新人指導の悩みと乗り越え方は?先輩看護師のプリセプター体験に学ぶ
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プリセプターが怖い!などプリセプターとの人間関係に悩む新人看護師の話を耳にすることがよくありますが、実は先輩であるプリセプターもプリセプティである新人の教育に悩んでいることが少なくありません。
自分自身も成長途中でありながら後輩の指導をしなくてはならず、試行錯誤の連続で疲れ切っている人もいるようです。どうしたらうまく新人指導ができるようになるのでしょうか?
プリセプター制度の目的から良好な関係を保ちつつ指導をするポイントを紹介します。
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この記事に書いてあること
プリセプターは新人看護師よりつらくて過酷
プリセプティ時代にはわからなかったけど、新人を指導する立場になって初めて知った、教育する方の大変さ。中には新人時代よりプリセプター時代の方がつらかった!と答える看護師もいるほど、大変さを感じている人もいるようです。まずは先輩看護師の体験談から聞いてみましょう。
新人のミスは全てプリセプターの責任に
私の病院の看護師の教育期間というのは3年間と決まっており、1年目は新人教育と看護観の提出。そして2年目は看護研究の参加。そして3年目になるとプリセプターをして新人を教育するということが義務付けられていました。
1年目はただただついていくのが精いっぱい。そして2年目になるとようやく周りが見えてきて、少しついていけるようになった段階。そして3年目になると責任のある仕事を任されるように。
プリセプターについたのはいいけれど、自分も看護師としてまだまだだと感じているし、指導をできる立場になんてないと感じていました。また、何か新人がミスをするたびにすべて私の責任に。私は私なりに精いっぱい指導を行っていました。
しかしそんな過程は認められず、ただ結果を見て注意される、きちんとできていないと言われるのは、とても悔しかったです。そのため、私は看護師になって3年目が一番苦しかったですね。
先輩とプリセプティの板ばさみに
プリセプターになるまでは仲良く楽しくやっていければいいな、しっかりコミュニケーションをとっていきたいなと思っていました。細かいところまでていねいに、自分が知っていることは自分が新人のときにやってもらったように教えてあげたいと思ってもいました。
しかし実際はコミュニケーションが難しく、勤務時間内に自分の仕事もこなしつつ新人のことも考えるのがなかなか大変でした。新人も初めてだから緊張しているだろうし、こちらも初めてのメインプリセプターだし。
どう説明すればちゃんと伝わるかも考えたし、何より板ばさみにときどきなることに悩みました。自分より上の先輩ナースから自分のプリセプティのことを言われてそれをまた本人に伝えるとき、どうしたら傷つかずに伝えられるかなどです。細かくいろいろ指導してあげたいけど現実は時間もないし難しいし自分に余裕もなくて大変でした。
プリセプター制度と役割
プリセプター制度について簡単におさらいしてみましょう。
プリセプター制度とは
プリセプター制度は、師長などの上司に代わって、2~4年以上の経験を積んだ先輩看護師(プリセプター)がマンツーマンで一定期間、新人看護師(プリセプティ)を指導する教育手法です。新人看護師が自ら主体性をもって学習できるように先輩看護師が関わるという理念の基、リアリティーショックの緩和と職場への適応、離職の防止を促進するための仕組みとしてはじまり、プリセプター自身も指導を通して自分の知識や成長を確認する機会とされ医療機関に定着してきました。
しかし、日本でのはじまりは1980年代と歴史も浅く、定義や指導法については医療機関によってさまざまです。そのため、プリセプターへの負担の大きさも注目されています。
出典:『新任プリセプターの新人看護師指導における困難および困難を乗り越えるための行動と求める支援』
プリセプターの役割は「やって見せて、やらせてみる」
『プリセプターシッププログラムの現状分析』の研究結果では、プリセプターシップを導入している医療機関にプリセプターの役割とは?を聞いています。一番多く回答が集まったのは「看護実践者としてのモデル」というものでした。具体的には、基本的看護スキルを見せて、経験する機会を与えるという作業になります。
次いで回答が多かったのが、コンサルタント・相談役で、新人の相談にのり自立に向けて支援する、という項目でした。他にも新人の目標設定の把握、新人の評価、現場適応の促進、社会人・看護師としての態度の指導といったことを役割と考えているようです。そこでプリセプターたちの思いを調査、どのようなことを経験し、思っているのか現場の声を集めてみました。
ありえない新人!こんなプリセプティどう思う?
2018年にココナスが独自でプリセプターを対象に意識調査をした結果、プリセプターが抱える悩みが浮かび上がってきました。どんなことに悩み、困っているのでしょうか。
社会人としてのマナーを知らない
プリセプターを4年やりましたが、プリセプティが社会人としての振る舞いができていないので困りました。プリセプターになるまではただ仕事内容を教えればいいと思っていました。
しかし実際には、社会人としての態度からの指導でした。挨拶やメモを取ることから教えないとできないし、新人によって受けとり方が違うので指導方法を変える必要があり、毎年同じやり方ではいけないため悩みました。また、業務を教えることだけではなく、精神的な支えにもならないといけないので、指導しながら信頼関係を築くことにも苦労しました。
考えずにわかりません。そして平気でうそをつく
考える前にわかりませんと言われます。やったことのない手技をひとりでやれとは言いませんが、病棟にある看護技術の書いてあるファイルを見直したり、書いてあるものを自分で準備してわからないことを聞いたりするわけでもなく、最初からわかりませんと言われるとやる気がないのかなと感じます。
2つ目はうそをつくことです。「確認した?」と聞いたときに、「しました」と言ったり、「患者さんがこう言ってました」と平気でうそをついたりしたときは、自分が怒られたくないからうそをつくという考えに、イラっとします。研修医やリハビリの先生とはニコニコ話をしているのに、「この手技見学する?」と声をかけるた時にむすっとした顔で返事をされると、合コンしに来てるんじゃなくて仕事してるんだよ!と怒りたくなります。
あいまいなまま仕事をする
知らないことわからないことを、そのままあやふやにして仕事を行うプリセプティに困っています。一番危ないことだと思うので。新人は特に、わからないことが何かがわからない人も多いのですが、細かく確認することは大切です。
患者さんを大切にしないプリセプティもいました。看護師になったばかりで経験も浅いのに、患者にため口、果てには怒鳴り散らす新人を見たこともあります。悪い先輩の例を見てそうなってしまったのかもしれませんが、謙虚さを忘れてはいけません。患者さんは自分のイライラをぶつける対象ではないのです。
理解したふり!期限を守らない!
社会人としての基礎ができること、約束を守る、時間厳守、挨拶をする、それさえできない人が最近は多いため、看護技術の前に人としての礼儀を考えて行動できるように指導しています。
一番困っていることは、理解していないのにわかったような言動や態度をとる人です。全然自分のためにならないのに、報告や相談をまったくせずに患者さんのもとに処置をしに行ったりしています。本当にひとりでできるのか、何しに行くんだろうか、大丈夫なのか、とすごく心配しています。
提出期限を守れない人にも困っています。 社会人として決められたことはきちんとやってほしいです。できなかったら、できたところまででもよいのですから相談してほしいです。
新人教育の困難をこうして乗り越えました!
新人指導に悩みつつも困難を克服したというプリセプターもいます。どんなことに意識し、どんな指導をしたのでしょうか。
言うべきことはしっかり言う
人に何かを教えること、伝えることが簡単なことではないとプリセプターを経験して思いました。怒ってばっかりや厳しいばかりは自分もイヤだったので、優しいばかりで「いいよ」「大丈夫だよ」とあまり怒らず育てていました。しかし、すべてを許すことは、新人看護師にとってはよいことではなく、指導にはならないことに気づき、言うべきことはしっかり言わないといけないんだと気持ちの変化がありました。
覚悟を決めて指導にあたった
最初の頃は、新人看護師からは一番怖い人と思われていました。でも、何か間違ったことをしたときは一緒に頭を下げに行ったり、新人のインシデントレポートを一緒に振り返ったり、時系列を追って付箋でどううすべきだったかを書き加えるなど、一緒に成長する努力を続けたところ、プリセプティの子たちの態度が変わってきました。
自分たちから疑問を聞いてきたり、「昨日わからなかったことを調べたのでレポート見てください」と言ってくれたり、1年目が終わる頃には良好な関係を築くことができました。
プリセプティに主体性をもたせた
まず初めの面接で自分の夢を話してもらい、それをキャリアプランにつなげられるように支援しました。新人には自分の言葉で話してもらうことを心がけ、それによって主体性をもたせようと思いました。なりたい自分になるために、今後はこのペースで学習していこう、知識を付けていこう、という具体的な話にもっていくように心がけています。
一番大切なことは、新人がなりたい自分をしっかりイメージできるように支援することだと思っています。プリセプティ自身はなりたい自分を明確に想像すること、そしてそれを相談できる人に伝えることが必要です。
新人指導に取り入れた私なりの方法
新人指導の経験をもつプリセプターが取り入れたさまざま方法を紹介します。
コミュニケーションをとる
コミュニケーションをしっかりとる。何度か失敗することくらいなら自分も新人の頃にたくさんしているので、すぐには怒らないように優しい声かけをするようにしています。知識面は根拠を明確にしながら指導するようにしています。
人格否定はしない
人格を否定するような指導はしない。指導するときは周りに同期などがいない場所でする。注意が必要なときはその場で注意する。
間違いはきちんと指摘
間違えていることはきちんと指摘をします。どこがどう間違えているのか、具体的にわかりやすく伝えるようにしています。また指摘するタイミングもある程度時間が確保できるときに、きちんと内省できる場所も確保できるようにしています。
過去の自分を思い出す
自分の新人の頃を思い出して、自分が何に迷って、困っていたのかを考えて指導をするようにしていました。他にも食事に一緒に行くとか、すごく仲良くできたかといわれるとそうではないかもしれませんが、ある一定の距離を保って、良い関係は築けたのではないかと考えています。
プリセプターの経験で、私が得たこととは
教えることが多いプリセプターという立場ですが、実は教えることで、学びを得たという看護師がたくさんいました。新人指導から、どんなことを学び、何を思ったのでしょうか。
人を育むためには真心が必要
自分では理解したと思っていたことが、自分の伝え方ではなかなか新人に伝わらず、また、先輩たちからも今年の新人は全然成長しないとプリセプターである私たちが怒られ、ひどく落ち込みました。他のプリセプターもあまり真剣には指導しておらず、プリセプターのリーダーをしていた私は、指導計画書から技術チェックをひとりでこなしていたので、本当に大変でした。
でも、そんな自分の姿を年配の先輩看護師たちが見ていてくれました。かわいがってもらえることが増え、自分の働きやすい環境が整うようになりました。そうしているうちに、新人たちにも思いが伝わるようになり、時間はかかりましたが命を預かっているという責任を少しずつ認識し、真面目に勉強に取り組むようになりました。そして最後には頼れる後輩に育ってくれました。成長してくれるまでに時間はかかるけど、人と向き合うときは真心こめて接していけば必ず伝わるんだなと思いました。自分自身の人間性も変化したなと思っています。
責任感とプライド
自分が手本にならなければいけないのでいつも見られていることを意識して、患者さんとの接し方や仕事をていねいにするようになりました。自分がしっかり理解しないと教えられないため今まで以上に勉強をしました
自分の看護とは、をよく振り返るようになった。あれで良かったのか、あの対応で良かったのか、知識や技術はもちろん、看護師としての自分の考える看護とは…と考える機会が増えました
人に指導をするとか、後輩に教えるとかいうことはあまりなかったが、プリセプターをしてみて自分も一緒に勉強しなければ人に教えることはできないということがわかり、あらためて初心にかえり看護の知識や技術、一社会人としてのあり方などを勉強することができました。
自分の振る舞いを客観的に見るようになった。自分のしていることが正しいのか、手本になっているのかと日々反省していました。
プリセプターになる前は、自分のことだけがんばれば良かった。でもプリセプターは違う。育てながら自分も勉強していかないといけない。自分もわからないところは一緒に勉強した。知識や技術を伝えるのはまだ簡単で「看護とは」を伝えていくことがもっとも大変だと思いました。
つらくて過酷なプリセプター時代。人に指導をするということはとても難しいことです。指導を通して自分自身の看護知識やスキルの確認、社会人としての振る舞い、看護とはという根本を考える時間でもあるようです。
※アンケートはすべて2018年「ココナス調べ」
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