最終更新日 : 2020年6月21日 ]

ICUで働く看護師の役割と業務の特徴や適正、ストレス回避法

ICUで働く看護師

ICU(集中治療部)は、生命の危険性の高い患者を24時間体制で治療する部署です。ICUにはすべての診療科の重症患者が入院します。つまり、内科、外科系を問わず、重篤で急性的な症状の患者を集中的に治療することになるので、そこで働く看護師には、高い判断能力と幅広い知識が必要とされます。

常に緊張を強いられる現場ですが、ICUを経験すれば、多様な疾患の知識が得られ、どのような現場からも重宝される看護師に成長できるのは間違いありません。

ICU看護師の役割

ICUはIntensive Care Unit(集中治療部)の略で、日本の病院では集中治療室と呼ばれます。日本集中治療医学会ではICUについて、

集中治療のために濃密な診療体制とモニタリング用機器、ならびに生命維持装置などの高度の診療機器を整備した診療単位
と定義しています。

厚生労働省によると、集中治療室(ICU)がある一般病院は712 施設あり、他に重症患者を集中的に治療する部門を設置しているところもあります(厚生労働省 「平成 29 年(2017) 医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」

ICUのもっとも特徴的な部分は、診療科の枠を超えて、命の危険性の高い患者をすべて診ることです。 最近ではCCU(冠疾患集中治療室)・HCU(高度治療室)・SCU(脳卒中集中治療室)・NICU(新生児集中治療室)といった、専門性に特化した部署も多く見られますが、その基点となっているICUは疾患を区別しない最前線の治療部署です。

ICUの患者のベッドの周囲には、人工呼吸器や補助人工心臓、持続血液浄化などの人工臓器といった高度な医療機器が配され、患者は常時、血圧や心電図により生体モニターがなされます。 ICU看護師は、わずかな変化に対しても見落としがなく患者に的確な処置がされるよう、監視を行っています。さらに、モニターだけに頼らず、モニターに反映されない変化を敏感に察知することが要求されています。

ICU看護師の仕事内容

集中治療室には、さまざまな病気によって重篤に陥った患者や、大手術後に予断を許さない患者がおり、24時間体制で医師も常駐しています。緊急オペになるケースも少なくないので、常にそのことを念頭に置いて準備をしておく必要があります。

ICU看護師の仕事には、おもに次のようなものがあります。

観察と機器類のモニタリング

ICU内部には一般病室には見られない、たくさんの医療機器があります。いつ容態が変化するか予測できない患者に対して、呼吸や脈拍、心電図、また輸液ポンプの状態などをモニターしながら観察します。

看護師はこれらの機器類のデータから、異常や変化を瞬時に見出す必要があります。またデータには現れない患者の表情や顔色などをつぶさに観察し、看護師ならではの体感によってわずかな変化にも対応していく必要があります。

こうした機器類については、基本的に臨床工学技士が操作や管理を行いますが、看護師と違って臨床工学技士は24時間待機しているとは限らないので、基本的な操作や管理法を習得しておく必要があります。

日常の医療処置・看護 身の回りのケア

採血や点滴、手術後の消毒などの医療処置を行います。また、一般病棟と同じように食事や清拭などの日常生活の看護も行います。意識のない患者だとしても快適な状態を保つことで、早期離床につながることもあります。

医療スタッフとの連携

重篤な患者が多いため、ICUは医師を中心とした専門職による高度な医療チームを形成しています。ですから、他の病棟に比べ、臨床工学士、薬剤師といった医療スタッフの数が多くなり、看護師は医師や医療スタッフのつなぎ役として働きます。

定期的なカンファレンス以外でもこまめに情報を交換する体制ができていれば、状況判断がより正確になります。

患者の家族の精神的なケア

患者の病状は重篤であるため家族は動揺しているものです。また、面会は時間や人数が決められていることも多いので、適切に患者の状態を伝えつつ、家族への精神的なケアもします。

ICU看護師のやりがい

厳しい状況に置かれることが多いICUの看護師ですが、そのやりがいとはどのようなものなのでしょうか。

患者の回復に対する喜び

患者の回復するまでの過程がまさに「目に見える」だけに、回復の喜びを実感することが多い部署ともいえるでしょう。使用している機器が少しずつ外され意識が戻り、会話ができるまでになったときには、ベテランであってもうれしいものです。

チーム医療での達成感

ICUで急変が起きると全てのスタッフが現場に駆け付け、全員ができることを行います。危機を脱したとき、「みんなで乗り越えた」という共通の充実感に満たされます。

スキルアップを実感する

ICUを経験した看護師の誰もが口にするのは、自分自身の成長です。実際にICUを経験した看護師が別の職場に移ったとき、知らず知らず身についていた自身の知識に驚いたという話もあります。つらいプレッシャーに耐え勝ち得た知識は、簡単に失われることはありません。

ICU看護師になるには

新卒の看護師を受け入れている病院もあれば、救急や急性期である程度経験を積んだ看護師を配属する病院もあります。新卒の看護師を受け入れるのは、ICUは多忙ではありますが、一般病棟よりも受け持つ患者数が少なかったり、先輩看護師からも比較的サポートを受けやすいとされているためです。

ただ、ICUの過酷さに新人看護師が耐え切れないのではないかともいわれています。死に遭遇する頻度が高く、また激烈な症状を呈する患者も多数収容されるICUは、あまりに刺激が強すぎるのではないかという考え方です。また現場では患者の命が最優先されるため、計画的な教育ができず、指導のタイミングが失われる可能性も高いともいわれます。

ICUの看護師を目指す場合には、どのような人材をICUに配属するのかといった病院の方針について事前のリサーチが必要といえるでしょう。

ICU看護師がもっていると役に立つ資格

ICUへの転職や異動を希望するなら次のような資格を得ておくといいでしょう。

  • BLS(一次救命処置)
  • ACLS(二次心肺蘇生法)
  • JPTEC(病院前外傷教育プログラム)

スキルアップのためにおすすめの資格には次のようなものがあります。

  • 呼吸療法認定士
  • 医療環境管理士
  • 学会認定・自己血輸血看護師
  • 周術期管理チーム看護師
  • 呼吸ケア指導士
  • 学会認定・臨床輸血看護師

熟練したICU看護師になるために、次のような認定看護師や専門看護師を目指すこともできます。

集中ケア認定看護師 集中治療が必要な患者の病態変化の予測や、重篤化を予防する方法を学びます。
救急看護認定看護師 救急医療現場における病態に応じた迅速な救命技術などを学びます。
急性・重症患者看護専門看護師 緊急性が高い重症の患者の専門的な看護と、患者の家族のケアについても学びます。専門看護師になるには、大学院に2年間通う必要があります。

ICU看護師の適性

ICU看護師は、重症の患者が急変する可能性も高く高度な医療機器も扱うので、勉強し続けることが必要です。また、患者の命を救うという大きなやりがいがあるとともに、患者の死にも多く出会う覚悟も必要です。

ICU看護師には、どのような資質が求められているのかについて解説します。経験値によって、ICUのさまざまなプレッシャーなどを克服していく看護師も少なくありませんから一概にはいえないことではありますが、基本的にICUで働くために必要なあり方について考えていきます。

メンタルが強く、精神的なプレッシャーに耐えられる

生死に直結する現場なので、医療スタッフもピリピリします。ささいなことにくよくよせず、何があっても気持ちをすぐに切り替えて立ち直れるメンタルの強さが必要です。

スキルを磨きたいという向上心が強い

ICUの看護師はとにかく覚えていくことが多く、一般的な看護師以上の向学心が求められるといえます。そのため、必要に応じて学ぶことが苦にならないタイプの看護師に向いているといえます。病気に関する知識や日々進歩している医療機器についても、興味をもちながら学んでいけるようであればICUの看護師として伸びていけるはずです。

協調性の重要さを理解している

どのような医療現場であっても、チームとしての協調性が必要とされます。ICUの現場では、さらに強いチーム力が求められます。チームに貢献するために動くことができれば、ICUでも十分な働きができます。

精神的に不安定になりにくい

重症の患者が多いため、患者が急変したり、亡くなってしまうことも多く、社会の日常とは全く違う出来事に日々向き合わなければなりません。目の前のやるべきことに集中できるタイプには向いています。

ICU看護師が抱えるストレス

ICU看護師は覚えなければならないことが多く、しかも患者の命と向き合っている日々のため、ストレスも多くあります。ICUで働く以上は避けられない問題ではありますが、上手にリフレッシュできないと相当つらい職場であり、離職率も高いといわれています。

ICUの看護師のストレスとその原因について見ていきましょう。

重症度・緊急度の高い患者を扱う

ICUに収容されているのは重症度・緊急度の高い患者ばかりで、回復が見られれば他の病棟へと移されていきます。生命の危険にさらされている人の多い現場なので、スタッフ自身の緊張感が強く、精神的なプレッシャーがあります。

覚えなければいけないことが多い

一般の診療科でも看護師は学び続けることが大切ですが、あらゆる疾患の患者を診る可能性があるICUでは、いくら勉強しても終わりはなく、次から次へと新しい分野の知識を吸収しなければなりません。

医療機器の操作が多い

ICUでは一般病棟以上に使用する機器類は多くなります。臨床工学技士が常駐しているとは限らず、看護師に任されることも多くあります。

医療スタッフのとの関わりが多い

一般的な病棟では、医師と看護師が固定されている分、関係性が築きやすいといえます。ICUには担当医師の他、患者の主治医であるさまざまな科の医師も出入りします。また、ICUはチームで動くため、薬剤師などの他職種との関わりも深くなりますから、人間関係の多様さにとまどうこともあるかもしれません。

患者とその家族との関係がつらい

スタッフどうしの関わりに増してストレスのもとになりやすいのが、患者やその家族との関係です。厳しい状況に置かれている患者やその家族と、向き合うのは負担が大きいものです。

患者の今後の経過や治療についての説明や質問への回答には工夫が必要で、ときとして納得しない家族の相手をひとりでこなさなければならないこともあり、強いストレスとなることも多いようです。

精神的な負担が大きい

患者の死に立ち会う機会も多くなります。だんだんと心にふたをすることを覚えて心が揺さぶられないようになるのですが、それはそれでまた「死を感じない自分」に違和感をもってストレスになる人もいます。

夜勤が多い

ICUは重篤な患者が多く夜間に配置されている看護師の数が多いため、一般病棟と比べて夜勤日数が多くなる傾向があります。

日本医療労働組合連合会「2019年度夜勤実態調査」では、ICU・CCUなどにおける看護師の夜勤は、月平均で「3交替」では、約4割が「9日以上」の夜勤を行い、「2交代」では、約6割が「4.5回以上」の夜勤を行っています。

調査結果においても「医療の高度化・IT化が進む中、働き続けられる環境整備のためにも、命に直結し緊張を強いられる職場での夜勤回数の改善は必要」と指摘されています。

ストレス回避法

緊迫した現場では、医療スタッフはいらだちやすい

緊迫した現場では、医師など医療スタッフの言葉や態度が厳しくなるかもしれません。たとえミスをして、きつく怒られたとしても、それはスタッフが緊張しているためです。これからミスをしないようにすればいいだけのことだと割り切りましょう。

患者や家族の感情に巻き込まれない

患者は心配やストレスをICU看護師にぶつけてくることもあります。家族から意見などを求められたときは、自分の価値観を入れずに家族の価値観を支援するような方向で話すとうまくいくことが多いようです。

勉強会に積極的に参加する

ひとりで勉強するのもいいですが、勉強会などに参加してみましょう。知識を得られるだけでなく気分転換になりますし、知り合いが増えたり、刺激を受けることでモチベーションが上がります。

自分を追い詰めない

医師でもベテラン看護師でも、医療のすべてを知ることは無理です。わからないことは聞き、不確かなことは確認しましょう。ひとりではできないから医療チームがあるのです。

休みを取る

休日は、しっかり休養を取るようにし疲れをためないようにしましょう。それでも心身ともに疲れきってしまったときは、長期に休みを取り、ICUからの異動や辞職なども検討した方がよいかもしれません。

ストレス解消法

運動をする

ICU看護師は、勤務時間中はずっと立ちっぱなしになってしまうこともあり、常に体を動かしています。それでも緊張して体を動かしているので、ジョギングやウォーキング、ヨガなどのリラックスした状態で体を動かしましょう。夜勤明けで疲れているときも体を動かしてからの方が熟睡できます。

セミナーに参加してみる

医療機器のセミナーや心理セミナーなど、気軽に受講してみましょう。心に余裕がなくなり、まったく看護とは関係ないことができないときも、負担にならない程度のセミナーなら気分転換になるかもしれません。 

よく眠る

勉強をすることはとても大切です。しかし、寝不足ではミスも多くなります。勉強時間の確保と同じくらい、睡眠時間を確保することも大切です。

もし仕事のことが気になって眠れない日が続くようなら、長期の休みを取るか、他の部署への異動を考えましょう。ICU看護師として働いた経験は、他の診療科でも必ず役に立ちます。

好きなことをやる

他にも、一般的にストレス解消になるといわれるカラオケ、おいしい物を食べる、旅行に出かけるなど、好きなことをやりましょう。自分の好きなことを大事にすることは、自分を守ることになります。

ICU看護師調査データ

ICU看護師はやりがいもありスキルアップもできますが、日々の仕事で疲れてしまうこともあります。ICU看護師を目指すとき、下記のような論文や調査データも読んでみるといいでしょう。

日本クリティカルケア看護学会誌 13巻3号「ICU看護師が抱く看護実践に対する困難さと職務継続意思との関係」(山本伊都子)
199名のICU看護師の調査結果。自分の一つひとつの行為が患者の命を左右しているこわさを感じていることなどが、調査結果でわかっています。
千葉看護学会誌 VOL.19「経験の浅いICU看護師が看護実践で感じる困難」(田口智恵美、佐藤まゆみ他)
ICU看護師が、看護実践の中で感じる困難について分析したもの。
「受け持ち患者の病態を理解して看護を行う」「患者の今の状態を多角的に把握する」
病態を把握することが看護実践につながることなどが述べられています。
慈恵ICU勉強会『ICUスタッフのメンタルヘルス』(山口庸子)
アメリカのデータではありますが、ICUの離職率は13~20%/年で、看護師の全職種の離職率の10.4%/年より高くなっています(2013年)。それは重症患者の医療を担うクリティカルケア看護師は、ストレスなどにより、職場環境に適応する能力を失いやすいということなどが、調査データなどにより分析されています。

まとめ

ICUは体力とともに精神力についての向き不向きがあり、厳しいことを言えば、看護師であれば誰もができるという職場ではありません。

ICUには全ての診療科の重症患者が入院してきますから、全身全ての疾患に対応できるようになります。最新の機械もどんどん導入されるので、それらの機械の扱いにも対応できるようになります。

重症患者が多いため新人看護師にすぐにまかせきりにならず、ベテラン看護師について勉強しスキルを高められます。

給料については、勤務する都道府県や病院の規模、夜勤の回数、特殊手当がつくかどうかなどで違いがあるため、ひとくくりにはいえませんが、一般病棟よりも高めの設定で募集されています。給料や勤務条件は転職サイトで確かめることができます。

ICU看護師の経験は、看護師としてのスキルアップに必ず役に立ちます。