[ 記事作成日時 : 2015年9月30日 ]
[ 最終更新日 : 2020年4月3日 ]

介護医療院はどんな施設?看護師の役割、仕事内容、療養型病院の違いを詳しく解説

療養型病院の看護師

「療養型病院」廃止に向け、2018年4月から創設されたのが「介護医療院」です。変わりゆく社会構造に対応するため、医療・介護など複数の機能が統合されています。

介護医療院はこれまでの施設とは、具体的にどのように違うのでしょうか。

ここでは、介護医療院と療養型病院を比較しながらその詳細を紹介し、さらに介護医療院で求められる看護師の役割と仕事内容、注意すべき点などを解説していきます。

介護医療院とは?

介護医療院は2度にわたる介護療養病床の廃止延期を受けて誕生した、新しい介護及び医療の施設です。複数の機能を併せ持ち、超高齢化時代の課題に対応するモデルとして期待されています。創設の経緯から特徴、療養型病院との違いを見ていきます。

介護医療院の成り立ち

介護医療院ができた理由としては、介護施設と医療施設の間での問題がありました。

医療療養病床と介護療養病床の区別がはっきりとされておらず、治療の必要性の程度がばらばらに混ざり合っていたので、各患者が適切な医療を受けられていないケースなどがありました。

そのため2006年、診療報酬と介護報酬が同時に改定され、2011年をもって「介護療養病床」の廃止が一度は決定しました。

それからは、「療養病床」から「介護老人保健施設(以下、老健)」などへの転換が進められ、2008年には既存の老健では対応できない医療ニーズへの受け皿となる「介護療養型老人保健施設」も創設されました。

しかし、国の声かけにも関わらず、老健への転換はなかなか進まず、介護療養病床の廃止期限は2017年まで引き延ばされ、今現在、療養病床から老健への移行期間は2024年3月末まで猶予が設けられました。

これまでの介護療養病床の特徴として、以下のような点が挙げられます。

  • 療養生活が長期に及ぶ
  • 死亡退院が多い
  • 医療・介護の必要度が高い

上記の特徴を持つ介護療養病床から老健への転換が進まない理由として、病院から施設に転換する患者サイドの戸惑い(減床・資金面など)はもちろん、介護療養病床は看取りを視野に入れた無期限のターミナルケアであったのに対し、老健の入所は治療期間という期限付きが条件であることなどが挙げられます。

一方、施設サイドとしても、猶予期間が設けられたことで様子見をしている部分もあると考えられます。

このように、これからは医療や介護だけに着目した施設よりも、「住まい」や「看取り」まで視野に入れた多機能な施設が求められるという結論に達しました。

こういった紆余曲折を経て、さまざまな課題が解決されるよう複数の機能をもった施設系サービスである介護医療院が誕生したのです。

介護医療院の種別「Ⅰ型、Ⅱ型」

介護医療院については、介護療養病床(療養機能強化型)相当のサービスを提供するⅠ型、老健相当以上のサービスを提供するⅡ型があります(厚生労働省「介護医療院の概要」)。

Ⅰ型の概要
  • 基本的性格:要介護高齢者の⻑期療養・⽣活施設
  • 介護保険法に基づく(医療は提供するため、医療法の医療提供施設にする)
  • 主な利用者:重篤な身体疾患を有する者及び身体合併症を有する認知症高齢者
  • 施設基準:介護療養病床相当
    以下は現行の介護療養病床基準です。
    医師:48対1(3人以上)
    看護:6対1
    介護:6対1
Ⅱ型の概要
  • 基本的性格:要介護高齢者の⻑期療養・⽣活施設
  • 介護保険法に基づく(医療は提供するため、医療法の医療提供施設にする)
  • 主な利用者:1型より容態が安定している高齢者
  • 施設基準:⽼健施設相当以上
    以下は現行の⽼健施設基準です。
    医師:100対1(1人以上)
    看護・介護:3対1(うち看護2/7程度であること)

いずれのタイプも介護保険法に基づくものであるのは同じですが、利用者の状態と配置基準が異なっている点がポイントです。

面積基準はどちらも老健相当の8.0平方メートル/床以上、多床室の場合でも家具やパーテーションなどで間仕切りを行い、プライバシーに配慮することが求められます。

療養型病院とここが違う!7つのポイント

介護医療院と療養型病院の具体的な違いを確認していきます(厚生労働省「介護療養型医療施設及び介護医療院」)。

療養型との違い1:医療的サービス

療養型は基本的に病院もしくは診療所であるため、手術や放射線治療といった高位の医療行為を除き、検査や投薬・注射などに対応しています。医療的措置の必要性が高い患者を対象とするサービスを提供しており、人工呼吸器や中心静脈栄養などの医療から喀痰吸引や経管栄養を中心とする継続的な医学管理を行います。また機能訓練指導員による、リハビリテーションも実施しています。

介護医療院では治療ではなく、日常的な医学管理を主とします。点滴や喀痰吸引、血糖値の測定やインシュリンの注射といった、一般的な介護施設では難しいサービスを提供します。

療養型との違い2:介護サービス

介護医療院では、「長期の医療・介護が必要と認められる人」を対象としています。療養型でも要介護認定を受けていることが入所条件となっていますが、レクリエーションや生活支援といった意味での介護はなされません。

介護医療院では、「生活の場」における介護サービスが提供されます。具体的には食事介助・排せつ介助・入浴介助の他、レクリエーションや機能訓練、その他、散歩や買い物など日常生活上のケアも対象となります。

さらに看取りまで含めた介護ケアが、介護医療院の大きな特徴です。

療養型との違い3:人員配置・勤務形態

療養型の人員配置は以下のように定められています。

  • 医師:48対1以上
  • 看護職員:6対1以上
  • 介護職員:6対1以上
  • 理学療法士・作業療法士:適当数

介護医療院のⅠ型は療養型とほぼ同じ人員配置となります。

  • 医師:48対1(3人以上)
  • 看護:6対1
  • 介護:6対1

Ⅱ型では介護に対する人員数が厚くなります。

  • 医師:100対1(1人以上)
  • 看護・介護:対1(うち看護2/7程度であること)

勤務形態については、療養型の場合は一般的な病院勤務と同じく夜勤を含めたシフト体制が組まれます。

介護医療院においても、24時間の看取り・ターミナルケアに対応するため当直体制(夜間・休日の対応)またはオンコール体制が求められます。介護医療院の場合、介護スタッフが夜勤で対応し、医療スタッフは緊急時にオンコールで対応することも考えられます。

療養型との違い4:施設の広さ、設備

介護医療院は生活の場という点を重視しているため、療養型の1人あたり面積が6.4㎡なのに対し、8㎡以上の居室面積が基準となっています。

施設設備は病室ではなく療養室という名称となり、その他に診察室、処置室、機能訓練室、談話室、レクリエーションルーム、サービスステーションなどが必要とされています。

先にもありましたが、介護医療院ではプライバシーの確保が重視されており、視覚に加え、聴覚的に遮断する配慮が求められています。

療養型との違い5:適用する保険

病院や診療所の療養病床は医療法が適用され、「介護療養型医療施設」では介護保険法が適用されます。

介護医療院は介護保険法に基づく設置であると同時に、医療法上の医療提供施設となります。利用者の状況に合わせてケアプランが作成される同時に、医療行為については医療保険が適用されます。

療養型との違い6:利用者の介護度

療養型では医療区分により入院の可否が規定されているのに対し、介護医療院では要介護度数1~5が入所できる条件となります。

介護認定がされており、医療ケアが必要と認められる人が対象とされています。

療養型との違い7:看護師の給料

給与体系や基本給においては療養型病院と一般病院で、ほとんど差が見られません。急性期病院などと比べると夜勤の回数が少なく、残業もあまりないため時間外手当は多少低い傾向にあります。

平成29年度介護事業経営実態調査(厚生労働省「平成29年度介護事業介護事業経営実態調査 各サービス別総括表」)によると、看護師の平均月収は、44万9,007円です。

一方、介護医療院については発足からまだ年数がたっていないため、看護師の給与の明確なデータはありません。

最近の看護医療院の求人例から見ていきましょう。

兵庫県の医療法人の例
  • 月額給与:245,640円~325,290円 (※想定年収 3,500,000円~4,900,000円)
 
熊本県の医療法人の例
  • 月額給与:227,000円~272,000円
    基本給155,000円~200,000円 + 諸手当72,000円
    賞与年2回:前年基本給3.3ヶ月分

上記から推計した年収は400~490万円と、勤務先のエリアによって差はありますが看護師の平均的な年収をやや下回ると考えられます。これは、基本給の違いというよりは、夜勤回数や時間外手当などの差で生じているようです。

介護医療院は保険制度の適用からもわかるように、医療施設というよりも介護施設寄りであると見て良いでしょう。

介護医療院で看護師が求められる役割・スキル

介護医療院の看護師に求められるのは、一般の病院とは少し違う役割のようです。介護医療院で過ごす人は医療ケアを必要としていますが、治療を目的とする病院とは違い、生活の快適さが重視されます。看護師として、どのような意識が必要なのでしょうか。

役割1:医療行為と投薬管理

介護医療院でも、看護師が行う医療行為は医師の指示の範囲内であることには変わりありません。

必要に応じて吸引や呼吸器ケアなどを実施します。また寝たきりの人や車いすに座ったまま生活する人に対しての、褥瘡のケアも重要な仕事のひとつです。日常的な業務としては、入居者のバイタルチェック、投薬・服薬管理などがあります。

介護と医療、生活という総合的なサービスを提供する介護医療院では、看護師も複合的な業務が多くなります。

しかし、他の介護スタッフではできない医療分野については、責任をもって役割を果たしていく必要があります。

病院のような高度な医療処置は行いませんが、日々の生活を支える体力の維持をサポートしていきます。

役割2:衛生環境の管理

介護医療院は長期間にわたり、高齢者が生活をする場所として想定されています。施設全体の安全で快適な環境の確保も、看護師の役割です。

インフルエンザや流行性胃腸炎、その他の感染症の予防に努め、蔓延を阻止します。感染症患者が出た場合には、隔離体制を強化するなど入居者の管理を行います。

高齢者は若い人に比べて抵抗力が弱いため、衛生環境への配慮が非常に重要です。介護医療院の看護師は、年間を通した防止策を実施していく役割を担います。

役割3:生活の質を向上させるためのケア

各人の健康状態を管理するためには、食事や睡眠、入浴などについて状態観察が大切です。

精神的な落ち込みや食欲の減退などの行動に加え、顔色や皮膚などからも情報を収集します。入居者とのアセスメントを通じて要望を聞き取り、また看護計画を立案していきます。

入院生活が快適に送れているのか、どのようなケアが生活の質の向上に効果的なのか、周囲と協議しながら適切な方向を探っていきます。

役割3:急病や病状悪化の緊急対応

入居者の急変、病状の悪化など緊急時には、看護師が率先して対応しなければなりません。医師にすぐに連絡し、状態を伝えます。バイタルチェック、呼吸の乱れなど基本的な状況把握に努めます。

また地震や災害など、突発的な事態の際には他のスタッフと協力し、入居者の安全を図りながら救助や避難誘導を行います。

看護師としての知識を活かし、入居者にできるだけ無理のないよう安全な行動を促していく必要があります。

緊急時にこそ、看護師のもつ冷静な対処の力が試されます。いかに入居者の命を守るのか、日頃からの心構えが求められます。

役割4:看取りケア

生活・介護・医療は介護医療院の柱となる機能ですが、もうひとつの大きな役目が看取りケアです。

そもそも、老健や介護施設では看取りケアを行いません。

全国老人保健施設協会のホームページ(「老健施設とは」)によると、老健は介護を必要とする高齢者がゆくゆくは自立し家庭へ戻るための看護・介護ケアやサポート、リハビリをする施設とあります。つまり老健への入所目的は、家庭での自立にあるため、看取りケアはもともと想定されていないのです。

また、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの介護施設では、病気やケガなどで入所者の状態が悪化した場合は、病院へ緊急入院となります。そのため、介護施設で入所者が亡くなることがほとんどないため、特に看取りケアは行われません。

一方、介護医療院の看護師は、看取りケアまで担うことになります。そのために状態観察から変化の察知や、患者の安楽な状態を保つためのケア、家族とのコミュニケーション、エンゼルケアなどのスキルが必要となります。

介護医療院看護師には終末期を含め、残りの時間をその人らしく生活できるよう、心に寄り添ったケアが求められます。

トラブルになりがちな介護士との役割分担

介護施設では病院と違い、看護師のほかにも介護士など専門職が一緒に働いています。

そのため業務についての意見が分かれたり仕事上の分担がうまくいかなかったりというトラブルを抱える現場は少なくありません。それぞれの資格をもった専門スタッフとして、プライドがぶつかり合うこともあるでしょう。

こうした事態は、役割分担や業務の線引きがあいまいによることから生じるものが多く見られます。

看護師と介護士とが衝突しがちな役割分担には以下のようなものが挙げられます。

  • おむつ交換
  • トイレ介助
  • 食事介助
  • 送迎業務
  • 清掃業務
  • 記録業務

看護師と介護スタッフが協働する介護医療院でも、同様のトラブルが起こることが予測されます。

特にこれまで病院で働いてきた看護師が、介護医療院を職場とするときには「看護」と「介護」についての考え方を見直す必要があります。

治療を目的とする病院とは違い、医療・介護・生活が混在する介護医療院では、これまで行ってきた看護業務に加え、「福祉」を意識しなければなりません。

バイタルチェックや服薬管理、日々の体調管理といった看護師本来の仕事以上の業務も期待されることが考えられます。介護士を始め、他の専門スタッフとの相互協力が、入居者の快適な生活を維持するためには不可欠です。

対立や衝突はお互いの業務をこなす上では障害にしかなりません。

円滑に仕事を進めていくためにも、人間関係を良好に保つ努力をしていきましょう。

トラブルが起こったときの改善方法としては、以下のようなものがあげられます。

  • 何か問題なのかをはっきりさせる
  • お互いの要望を伝えあう
  • 第三者(上司・管理者など)を間に立てる
  • 今後に向けて業務の担当に関して明確に取り決める(どのようなとき・どこまで)
  • お互いの仕事を理解するための時間を設ける(定期的なコミュニケーションの場)

「看護」と「介護」それぞれの分野のエキスパートが、お互いに尊重し合い、理解し合うことで介護医療院の機能が十分に発揮されます。

そのためには、他職種との連携こそがスムーズな運営のカギとなることを意識し、役割分担についてお互いの納得が得られるようコミュニケーションをとっていく必要があります。

自分の仕事に責任とプライドをもつことは大切ですが、相手にも同様の配慮を欠かさない姿勢が求められます。

多角的な機能をもつ介護医療院では、看護師もすべての機能に関わる一員として、スタッフ同士の連携強化に努めていく意識が大切です。

まとめ

介護医療院は今後の日本社会の課題改善を担う、新しい施設として創設されました。新設されるだけではなく、療養病床からの転換も増えてきています。

介護医療院に転職する際には、運営状況を良く調べ、人員配置が十分であることを確認します。運営側の実績や経験といった点も、要チェックです。

給与や待遇は、エリアによって異なります。周辺病院の看護師の給与水準と比較するなど、条件で不利な点がないかを確認しておくと良いでしょう。

新しい施設形態だけに、個人ではなかなかわかりにくい部分も多々あります。

そうした場合には内情を把握できる、転職エージェントに相談をしてみるのがおすすめです。制度的な面も含めた情報提供と、手厚いサポートが期待できます。