[ 記事作成日時 : 2016年7月9日 ]
[ 最終更新日 : 2020年5月19日 ]

准看護師は廃止?准看護師と正看護師の給料や業務の違いと正看になる4つの方法

正看護師と准看護師の給与の差

「短い期間で、あまりお金をかけずに資格がとれる」と人気の准看護師。ただ年々、准看護師の数は減っています(厚生労働省「平成 28 年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況)。

厚生労働省が発表したデータを見ても2016年までに正看護師の数はゆるやかに増えていますが、准看護師の数は年々減少しています。こうしたデータを目にしてしまうと、看護師を目指している人、すでに准看護師として働いている人の中には「じゃあ、これからどうしたらいいのだろう?」と不安になる人もいるはずです。

ここでは准看護師の数が減っている理由を含め、 正看護師・准看護師の違い、それぞれのメリット・デメリットから、准看護師から正看護師になる方法や費用、補助金制度までを詳しく解説していきます。

准看護師と正看護師はどう違うの?5つのポイントに絞って比較!

まずは准看護師、正看護師の違いを、資格発行者、資格要件、給料、業務命令系統、就職のしやすさ・役職の5つのポイントで比較してみましょう。

資格発行者

正看護師と准看護師は発行者が異なります(日本准看護師連絡協議会「准看護師になるため知っておきたいこと」)。

まず正看護師は「厚生労働大臣」が発行する国家資格です。一方、准看護師は「都道府県知事」が発行する免許で、医師や正看護師の指示により看護や診療サポートを行います。

資格要件

正看護師と准看護師の資格を得るための条件はそれぞれ異なります。

正看護師になるには、主に以下3つの方法があります。

  1. 中学卒業後、高等学校看護科・専攻科に5年通う。
  2. 高校卒業後、看護系大学に4年通う。
  3. 高校卒業後、看護師養成所、あるいは看護系短期大学に3年通う。

文部科学省「高等学校における看護教育」

高校卒業後に正看護師を目指すなら看護系の大学や看護師養成所に3~4年通う方法があります。高校卒業後に正看護師になるなら、この方法が最短ルートとなり21~22歳から正看護師として働くことができます。看護系大学の平均的な学費は公立、私立かによって異なります。国公立の場合は、年間50万円前後、私立の場合は年間100万円前後の費用がかかるようです(日本の学校「看護学校(大学・短期大学・専門学校)の学費・奨学金紹介」)。

一方、准看護師になるには、主に以下3つの方法があります。

  1. 中学卒業後に准看護師養成所に2年通う。
  2. 中学卒業後に高等学校衛生看護科に3年通う。
  3. 高校卒業後に准看護師養成所に2年通う。

文部科学省「高等学校における看護教育」

准看護師になるための養成所には、公立や医師会立などがあり、どの学校に通うか、どういった受講形式かによって学費が異なります。

学費のみで月におよそ2万5000~4万円程度、年間30万~48万円くらいとなり、それに教材費や実習費などが別途かかります。目安として年間約50万円、2年で約100万円ほどと考えておけばいいでしょう。

高等学校の看護科に通う場合の平均的な学費も同様に年間約50万円ほど。3年通えば約150万円の費用がかかるといわれています(日本准看護師連絡協議会「Q&A(よくある質問)」)。

准看護師の試験は年1回、2月上旬〜中旬にかけて行われます。出題内容や難易度は都道府県によって違いがありますが、合格率は全国平均97~98%と非常に高めです。試験場所により試験日が異なるため、場所を変えて複数受験することもできます。

給料

気になる准看護師と正看護師のお給料ですが、大きな違いはあるのでしょうか?

日本看護協会の調査によると、正看護師の給与は准看護師より「月6.5~9万円」高いとされています。つまり准看護師の年収+78~108万円が正看護師の年収で、生涯賃金としては約4400万円もの差がということになります(日本看護協会「看護師と准看護師の給与」)。

准看護師と正看護師で、これほど賃金格差が出るのは、そもそもの基本給が違うためです。日本看護協会の「2012年病院勤務の看護職の賃金に関する調査」によると、平均賃金額(2013年1月支給分)において、准看護師の給与総月額(※)は29万6319円で、基本給月額は21万1819円。一方、正看護師(非管理職)の給与総月額は35万2157円で、基本給月額は25万4583円となっています。

調査対象となった看護師の平均年齢は、准看護師が45.9歳、正看護師が36.1歳と10歳近く差があるにもかかわらず、正看護師のほうが4万円強も基本給が高い結果となっています。残業手当や夜勤手当、ボーナスなどは基本、基本給をベースに算出されるため、准看護師と正看護師とではこれほど大きな収入の差が出てしまうのです。

正看護師の賃金アップや地位向上のため、国や日本看護協会は准看護師を廃止し、看護師を一本化する考えを打ち出しています。このお話はこのあとまた説明していきましょう。

業務・命令系統

准看護師の基本的な業務は血圧、体温、脈拍などの測定、点滴、注射、採血、食事や入浴介助、手術の補助、患者さんの移送、カルテの記入といった医療行為で、これらの業務は正看護師と変わりません。

ただ決定的に異なるのは、准看護師は医師や正看護師の指示がなければ業務にあたることができない、ということです。准看護師から正看護師に指示を出す、といったことはできないため、准看護師は業務内容に制限が出ることもあります。

就職のしやすさ、役職

厚生労働省の調査(厚生労働省「看護職員の現状と推移」)によると正看護師の勤務先は約71%が病院、約16%が診療所やクリニック、約7%が介護施設となっています。一方、准看護師の勤務先は約43%が病院、約36%が診療所、20%が介護施設となっています。

正看護師の勤務先として病院が多いのは病院側が新卒の「正看護師」採用に積極的であることが考えられます。また、一部の病院では准看護師自体の募集を停止しているところもあり、病院勤務に限っていえば正看護師が有利といえるでしょう。

病院側が正看護師を採用に積極的な理由の一つに、看護配置基準があります。一般病床(急性期)や回復期リハビリ病床(重症患者が3割以上)、精神病床(精神救急・急性期)では、正看護師の割合を7割以上と定めています。一般病床(亜急性期)や精神病床(一般・療養)でも4割以上と規定があるため、看護配置基準を満たすために、正看護師を優先的に採用しています。

この看護配置基準が設けられているのは、医師もしくは正看護師の指示がなければ准看護師は看護業務が行えないからです。一定以上の正看護師割合を満たさなければ、看護業務が滞る危険性もあります。正看護師の割合=医療や看護水準の高さにも直結するため、病院は正看護師の採用が多いのです。

また、看護師長などの管理職につくためには「正看護師の資格を所有していること」が絶対条件という職場がほとんどです。准看護師は正看護師へ業務の指示ができないため、准看と正看が混在する病院では管理職につくのが難しいといわれています。管理職を目指している人は、准看護師から正看護師へのステップアップが必要となるでしょう。

准看護師は「いずれ廃止」って本当?

准看護師は第二次世界大戦後、不足していた看護師を増やすために導入された制度でした。 女性の進学率が低かった当時、中学を卒業してすぐに養成所に入ることができ、即戦力として働ける准看護師はとても人気があったようです。

けれど時代は変わります。現在は高校卒業後、看護の専門大学に進んで正看護師を目指す人が多くなりました。准看護師を目指す人は減り、准看護師の年齢層は上がり続けています。 准看護師は給料が安く、地位向上が必要なこと。さらに今後、医療の現場では看護職に自律的な判断・行動が求められるといったこともあり、21世紀はじめから国は正看護師・准看護師を一本化する方向性を示しています。そのため将来的に准看護師制度は廃止、正看護師資格一本となる可能性があります(日本看護協会「准看護師制度の課題解決に向けた取組み」)。

ただ、准看護師制度廃止に対し、日本医師会などは強い抵抗感を示しています(日本医師会「准看護師問題について」)。

慢性的な看護師不足の中で、どこの病院も人員確保が一番の課題となっています。その状況で准看護師制度を廃止するということは、さらに輪をかけた人員不足となり、人件費が高騰。看護師が不足するため、手術数の制限や病棟の閉鎖といった問題が生じることが予想されるからです。

准看護師から正看護師になるための「4つの方法」

すでに准看護師免許を持っている人が、これから正看護師になるためにはどのような方法があるのでしょうか?それは中卒か、高卒かなど最終学歴によって道が異なります。それぞれ説明していきましょう(日本看護協会「准看護師が看護師資格を取得するには?」)。

【最終学歴が高等学校卒業の人の場合】

  • 看護短期大学、あるいは看護専修学校に2年通う

すでに准看護師の資格があり、最終学歴が高等学校卒業の人の場合は「看護系短期大学」「看護師養成所」「高等学校専攻科」のいずれかで2年学び、看護師国家試験に合格し、正看護師免許を取得することで正看護師になることができます(文部科学省「高等学校における看護教育」)。

【最終学歴が中学校卒業の人の場合】

最終学歴が中学校卒業の人の場合は「准看護師として3年以上働いている」必要があります。そのうえで看護専門学校に進学し、看護師国家試験に合格し、正看護師の免許を取得する必要があります。准看護師から正看護師になるまでの方法を大きく分けると、下記の3つになります。

  • 准看護師として3年以上働き、看護専門学校に進学(全日制2年)
  • 准看護師として3年以上働き、看護専門学校に進学(定時制3年)
  • 准看護師として7年以上働き、通信制(2年)の看護専門学校に進学

福祉医療機構「看護師」

全日制や定時制など、通学生のメリットは強制的に学びの時間を確保できるところです。一緒に学ぶ仲間ができるので支え合ったり、励ましあったりすることができるのもいいですね。また定時制の場合は週に3日程度の授業となるため、働きながら学ぶことも難しくありません。

一方、通信制は通信教材による学習のほか病院での実習、登校による授業や事例検討などをおこないます。自宅で学べるので忙しい人でも時間と場所を選ばずに勉強できますが、准看護師として7年以上の勤務経験が必要なので、経験が長い人に限られるところがネックといえるでしょう(厚生労働省「看護師等養成所の運営に関する指導ガイドラインについて」 )。

准看護師から正看護師へ活用できる「給付金・奨学金」

准看護師から正看護師へステップアップするには、いくらかかるのでしょうか? その際に利用できる給付金・奨学金はあるのでしょうか?

准看から正看になるためにいくらかかる?

准看護師から正看護師になるためには、トータルでどのくらいの学費がかかるものなのでしょう。例えば、ある看護学校の通学生を例にとってみると約120~180万、通信制の場合は約100~120万が相場とされているようです。

通学制と比較すると通信制のほうがやや学費は抑えられますが、それまでに准看護師として7年以上の経験が必要なため、それぞれメリット・デメリットはあるようです。

准看護師から正看護師になるまでには時間がかかりますが、お金もかかります。経済的なことを理由に正看護師を目指せない、という人には給付金や奨学金という制度があります。これらの制度は一定の条件を満たせば資格取得にかかる費用的負担を軽減してもらえるものです。諦めずに、積極的に活用していきましょう!(日本看護協会「准看護師が看護師資格を取得するには?」

では、准看護師から正看護師になるために利用できる、給付金と奨学金についてみていきましょう。

准看護師から正看護師になるための給付金

教育訓練給付制度

「教育訓練給付制度」は一般企業で働いている人、あるいは過去に働いたことがある人の中で、一定の条件を満たした人に給付金が支給される制度です。厚生労働大臣が認めた教育訓練講座を自費で受講したときに費用の一部として給付金が支給されます。自分が対象者となれるかどうかは各学校や自治体のハローワークなどで確認できます。

母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業など

例えばシングルマザーで正看護師の資格取得を目指している人には「自立支援教育訓練給付金」(厚生労働省「母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業の実施について」)という制度があります。これは厚生労働省が母子家庭の母、または父子家庭の父の経済的な自立を支援するためにつくられたもので各都道府県・市・福祉事務所設置町村で実施されています。こちらも対象条件がいくつかあるので、住んでいる自治体の窓口に相談してみましょう。

准看護師から正看護師になるための奨学金

看護師学校養成所2年課程(通信制)進学者に対する奨学金

2009年、日本看護協会は看護師学校養成所2年課程(通信制)への在籍を条件に、准看護師から正看護師を目指す人の支援として、無利息の貸与型奨学金制度をつくっています(日本看護協会「看護師学校養成所2年課程(通信制)進学者に対する奨学金」)。受け取れる金額は、年額36万円、あるいは48万円のどちらかを任意で選択できます。貸与終了年の翌年10月から最長4年以内が返還期限となります。

国立病院機構の奨学金

看護師育成のため、独立行政法人国立病院機構では、国立病院機構附属看護学校や看護系大学、看護専門学校に在籍する学生で、卒業後に国立病院機構の病院で働くことを条件に、奨学金が貸与されます。奨学金は通常返還義務がありますが、一定期間(奨学金貸与期間相当)働くことで免除されます(国立病院機構「奨学生募集情報について」

また、民間病院でも同様の奨学金を設けているところがあるようです。

大学の奨学金

大学にも独自の奨学金制度を設けているところがあります。例えば、金沢医科大学は推薦及び一般入学試験で特に優秀な成績をおさめた学生に対し、毎年90万円の奨学金が貸与される制度があります。

また入学試験に限らず、毎年の成績によって奨学金の付与、貸与がある大学もあるようです。

自治体の奨学金貸与

経済的理由で学ぶことが難しい場合、勉強にかかる費用の一部として奨学金を支給している自治体もあります。

例えば、神奈川県小田原市では学業成績が優良であることなどを条件に年額4万円(小田原市「平成31年度小田原市高等学校等奨学生の募集について」 )木更津市でも月1万円~5万円以内(進学先、学年によって異なる)の奨学金が貸与されます。

奨学金の額は各自治体によって異なりますので、条件をしっかり確認してみましょう。

まとめ

准看護師廃止の動きは医師会の反対によってなかなか進んでいません。ただ冒頭でご紹介したとおり、准看護師と養成学校の数が年々減っているのは事実です。

今すぐ看護師として働きたい人もいれば、働きながらステップアップしたいという人もいるでしょう。「これから、どうしたいのか」を自分に問いかけながら、じっくり検討していきましょう。