[ 記事作成日時 : 2018年10月15日 ]
[ 最終更新日 : 2020年2月6日 ]

「ごろねのくに」は看護師の新たな活躍の場!子育てをしながらでも働ける

ごろねの国

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錢谷聖子(ぜにたに・さとこ)さん

一般社団法人うちナース理事長。理学修士(細胞生物学)、公共健康医学修士(医療コミュニケーション学)。抗がん剤の研究開発、奈良県の救急医療制度改革担当、国立がん研究センター中央病院における希少がん対策担当などを経て、2015年に「一般社団法人うちナース」を創設。自身も2人の子どもを育てながら、仕事も育児も楽しめる環境を作るために尽力している。

      
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子育て中は看護師として復職するのは難しい?

2017年に公益社団法人日本看護協会がおこなった「2017年 病院看護実態調査」によると、正規雇用の看護職員の離職率は10.9%(推定10万人近く)という結果が出ています。その離職理由の大半は、「妊娠・出産」「子育て」といったライフイベントによるもの。

人の命を預かる看護師。わが子が体調を崩し、保育園や幼稚園からの呼び出されることもあるうちは、復職することが難しいというのは至極当然といえば、当然のこと。

こうした状況のなか、産休明けや育休明け後も以前のように働くのは難しく、職場復帰を断念せざるを得ない看護師も非常に多いようです。

しかし、医療に対する知見やスキルのある看護師たちが、子育てを理由にそれを活かせない環境に疑問をいただいた方がいます。その方の名前は、錢谷聖子(ぜにたに・さとこ)さん。

救急医療やがん医療の政策関係に携わりながら子育てをしてきた彼女は今、東京都墨田区にカフェ「ごろねのくに」を作り、子育てを理由に臨床現場を離れている看護師や助産士、保育士の方とともに働いています。

「高いスキルと専門知識を持った看護師が、子育てをしながらでも安心して働ける場を作りたかった」と語る錢谷さん。今回は錢谷さんと「ごろねのくに」で働く看護師の方にお話を伺いました。

子育て中の看護師が活躍する「ごろねのくに」

ごろねのくに

ーー「ごろねのくに」では、妊娠・出産を機に臨床現場を離れている看護師さんが中心となって働いていると伺いました。

錢谷さん:はい。働いているスタッフ6名のうち、4名が看護師です。彼女たちには10:00~15:00までの間で、「10:00~13:00」「12:00~15:00」どちらかのシフトで働いてもらっています。

ーー「ごろねのくに」を設立したきっかけを教えてください。

錢谷さん:現役でバリバリ活躍していた多くの看護師が、結婚や出産を機に現場を離れてしまうことに、以前からもどかしさを感じていました。

というのも看護師は責任の大きい仕事なので、育児との両立が難しい職業なんです。さらに、一度現場を離れてしまうと、看護師という仕事は敷居が高くなってしまうというか……。

「みんなについていけるのか」「スタッフに受け入れてもらえるのか」「子どを優先できるのか」といった不安から、結局、職場復帰を諦めてしまう看護師が非常に多いんです。

ーー国家試験も取って、現場で一生懸命頑張ってきた経験も能力もある人たちが、出産を理由に看護師を辞めてしまうのはもったいないですね……。

錢谷さん:本当にそう思います。乳幼児の時期は、熱を出したり、感染症にかかったりするのは日常茶飯事。保育園や幼稚園から、毎日のように体調不良でお迎えを要請する連絡が入るため、誰かに勤務を代わってもらってお迎えに行かなければなりません。子育てと家事の両方をこなしつつ看護師として働くというのは、想像以上に大変なことなんです。

ーー看護師が子育てしながら働くとなると現場の協力と理解を得ることが重要になるんですね。

看護師Cさん:仕事に穴を開けてしまう周囲への申し訳なさや、仕事とを両立できない自分への悔しさからストレスが溜まって、精神的に疲れきってしまうんです。

自分の実家の近くに住んでいて、両親に子どもを預けて面倒を見てもらえる環境にあれば一番良いのですが、なかなかそうもいきません。ましてや、病院にわが子を連れて行くなんてできるはずもありませんから。

「ごろねのくに」で働く看護師のメイン業務は育児に悩むママたちに寄り添うこと

育児中のママ

ーー子育てをしながらでも、看護師の方々が活躍できる場として考えたのが「ごろねのくに」だったワケですね。

錢谷さん:はい。「ごろねのくに」で働く看護師は、全員子どもがいて、ご自身のお子さんと一緒に出勤していただいています。私も子育てをしながら仕事を続けていて、子どもを職場に連れて行けたらどんなに楽だろうかと思っていましたから。

だから、退職したママ看護師が安心して働ける、新しい働き方の提案ができる環境を作りたいと、ずっと考えていたんです。そこで、高いスキルと専門知識を持った看護師や助産師、保育士が、子育てをしながら安心して働ける場の一つとして「ごろねのくに」を設立しました。もちろん、病院で働きながら育児を両立できることには越したことはないのですが……。

ーーしかし、現実問題それは難しい。ならせめて、育児と両立できる範囲で看護師としてのスキルや知見を活かせる環境を、というわけですね。なるほど。「ごろねのくに」は、子育て中の看護師が、自分の子どもをそばで見守りながら安心して働ける環境なんですね。

錢谷さん:はい、それを目指しています。あと、よく誤解されてしまうのですが、「ごろねのくに」は具合の悪いお子さんのケアをする場所ではありません。

医療機関ではないので、あくまで、カフェにいらっしゃるお子さんに危険がないよう看護師が側で見守ったり、育児に悩む方に看護師としてアドバイスする場というスタンスで運営しています。だから、ここで働いている看護師の業務は、病院やクリニックとは全く違っています。

ーー「ごろねのくに」で働く看護師の仕事は、病院で働く看護師の仕事と主にどういった点が違うんでしょうか?

看護師Cさん:大きく違うのは、診察や治療をするのではなく、育児に悩むママのお悩みに寄り添うことが業務の中心となっていることですね。

「ごろねのくに」を利用してくださるお客様の多くは、育児や子育てについて相談できる人が身近にいない、といった悩みを抱えているんです。

ーー実際に医療に従事するというよりは、知見を活かしたアドバイスを行うということですね。

子どもが好きな看護師であることが最大の条件

ごろねのくに外観

ーー「ごろねのくに」を利用している方からは、どのような相談を受けることが多いんですか?

看護師Cさん:子どもの年齢にもよるのですが、一番多いのが授乳や離乳食についての相談です。「ここ最近、急に離乳食を食べなくなってしまった」「ご飯を食べながら遊んでしまい食事が全然進まず困っています。何かいいアドバイスはありますか?」というもの。

離乳食を食べないのには、離乳食の時期が早すぎたり、母乳やミルクでお腹がいっぱいになっているなど、さまざまな理由があります。食事環境の見直しや離乳食の調理方法を変える提案など、ママとしての経験を踏まえたアドバイスをおこなえるのも、ごろねのくにだからこそできることです。

さらに、自我が芽生え始める1〜2歳になると、「保育園や近所のお友達とうまく遊べないので心配」「保育園とママ友たちとの関わりがうまくいかず、子供にしわ寄せがいっていないか不安」といった子供の社会性についての相談を受けることが多くあります。

ーー「ごろねのくに」では子育てに悩むママの心のケアも重要な役割のひとつなんですね。

看護師Cさん:そうですね。ネットの情報に惑わされて「どの情報を信じればいいのかわからない」と1人で悩みを抱え込み、心が不安定になってしまうこともあるんです。

わざわざ病院に行くほどではないけれど、「食欲がない」「授乳がうまくできない」などちょっと気になることも、看護師のいるごろねのくにでいつでも気軽にご相談いただけます。

「子どもの腕に赤いブツブツができた」という相談を受けたときには、看護師がその場で症状を聞いてアドバイスをすることもあるんです。診断はできないので、あくまで、受診を急ぐ必要があるか、何科を受診したらよいかといったアドバイスですが。

ーー看護師としての専門知識を活かして悩みを解決するだけではなくて、子育て中のママだからこそできるアドバイスもたくさんあるんですね。

看護師Cさん:ここで働いている看護師は、小児科や産婦人科、呼吸器科など専門がそれぞれ違うんですよ。利用者から自分の専門外の相談を受けたら、スタッフ専用のLINEを通じて「こういう場合はこうした方がいいよ」という具合に知見のあるスタッフさんに教えてもらうようにしています。なので、いつ来ていただいても、看護師経験で得た確かな知識や医学的な根拠を元に正確なアドバイスができます

それから、ベビーマッサージの資格を持つ助産師や看護師も在籍しているんですよ。ママや妊娠中の方を招いて、お子さんの寝つきを良くする正しいマッサージのやり方をレクチャーするイベントも定期的に開催しています。

ーー「ごろねのくに」で働く上で、どんな臨床経験が活かされていると思いますか? 適している経歴などはあるのでしょうか?

看護師Cさん:経験してきた科は、ほとんど関係ありませんね。それよりも一番大切なのは、子どもが好きなことです。

ーーでは、どういった方にお客さんとして足を運んでもらいたいですか?

看護師Cさん:子育てに悩む方にはもちろんですが、どんな方にでも来ていただきたいですね。これは看護師自身も気づいていないケースが多いのですが、看護師というのは「傾聴」「共感」「受容」というコミュニケーションスキルを身に着けている、数少ない職種です。現場で働いているうちに徹底的にトレーニングされた、言わばコミュニケーションのプロでもありますから、家庭での愚痴やお仕事の悩みなど何でも気軽にご相談いただけますよ。

ーー「ごろねのくに」は、子育て中の看護師が子どもと一緒に働ける場であると同時に、相談できる人が身近にいないママにとって心強い存在でもあるんですね。

看護師Cさん:そうであり続けたいと思っています。看護師というと、病院で働いているというイメージが強いかもしれませんが、何もそれだけじゃないんですよ。私たちのようにカフェで働いたり、リゾート地や山の診療所などに勤務したりしている看護師もたくさんいます。

ーー看護師さんのキャリアも多様化してきているのですね。最近は、若い看護師さんの離職率も高いと聞きます。病院勤めが合わないなら、環境を変えてみるというのも手なのかもしれません。本日は貴重なお話をありがとうございました。

まとめ

「職場に迷惑がかかるかもしれない」「子育てしながらだと、これまで通りフルタイムで働くのは難しい」と職場復帰を躊躇してしまう看護師はたくさんいます。「ごろねのくに」は、看護師としてのスキルと子育て経験を活かせる、子育て中の看護師の新たな活躍の場なのです。

 

ごろねのくに

住所:東京都墨田区太平3−7−3 メゾン向後101

電話番号:03-6876-7146

営業時間:7:30〜18:00(モーニング 7:30〜10:00、ラストオーダー17:30)

定休日:水曜・祝日(月曜祝日の場合は月・火・水休み)

公式HP:https://www.gorone-kingdom.jp/

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