看護師の派遣は違法?禁止されていた理由と働き方のメリット・デメリット
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看護師の新しい働き方として「派遣」という方法があります。しかし、看護師の派遣は違法であるという説も聞かれますが、実際はどうなのでしょうか。
派遣看護師の求人は普通によく見られますが、応募して働くと違法行為となるのかが気になります。
ここでは看護師の派遣についての基礎知識や仕組み、そのメリット・デメリットについて解説していきます。
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この記事に書いてあること
看護師の派遣は禁止されていない!
看護師の派遣は違法ではない!
労働者派遣法の正式名称は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」です。
ここには派遣で働く人の権利を守るための派遣会社や派遣先企業に対するルールが定められています。
この法律の中では、医師や看護師など医療関連業務にたずさわる労働者の派遣は「原則禁止」とされていました。しかし、看護師の派遣の仕事が、求人情報サイトなどでも多数紹介されています。
派遣の制度が整備され始めた当初は、条件を問わず医療関連業務への派遣が全面的に禁止されていましたが、2000年の改正をもって一部が解禁となりました。
現在でも港湾運送業務、建設業務、警備業法など派遣禁止の職種がありますが、医療関連業務にたずさわる労働者の派遣については、一定の条件下で認められています。
なぜ看護師の派遣は禁止されていたの?
現在医療は医師を中心に看護師・薬剤師・各種技師などの専門職によるチームで行われており、適正な医療を提供するためにはチームがお互いの能力や治療方針を把握していることが求められます。
しかし、短期的に派遣される看護師については、こうした業務遂行への役割が不完全になる可能性があります。
人の命に関わる医療の質を落とさないということを最優先に考え、医療従事者の派遣には制限が置かれています。
病院や診療所などへの看護師の派遣が広く認められていないのには、そうした理由が背景にあります。
派遣で働く看護師のメリットは?
最近は働き方にも多様性が求められるようになり、あえて派遣で働きたいという看護師も増えてきているようです。派遣で働くメリット・デメリットを見ていきましょう。
- 時給が高い
- 希望条件で職場を変えられる
- 人間関係の悩みが少ない
- 多様な経験ができる
時給が高い
派遣看護師は働くエリアや勤務先の業種の違いはあっても、基本的に時給が高いというメリットがあります。
月給に換算すると正職員と変わらず、場合によっては上回ることもあります。正職員の看護師と違い、夜勤がない日勤のみの仕事でも30万円以上の給与を得られる可能性があります。
また時給が高いため、時間外勤務が発生した場合にでも、それに見合った残業手当が付加されます。
社会の現状を見ると、今後も介護施設は増加し続けると思われます。それに伴って派遣看護師の需要が上昇すれば、時給がさらに高騰することも予測されます。
希望条件で職場を変えられる
派遣は自分の希望条件から職場を選ぶことができます。もちろん通常の看護師の仕事でも選択の幅はありますが、一度職場に入ればほかのスタッフの兼ね合いもあり、シフトなどの融通は利かなくなります。
派遣の仕事であれば、「日勤のみ」「午前のみ」「午後のみ」「夜勤のみ」「週〇日」「土日祝休み」など、自分のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方も可能となります。
趣味などを優先させるために夜勤専従で働いたり、家事や育児との両立のために短時間で働いたりすることも可能です。
派遣会社によっては福利厚生サービスを充実させているところもあり、また条件を満たしていれば正職員と同様に有給休暇を取得できます。
人間関係の悩みが少ない
看護師の転職理由の第一に挙げられるのが、病院内の人間関係です。上司や同僚、患者など、看護師を取り巻く人間関係に悩まされることも多いですが、正職員は多少の我慢は当たり前とされてしまいます。
しかし、派遣のスタッフとして職場に入った場合、派遣会社が入ることで緩衝材の役割を果たします。
万が一、業務上で不都合なことがあっても、派遣会社に相談して交渉してもらえるため、本人にかかる負担は最小限で済みます。
元より、派遣看護師は有期雇用で働くため、期間が満了すれば自動的にその職場を離脱することができます。良い意味で「外の人」であるがために、人間関係に煩わされずに済むというメリットがあります。
多様な経験ができる
派遣で働くということは、ひとつの職場にとらわれないということでもあります。同じ看護師の仕事でも職場が変わればそれぞれです。
いろいろな職場に勤めることで、多彩な業務内容に従事し、経験を積むことができます。
施設の規模や、勤めたい業態も自分から選べるので、常に新たな体験を求めながら働くことも可能です。
派遣で働く看護師のデメリットは?
- 昇給昇格やボーナスががない
- 正職員と同じ福利厚生は使えない
- 研修制度がない
- 安定性に欠ける
昇給昇格やボーナスがない
派遣看護師の所属は派遣会社であって、病院やその他の施設ではありません。
継続的に働き続けるわけではないため、評価制度の対象とならず、どれほど頑張っても昇格も昇給もありません。
特に派遣期間中の3年のうちに時給が上がるということは、ほとんど例がなく、そういう意味ではモチベーションを保つ要素がないといえるかもしれません。
また高額の時給から月々の給与は多くても、賞与・ボーナスは出ないのが普通です。正職員と比較して自由度が高いのと引き換えに、得ることができないものもあります。
正職員と同じ福利厚生は使えない
正規雇用と非正規雇用の差は、福利厚生の厚さにあります。
派遣看護師は派遣会社が提供する福利厚生サービスを受けられることがあっても、施設が提供する正規職員のための福利厚生では対象外です。
交通費の支給、住宅手当、資格取得支援、退職金制度など、正職員にあって当たり前の制度は、派遣看護師にはありません。
自由性とともに、自己責任の部分が多いのも派遣看護師の生き方といえるかもしれません。
研修制度がない
派遣看護師はスキルアップについても、自分自身で行う必要があります。病院が提供する研修や教育体制は、派遣看護師が対象とされることはありません。
医療の新技術や介護制度についての学習をしたいのであれば、自分でそうした場を探すしかありません。
派遣の仕事は常に即戦力として求められるものです。新人看護師に対するプリセプター制度は、派遣看護師の場合には期待できないと考えておいた方が良さそうです。
安定性に欠ける
派遣看護師のもっとも大きなデメリットは、雇用の安定性がないということです。自分が気に入って働いていても、必ずしも契約更新できるわけではありません。
派遣先の都合によっては契約満了を待たずに、契約が解除される場合もあります。
今の日本では看護師が働く場所に困ることはありませんが、正職員と比較すると、不安定であるのは間違いありません。
年齢を重ねると、さらに雇用や将来性についての不安を感じる人が多くなるようです。
看護師が派遣で働ける条件とは?
現在の労働者派遣法では、医療関連業務について以下のように定められています。
【病院・診療所等における医療関連業務の禁止】
医師、歯科医師、薬剤師の調剤、保健婦、助産婦、看護師・准看護師、栄養士等の業務
ただし、以下の場合は可能である。
(1)紹介予定派遣
(2)病院・診療所等(介護老人保健施設または医療を受ける者の居宅において行われるものを含む)以外の施設。(社会福祉施設等)で行われる業務。
(3)産前産後休業・育児休業・介護休業中の労働者の代替業務。
(4)就業の場所がへき地・離島の病院等及び地域医療の確保のため都道府県(医療対策協議会)が必要と認めた病院等における医師の業務。
このうち看護師に関係する(1)~(3)を順番に詳細を説明していきましょう。
(1)紹介予定派遣
紹介予定派遣とは一定期間を派遣社員として働いた後で、正社員として雇用されることを前提とする契約です。
一般的な職種の派遣でもよく見られる形ですが、職場と労働者の相性は実際に業務をこなしてみないとわからないものです。
看護師の側とすれば、病院の雰囲気や業務内容を詳しく知った上で、本採用に移行されるという利点があります。
病院側でも求めるスキルに一致する看護師かどうかが事前にわかるため、雇用後にミスマッチが発覚する恐れが少なくなります。
紹介派遣であっても正社員としての雇用について双方の合意が得られない場合には、派遣期間の満了をもって契約が終了となる可能性があります。
(2)医療施設以外での仕事
病院・診療所などの医療施設以外であれば、看護師の派遣が認められます。
看護師が派遣で働ける場所としては有料老人ホーム、特別養護老人ホーム、デイサービス、健診センター、保育園、また保護施設や児童福祉施設、障害者施設などの社会福祉施設があります。
ただし介護老人保健施設や居宅において医療を受けているというケースでは、派遣が認められていません。
派遣が許可されているものとして、医療行為がメインの業務となっているかどうかが目安となります。
派遣会社が扱う看護師の派遣先には特別養護老人ホームや有料老人ホーム、デイサービスなどが多く見られますが、そのほかにも検診車や献血ルームなどの仕事があります。
(3)産休・育休・介護休業の代替業務
未だに男女不均衡な看護師業界では、女性のライフステージに伴う人員の不足が最大の課題となっています。
一生同じ職場で働き続けたいと願う看護師がいる一方で、派遣という働き方を希望する看護師もいます。
出産、子育てや介護といった休業を余儀なくされる看護師がスムーズに職場復帰できるよう、そうした期間の欠員の代替要員として看護師の派遣が認められています。
看護師派遣の基本的な仕組み
看護師が雇用されるのは、一般的には病院などの医療関連施設ですが、派遣は雇用しているところと働く場所が異なるという特徴があります。
看護師の派遣の仕組みを見ていきましょう。
雇用契約は派遣会社と結ぶ
派遣で働く看護師は、勤務先ではなく派遣会社と雇用契約を結びます。そのため給与が支給されるのも派遣会社からということになります。
一般的な派遣では病院での労働契約期間が継続しているうちは、派遣会社の社員の扱いとなり、契約満了を迎えるとどこにも所属していない状態になります。
派遣会社に登録はしていても仕事をしていない「待機」の間は、社員扱いとはならず、当然収入の保障がありません。
看護師の場合には派遣の求人も多いため、次の仕事が見つからないというのは考えにくいですが、派遣先が決まらないうちは雇用契約が結ばれないというのを知っておく必要があります。
看護師の派遣は有期雇用
労働者派遣法に定められている派遣期間は、看護師に限らず最長でも3年です。この最長期間を過ぎた翌日を、抵触日と呼びます。
例えば、派遣期間が3年を迎えるのが3月31日であれば、抵触日は4月1日となり、この日から同じ勤務先での労働が原則的にはできなくなります。
抵触日が設けられていることにより、派遣労働者に不利になるように感じられます。
しかし抵触日は雇用側に対し「派遣社員を正規社員の代替としてはならない」ということを明確に打ち出しています。
抵触日の設定は身分だけを非正規雇用の派遣社員としながら、長期間にわたって労働者をつなぎ止めるのを禁止する保護の観点によるものです。
期間を置いてリセットすれば復帰も可能
看護師が派遣された施設で再度働くことが永久にできないのかというと、そうではありません。
「3か月+1日以上」の空白期間を置くことで、抵触日は一度リセットされた状態となり、また3年間の業務が可能となります。
本人と派遣先が望めば、3か月間短期で別の職場の仕事をし、また元の施設で仕事をすることができます。
基本的には3年間以上の同じ職場への派遣は禁止されていますが、必ずしも長期に働くことができないというわけではないようです。
日雇い派遣と単発派遣は違う!
労働者派遣法の改正により、雇用期間が30日以内の日雇い派遣は原則禁止とされています。その責任の所在が不明確になりやすく、トラブルがあった際に労働者が守られないという恐れによるものです。
派遣先での仕事が1~2日単位の単発案件であっても派遣会社との雇用契約が31日以上であれば、日雇い派遣には該当しません。
ただしこの場合には、週20時間以上、日数にすれば週3日程度の派遣労働が見込まれている必要があります。
派遣会社ではこの基準を下回らないよう、案件を調整し、法律に定められている時間数をクリアしています。
また、本業または世帯の収入が年間500万円以上、60歳以上、雇用保険の適用を受けない学生(定時・通信制を除く)のいずれかの条件に当てはまる場合には、週20時間未満でも単発派遣が許可されます。
例えば、ブランクがあり単発の派遣看護師として復帰したいというときに、世帯年収が条件を満たしていれば、週20時間未満の単発の仕事からでも始められます。
派遣で働く看護師の収入事情
時給換算すると割高な派遣の給与
実際に、派遣看護師として働くとどれくらいの給与がもらえるのでしょうか。東京都の例で、正社員・アルバイト・派遣の給与を時給換算で比較してみましょう。
- 正職員:時給1,500円前後
- アルバイト:時給1,200~2,000円
- 派遣:時給2,000円~
もちろん、年次やスキル、また就業場所によってもかなりの差はありますが、単純に月額の給与を時給換算すると派遣の方が高くなる傾向が見られます。
ただし正職員の場合には賞与が加わることもあり、年収ベースでは派遣を上回る場合も多いようです。
職場別の派遣看護師の給与
派遣看護師の時給相場は2,000円程度ですが、職場によっても金額が変わってきます。
派遣看護師の場合は、病院などの医療施設よりも介護の現場での需要が高くなっています。時給にもその事情が反映されていることがわかります。
派遣看護師の主な職場別の時給を見てみましょう。
- 訪問看護:3,000~4,500円
- 介護施設(有料老人ホームなど):3,000円
- 病院:2,500円
- クリニック:2,000円
- 保育園・幼稚園:1,500円
急激な高齢化により介護施設の開設が相次ぐ中、看護師の配置が義務付けられている施設での需要が急増しています。
看護師資格を保有する人材の不足から、時給は上昇傾向にあります。さらに民間企業を運営の母体とする施設では、公立の施設に比べて看護師の基本給が高めに設定されています。
例えば、時給3,000円の場合では、8時間勤務で月20日働くと月額48万円の給与となります。
福利厚生などほかの条件の関係もあるので一概にはいえませんが、看護師であれば派遣として働いても、収入面での心配はないと言えそうです。
派遣看護師の給料についてさらに詳しく知りたいという方は下記の記事をご覧ください。
派遣とパートどっちで働くのがいいの?
ここまで派遣看護師について見てきましたが、フルタイムで働かない雇用形態としてパートという選択肢もあります。
そこで、自分には派遣とパートのどちらの働き方が適しているのか、働き方や給料の違いについて見ていきましょう。
- 短期間で柔軟に働きたい
- 面倒な人間関係に巻き込まれたくない
- 将来キャリアアップを考えている
- 同じ職場で安定した雇用で働きたい
- 家庭や仕事以外のことに時間をとりたい
- 短期間の契約の更新などが面倒
まず、大きく違うのが雇用関係です。先にも述べたように、派遣は派遣会社に雇用され、医療機関や介護施設に派遣される形態をとりますが、パートはその職場に直接雇用されます。
そのため、派遣で働く方が派遣会社のスタッフという扱いになり、人間関係を割り切りやすいという点があります。
しかし、その分パートは急な異動などもなく職場が固定されるため、雇用が安定するというメリットがあります。
面倒な人間関係は避けたい、短期の雇用で働きたいと考えている看護師さんには派遣をおすすめします。
反対に、家庭や子育ての両立を図りたい、同じ職場で安定して働きたいと考えている看護師さんにはパートがおすすめです。
また、給料面については、派遣の方がパートよりも高い傾向にあります。
派遣看護師の時給相場は1,500~2,500円あたりですが、パートの時給相場は1,500円前後といったところのようです。
パートの給料についてさらに詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてください。
⇒看護師の給料を時給に換算すると平均は?パート・バイトの相場も紹介
看護師が派遣で働きたいときは?
派遣会社に伝えることをまとめる
派遣で働きたいと考えたときには、看護師の派遣を専門に行なっている企業を選ぶことが大切です。
ただ看護師派遣を扱う会社も多数あるため、むやみに登録してしまうと紹介が殺到し、対応に追われる可能性もあります。
口コミなどを参考に、評判の良い派遣会社を2~3社程度絞り込んで登録するようにします。
登録を行うと面談日時を指定するための連絡が入ります。面談の際に希望や経験にあわせた派遣先を聞き取り、それにマッチする派遣先を紹介してくれます。
聞かれたときにできるだけ明確に伝えられるように、勤務地までの通勤時間、自分のもっているスキル、希望する時給などを考えておくようにしてください。
例えば、どうしても採血が苦手などという場合には、業務に採血が含まれない仕事を紹介してもらうといったことも可能です。
派遣の場合には正職員とは違い、短期間のみ働くことも可能です。妊娠をしていて、安定期の3か月だけ働きたい、などという希望が通る場合もあります。
自分の状況を率直に相談してみると良いでしょう。
派遣という働き方について理解しておく
これまで派遣看護師について解説してきたように、基本的には介護系の施設などの勤務が多くなります。
病院やクリニックなど、医療行為を主とする仕事を選びたいのであれば、紹介予定派遣などを多く扱っている派遣会社に登録することをおすすめします。
また、派遣看護師の場合には即戦力として期待されているため、ていねいなOJTなどでの指導はまずありません。
指示をそのまま行動に移せると思われているのが、派遣看護師です。新しいことを一から学びたいという希望を持っている人には、なかなか難しいと考えられます。
派遣看護師の立場は、新人看護師とはまったく違うことを理解しておかなければなりません。エキスパートの技術者として職場を渡り歩くというイメージをもって、派遣に臨む必要があります。
※ページ内の求人数は職種別に集計しています。